アクアに囲まれてすごす毎日。
それは何物にも代えがたい至福の時間でもあります。
とかくアクアというと男の趣味っぽい気がしますが、なかなかどうして。
女性ならではの目線や気配りで、アクアライフを謳歌しているユーザーも少なくありません。
大阪府の閑静な住宅街にお住まいの宮永佳都さんもその一人。
主婦であり2人の娘さんを持つママでありながら、宮永さんの「自由時間」はほぼアクアに傾注。
何気ないきっかけで始めた趣味でしたが、今夏ドバイで開催された第1回ベタコンテストでは、いきなり2冠達成。
みるからにおっとりして温厚そうな宮永さん、決してメラメラと野望に燃えた結果でもなく(笑)。
アクア歴約8年。
かといって、特別なことをしているわけはない、かといって並々ならぬ愛情を魚たちに注ぐ宮永さんのアクアライフをのぞいてみることにしました。
◆「下地」は生まれ育った和歌山に
「アクアに限らず動物好きなんですよ~」と柔和な笑顔で語る宮永さん。玄関先には、夏の時期はメダカや金魚などがいるズラリとならんだ睡蓮鉢をながめながら、両腕の中には愛犬のりょう君(6才)が。
和歌山県田辺市出身。お父上が釣り好きだったり、実家が幼稚園経営をしていたことから観賞魚や小動物との接触も多く、アクアとの出会いも必然だったのでしょう。
ん?おうちの門扉には守護神・シーサーが。大丈夫、今日は取材ですからアヤシイ者じゃございません(笑)
おやこれは?「原種のベゴニアなんです」。ほー、これは珍しい。それにしても、お庭には四季折々の花がちょこちょこっと。園芸にも結構詳しそうですね。「とりあえずガーデニングと言ってくださいます(笑)?」。こりゃ失敬☆
◆女性らしい視点の「宮永ワールド」
おお、いきなりきましたか、宮永ワールド(笑)。おうちに入ってすぐの1階リビング。ほぼコの字型に配置された数本の水槽が、テーブルを囲む格好に。明るくてとっても清潔感があります。2カ所の窓から入る日差しは、水草を育成するのにも好環境です。
「食事はほとんどここで。来客がある時もこの場所です。初めてきた人はびっくりするんですよ、私のイメージと違うかった、って(笑)。そんなことないですよね?」。。。いや、そんなことないことないです(笑)。どちからというとハイソなイメージがある女性で、そのギャップに驚くのは一人や二人ではないはずです。
以前、水槽が少なかったころはリビングの一番奥に置いてあったこともあったそうです。いやいや、絶対こっちのほうがいい。ここだと誰にでもみてもらえるし、せっかくの趣味を自分だけこっそり楽しむのはずるい(笑)。インテリア感覚でアクアを楽しむ人が増えてきましたが、さらに一歩進んで人に「見せるアクアリウム」を意識していくのも、新しいアクアのあり方なのかもしれません。
向かって左手に60㎝の水槽が2本、30㎝の水槽が1本。正面のスチールラックには、ベタ用のキューブ水槽が4本、その下に同じくベタ用のビンが5個。さらに右手には、カウンターの一部を使って2本のスクエアおよびラウンド型の水槽が配置されています。比較的大きい水槽は両サイドに、コンパクトな水槽は正面に。全体的にメリハリがあり、見た目を意識した配置は女性ならではといえるかもしれません。
8年前に、何気に立ち寄ったホームセンターでオヤニラミをみつけたのが、本格的なアクアのスタートでした。「それまでは飼ったり飼わなかったりでしたが、子どもが大きくなってきて家が新しくなったこともあり、ちょっと本腰を入れてみようかな、と」。(2点とも画像は宮永さん提供)
ふとしたことがきっかけでアクアに火がついた宮永さん。ちょっと本気出したら、エラいことになったのはいうまでもありません(笑)。
これらはすべて、宮永さんが本気出した証。初めて訪ねてきた人は、きっと美魔女コンテストかダイエットのイベントで獲得したトロフィーや表彰状だと思うでしょうね(笑)。
2つのピッカピカでド派手なゴールドのカップこそが、直近の受賞歴。8~9月にドバイで行われた中東初のIBC(国際ベタ連盟)公認ベタコンテスト「第1回国際ベタショー2016」で、なんとなんと総合優勝と準優勝の2冠を果たしたのでありました。記念すべき第1回大会で2冠の快挙。しかも日本人。おまけに女性。「優勝の知らせがあった時は本当にうれしかったです」とサラリと言ってのけましたが、国際舞台での受賞ってスゴすぎます。まだ数カ月前のことなんだから、当時を思い出してもっと喜びを表現してください(笑)!
◆輝かしき受賞歴に圧巻
実は、ベタコンテストに関しては知る人ぞ知る実力の持ち主なんです。しかも、何度も繁殖に成功してきた人でもあるんです。毎年国内で開催されている公認ベタコンテストでは、総合優勝が1回、部門別・クラス別優勝などを合わせると10回以上も。わずか3年間でこの成績ですから、誰しも興味を抱かないはずがありません。
「6年くらい前でしょうか、アクアリストの間でもベタに注目が集まり始め、私も興味があって飼ってみたくなったんです」。思い立ったらすぐに行動に移すタイプ。早速ベタ専門店では有名なベタショップ・フォーチュンさんを訪ね、石津店長と出会いました。いったん飼い始めたら、次のステップとしては繁殖させたくなるのが人情というもの。以後、地道な努力を怠らず「1年のスケジュールはベタが中心(笑)」なのだとか。
特に2014年のベタコンテストでは、総合優勝および「我が家自慢のベタ総選挙」で1位を獲得するなど、まさに記念すべき宮永イヤーでもありました。「この年の受賞が一番うれしかったです」。
こちらは、ベタコンテストで行われたイベント「我が家自慢のベタ総選挙」でもらった掛け時計。赤く描かれたベタのシルエットが可愛いですね。
そして今年のベタコンテストで、3つもクラス別・部門別優勝を果たしました。もうすっかり常連勝者として、風格さえ漂ってる感じが(笑)。
「ベタ飼育に関してさまざまな問い合わせがあるんですが、(宮永さんは)こちらのアドバイスをきっちり聞いて実行しておられます。内外で高い評価を得るためには、自己流の飼い方ではあまりにも冒険すぎます」と、フォーチュン店長の石津さん。ある意味、宮永さんの師匠といってもおかしくない存在で、教えをきっちりまもることが勝利の近道なんでしょうね。
この子がドバイのコンテストで総合優勝したファンシープラカット。かたちや多彩に盛り込まれた色などが評価されました。特に、フチドリされたきれいなスカイブルーと、全体に広がるイエローカラーが印象的です。
「ベタの繁殖行動って情熱的なんですよ~」と宮永さん。え、どういう風に?「メスがボロボロになるまでオスが追いかけ回すんです」。え、それってストーカーじゃないですか(笑)。でもそのせいかどうかわかりませんが、オスのほうが短命だそうです。アクアのお手入れはたいてい夜だそう。真夜中に一人、ベタの繁殖行動をじっとみつめている姿を想像してしまいました(笑)。
◆ベタ以外にも愛情いっぱい注ぎ込み中♡
ここにはキューブ水槽が4つ並んでいます。時々フレアリングさせて、ベタの健康状態をチェックすることも怠りなく。
5つのビンもベタのおうち。飼われているのはほとんどメス。この子たちも、いずれ立派な大人の女性として成長し、繁殖に成功すればいいですね。
前面の角がラウンドしているKOTOBUKIのレグラスシリーズ45㎝。この水槽が一番長く使っているのだそうです。
ベタの稚魚がかな~りいます。「孵化直後であれば、混泳がずっと可能なんですよ」。あ、そうなんですか。オスとメスは絶対分けないといけないと思ってました。「ただし混泳だとオスが繁殖せず、きれいに成長していくのは難しいんです。コンテストで賞を獲るくらいきれいなヒレにさせようと思えば、やはりオスをその気にさせないといけないんです(笑)」。なるほど、男子校の高校生が女子高校生をみると、鼻息が荒くなるのと同じですね!「わあ、すごい例え(笑)」。すみません、下品でした。。。
リビングに入ってすぐ左側にある60㎝水槽(写真左奥)には、ワイルドベタがいます。そのとなりの30㎝水槽(写真右手前)にいるのが、ブラックのジャイアントプラカット。
60㎝水槽のユニマクラータという品種、ちょっと地味な色です。写真を撮るのにひと苦労しました。
ジャイアントプラカットとともに、バナナプランツもあったりします。
一番奥に設置されているのが60㎝水槽で、外部フィルターがビルトインされたキャビネット上に置かれています。カージナルテトラ、プレステラ、オレンジネオンライヤーテールモーリーのほか、3種類のコリドラス、ミナミヌマエビ、ヤマトヌマエビなどが飼育されています。「ベタばかりでも単調になるので、水草をしっかり育てていける本格的な水槽が1本くらいあってもいいかな、と思って」。そうですね、ある意味この水槽が一番アクアリウムらしくみえます。もしかしたら数年後、これがメインになっているかもしれないな、と期待を寄せたくなる水槽でした。
一番のお気に入りは、このキューブ型30㎝水槽。有茎草もしっかり育ち、CO2も添加されるなど本気度がうかがえます。
位置的にはリビングルームのほぼ中心。奥のリビングルームやキッチンからでも観察でき、とってもインテリアチックな位置づけです。グッピー、パンダシャークローチが泳いでいます。
その隣にあるのが、アカヒレが泳ぐ約20㎝のラウンド型水槽で、ジブリもいます。お子さんたちの一番のお気に入りだそうで、これも女性らしいメルヘンチックな雰囲気が漂っていました。
それにしても、水槽のバリエーション多すぎ(笑)!
◆長続きの秘訣は「マイペース」
以前アクア専門誌にも紹介されたことがありました。キワメテ!水族館、取材にくるの遅いやん(笑)!
「へー、こんな本まで持ってはったんですね」と石津さんを驚かせた図鑑「ラビリンスフィッシュワールド」。ベタやグラミーの仲間がすべて網羅されている、ちょっとマニアックな図鑑でした。あ、ちなみに今回の取材は石津さんにもご同行いただきました。
「なかなかきれいに整理できなくて」と、テーブルの上には楯や表彰状などがざっくりと(笑)。どれもこれも、栄光の足跡。そのうち、ここだけでは収まりきらなくなりますから(笑)
そして一家のアイドルでもあるりょう君。片時も宮永さんのそばを離れず、見知らぬ人間からの質問攻めに不安な表情をみせる一面も(笑)。大丈夫、もう終わるからねー。
一番のお気に入りの水槽、りょう君からだとこんなふうに見えるんでしょうね。
宮永さんちにはたくさん水槽があるよ~と、お子さんのお友だちの親御さんから頼まれて写真を撮りにくるケースもあるのだとか。車で10分ほどの距離のところには、ブログを通じて知り合ったアクア仲間もいます。SNSやイベントを通じて、知り合ったアクア仲間も数知れず。「アクアを始めたことで、お友だちが増えてとっても刺激になりました。アクアに関する情報を共有できますし、頼りにもなります」と、決してアクアが根クラな趣味でないことを強調(笑)。そして、「数々の賞をいただけたのも、こうした周りの人たちのおかげでもあるんです」と謙虚に語ってくれました。
◆女性ならではの感性がブームの火付け役に?
水替えなどのメンテは、ほとんど一人でこなすのだとか。大変でしょ?「よくそう言われますけど、自分ではそんなに大変だとは思ってないんです」。いやいや、無理しなくてもよろしい(笑)。「いや、本当に(笑)。でも、あれもしなきゃ、これもしなきゃなんて思い詰めてしまうと、長続きしないと思うんです。あまり熱くならず、たまには手を抜くくらいのマイペースが一番だと思います」。さすが冷静です。イライラしながら腕まくりして、汗だらけで髪を振り乱している姿なんて想像できません(笑)!。
地道にコツコツと継続してきたことで、結果もついてきたのでしょう。決して無理しない。でもあきらめない。そして人の意見に影響されすぎない。キャラ的には一見ギャップを感じなくもないですが、ブレることもなくちゃんと地に足がついています。
今年のベタコンテストでは、イベントスタッフとしても参加協力。せっかくだからもっと経験を積んで、日本初の女性ベタ審査員を目指してくださいよ~。「ああ、それちょっと思ったことがあります(笑)。でも結構大変そうで」。いや、宮永さんならイケるイケる!
宮永さんならずとも、ベタの飼育がきっかけでアクアを趣味にする女性が増えています。しかもベタだけでなく、グッピーやネオンテトラなど、インテリア感覚で女性受けしそうな観賞魚がほかにもたくさんあります。
デーンと大きな水槽を置いたり、自分の城にこもってマニアックな飼い方をする男性とはまた違った、女性ならではの感性と視点。囲うアクアから見せるアクアへ。もしかしたら、アクアをブームに押し上げてくれる一番の救世主は、こうした女子力なのかもしれませんね。
第2回WEBでつなぐアクアリウムコンテスト「わたしの水槽☆自慢」募集中