観賞魚用ヒーターには、常時一定の水温に保つタイプと水温が上がり過ぎないようにサーモスタットを接続してヒーターのオン・オフを切り替えるタイプとに大別されます。今回検証するのは、設定水温になるようにヒーターの電源を電子制御するサーモスタット2タイプ。単なる水温調整だけでなく、最新のIC技術などによってさまざまな機能が盛り込まれています。それぞれ異なった特徴を持つ2タイプについて、主に関東エリアの量販店を担当している関東支店・諸井啓邦営業部員に話を聞きました。
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◆熱に強い石英管ヒーターは今も
――御社で最初に観賞魚用ヒーターが開発されたのはいつごろでしょうか。
「資料によると、約40年前から製品化されていたと聞いています」
――ずいぶん前のことですが、当時のヒーターはどのような構造だったのでしょうか。
「当時は電子制御で調整が可能なオートヒーターというのはなく、機械式のヒーターが最初でした」
――ヒーターの歴史は、オートヒーターが先ではなかったのですね。
「電子制御で一定の水温に固定したりオン・オフが自動的にできるのは、当時の技術では難しかったのだと思われます」
――材質にはどんなものが使われていたのでしょうか。
「当社では石英管ヒーターとセラミックヒーターの2種類がありました。セラミックヒーターはその後徐々に使われなくなりましたが、石英管ヒーターは熱に強いという点で今もヒーターの大半に使われております」

――そのころから安全性を重視した製品づくりに傾注していたと?
「これは昔も今も変わっておりません。特にヒーターは水と電気に関わっているデリケートな製品ですので、常に万一のことを想定しておかなくてはなりません。安全性第一という設計思想は今も普遍的です」

◆水温調整ができるサーモだからこそ
――サーモのメリットについてお聞かせください。
「オートヒーターと違って、サーモがあることによって任意の水温が設定できるという点が一番のメリットではあるのですが、ほかにもさまざまなメリットがあります」
――たとえば?
「ヒーターは消耗品なので1年を目途に買い替えるのが望ましいです。これはオートヒーターでもサーモとセットになったヒーターも条件は同じです。ただ、サーモがあれば、ヒーターのみを買い替えさえすれば以前と同じように使えるというメリットがあります」

――どちらかが故障しても経済的に負担が少なくて済みますね。
「しかも当社のサーモは他社のヒーターとの接続はもちろん、オートヒーターとの接続も可能です」
――それは知らなかったです。
「もっといえば、最初はオートヒーターを使っていたけど金魚やメダカを飼育するためにもう少し水温を下げたいという時でも、温度管理ができるサーモで接続さえすれば、それも可能になるというわけです。もちろん26℃固定のオートヒーターは水温を最大26℃までしか上げられません。そのため、サーモをオートヒーターに接続しても26℃を超える水温には設定できませんので、ご注意ください」
――逆に水温を上げるメリットも?
「お客様が飼育されておられる観賞魚が病気になった場合、水温を30度に上げて生体の治癒力を活発化させる方法に使われることもあります。これは決してオートヒーターにはできないことです。このほか、サーモは多様な生態に準じた水温に調節することもできます」
――色々考えていると、サーモがあるほうが結果的には便利なような気がしますね。
「ただし、交換用ヒーターを単体で使用すると、水温の上昇をコントロールできなくなってしまうため、異常な水温上昇や空焚きの危険がありますので、ご購入の際には注意が必要です」
――店頭でよく確認してから買わないといけませんね。
「当社のヒーターは、パッケージに必ず表記していますので、比較的わかりやすいと思います。安全性の第一歩は店頭から始まります。ぜひご購入時の参考にしていただければ幸いです」

◆「ついクルクル」の誤作動がないダイヤル〈パワーサーモET-X〉
――現在のサーモのラインナップを紹介してください。
「当社のサーモは2タイプをご用意しております。まずは〈パワーサーモET-X〉と呼ばれるタイプです。こちらは大型ダイヤルの目盛りに記載された水温に設定できます」

――〈パワーサーモET-X〉のバリエーションを教えてください。
「ワット数別に3機種をご用意しております。それぞれ300W、600W、1000Wのラインナップです。基本的な構造や操作はすべて同じです」
――主な特徴を教えてください。
「制御範囲は約15~35℃で、+-1℃の高精度設計です。ヒーターへの出力は、ON/OFFのパイロットランプで確認できます。本体はコンパクトで厚さも思ったよりスリムに設計されており、どなたでも簡単に操作していただけます」

――主要な特徴以外で、ユーザー目線で役立つ設計としてどのような工夫がありますか?
「ダイヤルにOリングが組み込まれているため、不用意にダイヤルが回ってしまうということはまずありません。使っているうちに操作が甘くなるといったこともありませんし、ダイヤル部分の防滴の役割もあります。また、拭き掃除の際などにダイヤルに触れて知らないうちに回ってしまうといった心配もございません」
――極力誤動作のないように考えられた安心設計のひとつですね。
「このほかにも安全性を追求した機能が多々あるのですが、〈パワーサーモET-XD〉と共通しているところも多いので、のちほどご説明いたします」
◆異常をいち早くキャッチできるアラーム〈パワーサーモET-XD〉

――〈パワーサーモET-XD〉はデジタル表示で水温を知らせるタイプでしたね。
「こちらは、330W・620Wの計2機種となっており、数値でおわかりの通りいずれもワット数に余裕を持たせた設計になっております」

――LEDが赤くピカッと見やすいですね。
「デジタル表示の強みだと思います。視認性はとてもよく、夜でも操作が可能です」
――サーモとしてだけでなく、水温計としても使えるとか?
「設定時はボタンを押すだけで水温のコントロールができ、通常時は現状水温を正確に表示してくれるのでとても便利だという声を販売店様からいただくこともあります」
――デジタル表示されるのは水温だけでしょうか。
「これは〈ET-620XD〉のみの安全機能なのですが、本品には「離水センサー」が搭載されています」
――聞き慣れない機能です。
「例えば水槽の水が蒸発などで一定水位より少なくなった時、センサーが水から露出した場合に異常を検知してヒーターへの通電をストップさせるという機能です。この機能をご存じなかった販売店様は少なくありません」

――そんな機能があるのですね。
「もちろん業界初の機能で、通常の水位に戻すと再び通電がスタートします。①水からセンサーが出た時の表示が離水センサーの警告表示になります。その他にも、②設定+3℃の上昇時③設定-3℃の下降時など、合計3種類のパターンで異なった文字(EE・EH・EL)で警告表示され、空焚き事故などを未然に防ぎます。
そして表示だけでなく、異常を甲高い音によるアラームが知らせてくれるので、目で見て耳で聴いて異常を察することができます」

――アラームがあれば、水槽から離れていてもすくに気付いて対応できますね。
「まれに、離水センサーがカメの甲羅などに押し上げられて離水することがあったりするのですが、こんな場合でもアラームが鳴ることでトラブルを最小限に食い止められます」
――コードも通常より長い気がするのですが。
「ヒーターと接続するためのロングセンサーコードを150㎝に設定しています。おそらく業界では最長だと思いますが、キャビネットや外付けフィルターなどがあることでコードが足らなくなることも想定して、長さに余裕を持たせた結果でもあるのです。なお、サーモスタットは水槽よりも高い位置に設置するように推奨しており、もしキャビネットの中などに設置する場合は、水滴がコンセントに流れ込まないように水滴だまりを設けるようにしてください」

――こういうところまでなかなか気づかないものです。
「ちょっとしたことかも知れませんが、この点は量販店様でも評価をいただいております。サーモをはじめとする保温器具は安全性だけでなく、どんな飼育環境であっても使いやすいツールでなければなりません。商品開発がいつもお客様目線であるからこその結果だと自負しております」
◆二重・三重の安全対策があってこそ
――その他、KOTOBUKIならではの設計が施されているポイントなどがあれば教えてください。
「すべてのラインナップではないのですが、電気容量が大きなヒーターを接続するサーモは、ヒーター用コンセント口に3個のタップを設けている機種があります(ET-600X、ET-1000X、ET-620XD)。すべてオリジナルの金型です。これにより、ひとつのサーモで最大3つまでヒーターと接続が可能になりました」※サーモ一台で複数の水槽を水温調整することはできません。

――万一、1本のヒーターが切れても大丈夫な機能ですね。
「また、すべての機種には難燃性樹脂をプラグに採用して、万全を期しています」
――〈シグナルヒーター〉のカバーもそうでしたね。
「いずれも燃えにくい素材を使って、火災などによる被害を最小限に食い止めるよう努めています」
――家電商品などを長い間使っていると、コンセントにホコリが付着して発火するという事故も起きています。
「ホコリがつくだけでは発火はしないのですが、もしここに水が加わってしまうとホコリそのものが通電してショートを起こし、トラッキング現象によって発火する危険性があります。このため、独自の加工をコンセントに施してトラッキング現象を防いで、発火防止に努めています」

――ヒーターは水と電気とが関わるデリケートな商品ですからね。
「そのほかにも、センサー信号によるヒーター通電時のオン・オフに伴うノイズ発生による誤作動を防ぐ耐ノイズ設計がすべての機種で行われ、二重・三重の安全対策が施されています」
――通常に使用すれば、安心してアクアライフを送れますね。
「製品そのものだけではありません。当社には大型冷蔵設備を完備し、夏から秋口にかけて出荷前の製品を厳重にチェックし、出荷に備えております」

――こうした企業努力を、少しでもショップやアクアユーザーには知ってもらいたいです。
「もちろん製造に関しても、日本資本の中国工場で製造していますので、品質については自信を持ってお届けいたします。みなさまが安心して好きな趣味に没頭できるよう努めております。沢山の種類があるサーモやヒーターですが、ぜひご自身のライフスタイルに合った機種をお選びいただき、来るべき冬に備えてくださるようお願いいたします」
【サーモスタットの商品ラインナップ】
パワーサーモET-330XD

寸法(mm):個装寸法:W80×D75×H170
商品説明:ボタン一つで簡単、水温コントロール(デジタル表示で見やすい)
ボディに浮かぶLED水温表示。
淡水・海水両用
2W〜330Wヒーターまで対応(ヒーターコンセント1口)
制御温度約15℃〜36℃
水温表示範囲0℃〜45℃
●パワーのON/OFF状態がLEDランプで一目でわかる。
●温度設定がしやすい。操作かんたんプッシュ式設定。
●発火事故を未然に防止! 難燃性樹脂プラグ採用。
●±1.0℃精度。高感度センサー採用。
●器具の誤作動を防ぐ耐ノイズ設計。
●1年間保証付(海水:6ヶ月)
本品はオートヒーターとの接続が可能です。
万一、オートヒーターのセンサーが故障した場合でも、
本製品と接続しておけばオートヒーターの誤作動による事故を防ぐことができ、より安全です。
※ご使用になるオートヒーターが26℃固定型の場合、
本品で制御できる水温の上限は26℃までとなります。
26℃以下に設定することは可能です。
パワーサーモET-620XD

寸法(mm):個装寸法:W100×D80×H200
商品説明:ボタン一つで簡単、水温コントロール(デジタル表示で見やすい)
ボディに浮かぶLED水温表示。
異常をアラームでお知らせ(センサー異常・水温異常)
離水センサー付きでセンサーが水から出るとヒーターへの通電を停止し、
水に入れると通電を再開します。
淡水・海水両用
2W〜620Wヒーターまで対応(ヒーターコンセント3口)
制御温度約15℃〜36℃
水温表示範囲-9℃〜45℃
●パワーのON/OFF状態がLEDランプで一目でわかる。
●温度設定がしやすい。操作かんたんプッシュ式設定。
●発火事故を未然に防止! 難燃性樹脂プラグ採用。
●±1.0℃精度。高感度センサー採用。
●器具の誤作動を防ぐ耐ノイズ設計。
●1年間保証付(海水:6ヶ月)
本品はオートヒーターとの接続が可能です。
万一、オートヒーターのセンサーが故障した場合でも、
本製品と接続しておけばオートヒーターの誤作動による事故を防ぐことができ、より安全です。
※ご使用になるオートヒーターが26℃固定型の場合、
本品で制御できる水温の上限は26℃までとなります。
26℃以下に設定することは可能です。
パワーサーモET-300X

寸法(mm):個装寸法:W60×D40×H280
商品説明:パワーのON/OFF状態がLEDランプで一目でわかる。
●温度設定がしやすい。操作カンタン大型ダイヤル採用。
●発火事故を未然に防止!難燃性樹脂プラグ採用。
●±1℃精度。高感度センサー採用。
●器具の誤作動を防ぐ耐ノイズ設計。
●1年間保証付(海水:6ヶ月)
スペック:ヒーター容量 2W〜300W
制御温度 約15℃〜35℃
1個口コンセント
本品はオートヒーターとの接続が可能です。
万一、オートヒーターのセンサーが故障した場合でも、
製品と接続しておけばオートヒーターの誤作動による事故を防ぐことができ、より安全です。
※ご使用になるオートヒーターが26℃固定型の場合、
本品で制御できる水温の上限は26℃までとなります。
26℃以下に設定することは可能です。
パワーサーモET-600X

寸法(mm):個装寸法:W75×D45×H330
商品説明:パワーのON/OFF状態がLEDランプで一目でわかる。
●温度設定がしやすい。操作カンタン大型ダイヤル採用。
●発火事故を未然に防止!難燃性樹脂プラグ採用。
●±1℃精度。高感度センサー採用。
●器具の誤作動を防ぐ耐ノイズ設計。
●1年間保証付(海水:6ヶ月)
スペック:ヒーター容量 75W〜600W
制御温度 約15℃〜35℃
3個口コンセント
本品はオートヒーターとの接続が可能です。
万一、オートヒーターのセンサーが故障した場合でも、
本製品と接続しておけばオートヒーターの誤作動による事故を防ぐことができ、より安全です。
※ご使用になるオートヒーターが26℃固定型の場合、
本品で制御できる水温の上限は26℃までとなります。
26℃以下に設定することは可能です。
パワーサーモET-1000X

寸法(mm):個装寸法:W75×D45×H330
商品説明:●パワーのON/OFF状態がLEDランプで一目でわかる。
●温度設定がしやすい。操作カンタン大型ダイヤル採用。
●発火事故を未然に防止!難燃性樹脂プラグ採用。
●±1℃精度。高感度センサー採用。
●器具の誤作動を防ぐ耐ノイズ設計。
●1年間保証付(海水:6ヶ月)
スペック:ヒーター容量 75W〜1000W
制御温度 約15℃〜35℃
3個口コンセント
本品はオートヒーターとの接続が可能です。
万一、オートヒーターのセンサーが故障した場合でも、
本製品と接続しておけばオートヒーターの誤作動による事故を防ぐことができ、より安全です。
※ご使用になるオートヒーターが26℃固定型の場合、
本品で制御できる水温の上限は26℃までとなります。
26℃以下に設定することは可能です。
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パワーサーモET-XDの特徴を動画でもご紹介
