2016/06/18取材, 地域社会, 技術, 歴史, 自然, 観光

【観光】神戸市民にとっての水の原点・布引の滝(神戸市)☆水のある風景vol.19

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六甲山の岩肌を縫うように流れる、ひとつの「水筋」。

山中の布引貯水池から、数カ所の滝を経て下流へと流れる水は、神戸市民の水でもあります。

華厳の滝(栃木県)、那智の滝(和歌山県)とともに「日本三大神滝」のひとつとして数えられ、日本の滝百選にもランクインされている布引の滝。

滝を流れ落ちる水のさまが、まるで布を垂れているように美しいことから名付けられました。

平安時代から江戸時代にかけて和歌にも登場していたという、神戸の水の原点をたどってみることにしましょう。

 

 

◆最寄り駅からこんなに至近距離で自然が

 

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布引の滝への出発点は、意外なところからでした。山陽新幹線・新神戸駅。ん?こんなところから本当に滝にたどりつけるの?と思ってしまうほど。ついつい見落としてしまいそうな表示だけが頼りです。ここからさぞかし歩かないと滝には届かないんだろうなと、気を引き締めてのスタートとなりました。

 

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新幹線の薄暗い高架下。誰がみてもすぐわかる表示がありました。え、滝までたったの0.4  ㎞?ついつい小数点ひとケタが間違っているのでは、と思ってしまうほどでした。

 

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新幹線の高架下を抜けると、そこはもう「こうべの森」。こんなにあっさりと自然にたどり着くとは、本当に意外でした。さっきまでの駅周辺の雑踏が嘘のようです。

 

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新神戸駅と渓谷。こんな取り合わせが実に意外です。最寄り駅に自然が近いのでなく、自然のど真ん中に駅がつくられた、といったほうが適切かもしれません。新神戸駅が完成したのは、昭和47年。山陽新幹線が岡山駅までつながった年でした。新幹線に乗ったことのある人ならご存じと思いますが、新神戸駅の東西はそれぞれトンネルばかり。新神戸駅自体、すでに山の中に位置していることを物語っています。

 

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眼下にみる渓谷には、家族連れで遊ぶ子どもたちの姿も。手軽に河原でバーベキューを楽しむ人たちも多いからでしょう、葉陰の中からはブルーシートが見え隠れしています。

 

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2~3分歩くと、すでにそこはハイキングコース。本格的な装備をしているハイカーや、至って軽装な家族連れまで、そのスタイルはさまざまです。

 

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いきなり雰囲気のある橋に遭遇しました。レンガ造りの三連アーチ橋「砂子(いさこ)橋」。布引水源地の水道施設として、国の重要文化財に指定されている水路橋です。明治33年につくられたというから、築後すでに100年以上経過しています。神戸市の市章もしっかり刻まれていました。

 

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橋から下をみると、水の流れがこうこうと。この流れは下流へ注がれ、やがて生田川へ。写真ではわかりにくいですが、水の流れている部分のところどころが彫り込まれています。気の遠くなるほどの大昔、大地がずれ動いた時にできた断層の証拠。これまで京都保津峡嵐山を歩いてきたのと同じように、ここでも断層と水とは、切っても切れない関係にあるようです。

 

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トイレの建物も周辺の環境にマッチするよう配慮されています。

 

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遊歩道の分岐点。左側をいくと雌滝へ、右側の石段を登っていくと雄滝、展望台、そして布引貯水池へ続きます。ここの分岐点で迷う人が少なくありません。まずは左側を選んで雌滝を目指します。

 

◆しなやかに流れる雌滝

 

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新神戸駅からわずか10分ほどで雌滝に到着。あまりにも早すぎる、自然の営みとの出会いでした。マイナスイオンたっぷり。思わず足を止めて見入ってしまいます。まさかこんな近くに滝があるとは、ちょっとしたカルチャーショックでもあります。

 

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落差は19m。向こう側の滝と手前の流れと、二段構成になっています。まるで、1枚の白い布を垂らしそこからさらに糸を引いたようにみえる風情。これかそが、「布引の滝」と称された所以なのです。

 

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滝の右側にあるのは、雌滝取水堰堤。石を積んでアーチ状につくられた珍しいクラシカルな構造は、ひときわ目を引きます。さきほどの砂子橋同様つくられたのは明治33年ですが、ここでくみ上げられた水がパイプを通って浄水場に送られているという、レトロにみえて実は現役の施設なのです。

 

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再び遊歩道に戻り、次を目指します。多少の上り下りはありますが、ちょっとした散歩スタイルでも手軽に行けるところが魅力でもあります。日頃から運動不足の人には、ちょっと堪えるかもしれませんが。

 

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左側からは、心地よい清流の音が聞こえてきます。そして遊歩道のほとんどが日陰なので、これからの季節のハイキングコースとしても快適そのものです。

 

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石標に遭遇。「鼓滝」と記されています。おそらくこの下に滝があるのでしょうが、残念ながら木陰に隠れてみることができませんでした。

 

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流れ落ちる水の音がだんだん大きくなってきました。そろそろ雄滝が近いと思われます。水がとってもきれいです。

 

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雌滝から歩くこと約20分。雄滝に到着しました。六甲の岩盤を背に流れる様子は、雌滝のしなやかな流れに比べると豪快で男性的です。この流れを画像だけでみていただくのは何とも残念です。

 

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雌滝同様、ここも休憩スポットになっています。こんなところに身を置いていると、何時間でもボーッとしていたくなります。

 

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遊歩道のあちこちに、平安時代から江戸時代にかけて詠まれた歌碑があります。その数全部で36首。遊歩道はハイキングコースでもあり、歌碑の道でもあるのです。ひとつひとつの歌に触れながら滝の風情を楽しむのもまた趣があります。

 

◆おんたき茶屋とともに100年

 

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雄滝から約5分上ったところで、おんたき茶屋に到着。この遊歩道で唯一の休憩施設で、なんと開業100年以上経つのだとか。ということは、神戸の水の歴史と同様に歩んできたことになります。昔から、滝の風情を楽しむには、茶屋の存在なしでは語れません。

 

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ふとみると「布引ラーメン」の看板が。ちょうど昼過ぎでもあり、早速いただくことにしました。

 

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「布引ラーメン」はたったの500円。あっさりとした塩味のラーメンをいただきながら、眼下の雄滝が見下ろせます。この風情、なかなかのものです。ふうふういいながら口へ運ぶ一筋のラーメン、額から出る汗はまさに滝のようでした。

 

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おでんもぐつぐつと煮え、美味しそうです。

 

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なぜか石原裕次郎の写真も。

 

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思い出日記も用意され、ハイカーやカップルたちのメッセージが綴られていました。

 

◆神戸市が一望できる展望台

 

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おなかがいっぱいになったことで、さらに元気に。ここからさらに上を目指します。少し急な坂になりましたが、展望台はもうすぐです。

 

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おんたき茶屋から10分ほどで展望台に到着。多くのハイカーが思い思いの休息時間をすごしています。眼下には、神戸市中心部のまちなみが広がって気分爽快。これが夜景なら、もっと美しいことでしょう。

 

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神戸の水の原点にふれるべく、もう少し上を目指してみます。遊歩道はこの先もきれいに整備されていて、歩きやすくなっています。

 

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いきなりこんな秘境のシーンが。名付けて「猿のかずら橋」。まるで、あの徳島にある「祖谷のかずら橋」そっくりに装飾されています。決してかずらの木だけでつくられているわけではありませんが、周りの雰囲気にもマッチした野趣あふれるシーンを醸し出しています。

 

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遊歩道の左手には、大小の渓谷が続きます。

 

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ふと見上げれば、布引ハーブ園に向かうロープウェーの姿がありました。ロープウェーからの眼下には、どんな風景が広がっているのでしょうか。

 

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渓谷そのものに直接ふれることはできませんが、こんな風景が次から次へと。六甲山系はまさに自然の宝庫。この美しさはいつまでも守っていきたいものです。

 

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「五本松かくれ滝」に遭遇。数えてみると、確かに大小5本の滝が流れ落ちています。ただし、ダムの放流量によって滝の数が減少することもあるのだとか。写真ではわかりにくいかもしれませんが、この日は大小5本の水筋が確認できました。

 

◆神戸市民の水の原点ここにあり

 

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やがて左手には、圧倒されるような堰堤の姿が見えてきました。五本松堰堤。通称・布引ダム。明治33年に建設された日本最古の重力式コンクリートダムで、平成18年には国の重要文化財に指定されました。高さは33.3m。阪神・淡路大震災後は耐震工事も施され、今なお現役ダムとして重要な役目を担っています。

 

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布引貯水池に到着。時折小鳥のさえずりが聞こえる程度で、あたりは独特の静けさが広がっています。

こここそが、神戸市民の水がめ。貯められた豊富な水は、数カ所の滝を経由してやがて神戸市民になくてはならないライフラインとなる、神戸の水の原点でもあります。

 

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神戸市に給水が始まったのが明治33年。水路橋や堰堤などの水道関連施設も、すべて明治33年につくられたものばかりで、100年以上にわたって今も重要な使命を担っています。

くらしに欠かすことのできない水。それは神戸に限ったことではありません。しかしながら、その原点をみる機会はそんなに多くありません。六甲の自然にふれながら、あるいは平安時代の和歌に思いをはせながら、こうべの森にふれてみてはいかがでしょうか。

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