瀬戸内海には大小たくさんの島があり、とりわけ広島県では140以上も。映画のロケ地として、または瀬戸内屈指のパワースポットとして、多島美ならではの魅力にあふれています。生口島(いくちじま)もそのひとつで、かつては港町として栄えた懐かしい風景が島もひっそりと残っています。
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◆離島タイムスリップの旅
JR尾道駅から定期船で約30分。たった30分の船旅で到着したのは、まるでそこだけ時間が止まっているような瀬戸田港でした。
かつては瀬戸内海の要衝のひとつとしてにぎわい、港も島民にとってなくてはならない海のアクセスポイントでもありました。
定期船は、因島や佐木島などとも結ばれています。
少しまちを歩いてみると、古きよき時代を感じさせる風景に出くわします。
猫だってゆんびり暮らしています。
でもちゃんと人々のくらしがあります。
しおまち商店街の一角。その昔、潮の流れを察して潮待ちしていた船が、ここ瀬戸田港で羽根を休めていたのでしょう。
おみやげ物屋さんなんかも少し。
それでも人影はほとんどなくひっそりと静まり返っていますが、それが逆にまた離島独自の風情を醸し出しています。
港の向こうには近代的な橋の一部が。そう、ここ生口島はしまなみ海道(来島海峡大橋)により交通アクセスが一変。船から車へ、海から陸へ、転換を余儀なくされたスポットなのでした。
◆こんなところに地獄めぐり
色鮮やかなお寺が目に飛び込んできました。まるで日光東照宮を模したかのような外観は、周囲の景観とはおよそマッチせず、ひときわ異彩を放っていました。
仏教寺院・耕三寺。その特異な景観から「西の日光」と呼ばれることもあるそうです。
よく目を凝らしてみると、色彩だけでなくディティールまで細やかなところが印象的です。
さっきまでの風景が嘘のような、色彩感覚に満ちあふれた境内。
「耕三寺に行ったらぜひ地獄めぐりを」。事前にそんな観光アドバイスを耳にしていたので興味心身ではありましたが、内心ちょっとドキドキしていました。
その名も「千仏洞地獄」。一歩足を踏み入れただけで、ひんやりとした空気が身を包みます。
暗く湿ったトンネルは、約350mもの長さ。一体、どこまで続くのかと思うほど、奥へ奥へ。
閻魔大王はもちろん、等活地獄、黒縄地獄、衆合地獄など、いずれもこの世で殺生を犯した罪人が閻魔様によって振り分けられる地獄が展開されています。
鍾乳洞の探検にも似た雰囲気。
数々の地獄をたっぷり体験し、ようやくこの世に戻ってくることができました。
◆地獄から未来へ
そういえばさっき、瀬戸田のまちから少しみえていた白い風景が気になっていました。あの白いものは一体なんだろうと。
ここがその正体。さっきの地獄とは打って変わって、一面真っ白い風景に圧倒されます。
彫刻家の杭谷一東氏が製作した「未来心(みらいしん)の丘」。イタリア産の大理石で構成された大理石庭園は、全国でも珍しいスポットでもあります。
まるで地獄から天国。まぶしいばかりの白い世界は、心が洗われるようです。
まるで、地中海に浮かぶギリシャのサントリーニ島の風景にも似て。
丘からは瀬戸内海が見渡せます。
この日はあいにくの曇り空でしたが、青空だとさぞかしエキゾチックな風景だったことでしょう。
もちろんここも耕三寺のエリア内。地獄といい未来心の丘といい、類まれなるセンスが築いた造形物は、静かな瀬戸田のまちにインパクトがありすぎでした。
◆瀬戸内の魅力は離島の魅力
まるでタイムスリップでもしたかのような街並みと、地獄と未来と。ほんの数時間の船の旅でしたが、それぞれがマッチしない面白さがここにはありました。
生口島には、かの有名な平山郁夫美術館もありますが、観光手段はほとんどしまなみ海道を使って訪れる車や自転車が大半です。
尾道からわずか船で30分で、こんな水のある風景があったことに驚きを隠せませんでした。
広島県にはまだみぬ離島がたくさん。瀬戸内海の魅力に触れるには、やはり海からのルートがベストかも知れません。
旅はひとときの出会い。水はそんな旅人に寄り添ってくれる、島の案内人かも知れません。
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