夫婦揃って昔から生きものが好きだったという茂木康博さん。去年、初めて出品した数匹の愛魚が品評会で受賞し、金魚ライフに少しずつ変化も。7年前に飼育し始めた金魚も、今は30匹以上になりました。特に繁殖に興味があるわけではなく、品評会を目標に選別することもなく。宝塚市の閑静な住宅街で、お気に入りの金魚たちに囲まれながらのんびりと金魚ライフを満喫しています。
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◆かのこちゃんと「初号機」
早速飼育中の金魚を拝見。ベランダには3つのプラ舟。春を待ちわびていたように、どの魚もすこぶる元気です。「おかげでベランダのスペースが半分になってしまいましたが(笑)」。いやいや、そのうちベランダ全部が金魚ちゃんたちに占領される日もそう遠くはないと思います(笑)
このプラ舟には計3匹が同居していますが、こちらはイエローコメット2匹。左が細かく詰まったうろこがメタリックに輝く品種・キラキラ。右が和金体形の玉黄金。がっつり2匹で群れています(笑)
もう1匹は、九州産ジャンボオランダ。この子は、去年大和郡山市で開催された金魚品評会で「大の部オランダ型その他の部」3位を受賞しました。エントリー時に名前が必要とのことで、「かのこちゃんと名付けました」(茂木さん)。かのこちゃんとは金魚品評会で会って以来、半年ぶりの再会となりました。
ちなみにかのこちゃんは、3年前に開催された大阪大蘭会2017年品評大会で西大関を受賞していました。すでに3年前から頭角を表していたんですね。
こちらのプラ舟は、いわば長寿組。いずれも6~7歳で、いわばグループホームの金魚版といったところでしょうか(笑)。和金、オランダ、花房オランダ、ナンキンなどが同居しています。茂木さん曰く、「相性のいい品種は、混泳させることでプラ舟の数を必要最低限にセーブしています」。
そして長寿組にいたこの白っぽい和金こそ、7年前に近くのホームセンターで出会った茂木家の初号機でした(笑)。金魚ライフスタートのキッカケになった記念すべき1匹。「やっぱり1匹目ですから思い入れはありますねぇ」と茂木さん。当時2センチくらいの小さな和金でしたが、その後大きなトラブルもなく順調に成長。赤と白が混じった更紗だったのものが徐々に真っ赤に変わっていったり、また少しずつ白くなっていったり。こうした変化を楽しませてくれたことが茂木さんを刺激し、金魚のトリコになるキッカケにもなったのでしょう。茂木さんがことのほか思い入れのある初号機。いつまでも長生きして欲しいですね。
最後にご紹介するプラ舟は、津軽錦オンリー。津軽錦といえば、戦後に東錦とらんちゅうを交配させて復元に成功したといわれている品種で有名です。ここにいる明け2歳の個体は、かのこちゃんもエントリーした去年の金魚品評会で4位・5位を受賞しました。「ここにいる個体たちは、一度繁殖させてみたいなと思う気持ちがあります」。繁殖にこだわらず、好きな個体だけを収集して楽しんできた茂木さん。決して悪魔のささやきに耳を貸さないようにしましょう(笑)
◆夫婦の連携プレーでメダカライフも
ふと後ろを振り返ると。そこにはメダカ鉢が。金魚オンリーだと思っていましたが、メダカ飼育もされていたんですね。「いえいえ、これは家内の仕事なんです(笑)」。鉢の中で白メダカが元気に泳いでいます。金魚同様、やっぱり春の到来が待ち遠しかったのでしょう。
ご主人の実家からもらってきたというクロメダカも元気に泳いでいます。小さいころから生きものが好きだったという奥様。過去には昆虫飼育の経験もあり、「幼虫からさなぎ、さなぎから成虫に至る変化が不思議で、興味津々で見入っていたことがあるんです」。
今年になってから生まれた子もたくさん。昆虫同様、メダカの卵も変化の様子を観察するのが好きなのだそうで、奥様のほうが先にメダカの卵や金魚の稚魚をみつけることも少なくないそうです。茂木家にとって、素晴らしきマリアージュ(笑)!。
ベランダにはちょうどいい場所に水道設備も。これなら水替えも便利。取水後は空の水槽に水を張り、1~2日汲み置いています。
ベランダの半分は、スノコのような板張りが標準設計。しかも室内の床と同じ高さなので、部屋とバリアフリー的に使えるのも便利なのだそうです。本来なら、くらしの便利さを追求した設計なのでしょうが、金魚飼育にも活かされるとは意外でした。
◆目が合うとおやつを欲しがる金魚たち
これで取材が終わりかと思いきや、茂木家の金魚コレクションはこれだけではありませんでした。ベランダ以外に、部屋まるごとが金魚水槽。まるで小さな水族館のようで、これにはビックリでした。ベランダに面した明るい一部屋。ちょっと増えすぎて、ついに金魚専用ルームになってしまったわけですね。「そういうことになりますね(笑)」。とはいえ、「飼育できる個体数に限りがありますから、今のところあまり増やしたくないのが正直なところです」と至って冷静です。
「空調などで室温の変化の影響を受けない専用ルームがやっぱり必要だと思ったので」というのが、金魚専用ルームをつくった理由。水槽は全部で4本。60センチ×2、45センチ×1、30センチ×1、そしてプラ舟×4。このほか、水槽と並んで病気療養用の黒いメダカ鉢も1本ありますが、幸い大事に至ることはさほどありませんでした。何はともあれ、「床補強などをしていないので、水槽を複数置く場合は60センチ水槽までと決めています」。さすが、金魚メーワクにならないための対策も万全です(笑)。
左端の30センチ水槽で仲良く寄り添って泳ぐのは、東錦よりも長手の関東東錦(左。尾びれに入った黒のラインがワンポイント)と、パンダ蝶尾と地金の交配種の東海錦(右。しかも銀鱗)。品種も色合いも違うのに、なぜか妙にお似合いの2匹です。
こちらの45センチ水槽には、地金や東海錦など尾びれの美しい金魚ばかりが4匹同居しています。特に地金(右上)は茂木さんのお気に入りで、「特徴的な尾が好きなんです。金魚を飼い始めたころ、ショップで初めて実物を見た時はとても感動しました。いつか自分も地金を飼いたい!と思いました」。
長い尾びれが優雅なロングテールの東海錦(中央)も印象的です。
4匹同居の60センチ水槽。(左から)ふな尾の東海錦、寿恵廣錦、ジャンボ東錦、ブリストル朱文金がいます。
ふな尾の東海錦はしっかりした網目透明麟で、キラキラした感じが印象的です。
最後の60㎝水槽。この水槽だけはオランダのみというラインナップ。でもただのオランダではないところが茂木さんのこだわり。まずは長野県飯田市産の飯田オランダ。真っ赤な発色&モリモリの肉瘤&スタイル抜群、と三拍子揃っています。
左上にいる1匹だけ黒っぽいのが、黒もみじジャンボオランダ。ウロコのフチだけが透明な「網透明鱗(もうとうめいりん)」を持っているので、ウロコが玉虫色に輝いています。あとは小さな日本オランダが2匹。長手になっていないので少し安く購入できたそうです。大きな黒い金魚と美人の赤い金魚、そして子どもの金魚。まるで家族が仲良く泳いでいるようにみえます。
この水槽はリビングに一番近いことから、もしかして一番お気に入りの水槽?と思いきや、「その通りです(笑)。私たちがリビングにいても、目が合うとエサが欲しいとアピールしてくるんです」。可愛いですね。
ちょうどおやつの時間になったので、KOTOBUKIの金魚用「FLY MIX」をパラパラと。おお~、真っ先にやってきたのはジャンボオランダ。どの水槽でも、くいつきのよさは評判通りだったそうです。「確かに食欲は増した気がします。これからは、金魚だけでなくメダカにも試してみようと思っています」。奥様、ご主人のフォローよろしくお願いします(笑)!
プラ舟は4つ。それぞれらんちゅうや黒蝶尾・銀蝶尾、蝶尾ロングテール出目金のほか、予備用プラ舟も1つあります。よくみると、ファクス電話が中央に。好きな金魚を眺めながら通話する茂木さんにとって、至福の時間に違いありません(笑)
◆健康を重視した金魚飼育
実は金魚やメダカのほかに、こんな可愛いわんちゃんとも室内で同居中。右が先輩女子犬のひめちゃん16才で、お二人が結婚する前に買ってきた柴犬でした。右が後輩男子犬のこりきくん10才。まるで姉弟みたいで、とっても仲良し。こりきくん、ごはんを食べる時も自分はひめちゃんより後だとちゃんとわかっているのだそう。こんなほのぼのとしたシーンをみていると、こちらまでほっこりしてきます。
金魚にあまり負担をかけたくないので、無理やり大きくしたりとかせずあくまで健康重視で飼育を心がけているという茂木さん。「方法が正しいかどうかはわかりませんが、色々なえさを状況をみながらまんべんなく与えるようにしています」。金魚も人間もバランスのとれた食生活が大切というところは同じです。
品評会への出品予定は?「今年も大和郡山市の金魚フェスに出品したいと思っていますが、それぞれの個体がどう変化しているか読めないので、こればかりは直前になってみないとわかりませんね」。
最後に金魚の魅力を教えてください。「優雅に泳ぐ美しい姿かたちはもちろんですが、やっぱり飼育環境や飼い方、個体により色かたちが刻々と変化するところでしょうか。と思ったら、まったく変化しない個体もいたり。そういった未知なる世界観が面白いです」。
決して繁殖や品評会が目的ではない茂木さんの飼育スタイル。気に入ったものを気に入った数だけ手に入れて、自身の飼育環境に適しただけの数量で楽しむ金魚ライフに、迷いはありません。