名古屋市内の閑静な住宅街に、突如として森あらわる!?ホームセンターを中心に全国展開を図る大手ペットショップ・コーワペッツコーポレーション(本社愛知県)が、初の路面店「フォレストデザイン八事(やごと)店」を昨年10月26日にオープン。記念すべき1号店のショップコンセプトは、「森」。コケを中心にさまざまな植物が森=ショップ内に生息。お客さんとスタッフが一緒になって森に癒され、森を楽しもうというフレッシュな発想。取材する側も、今まで以上にフレッシュな気持ちで「森」を訪ねてみることにしました。
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◆ひときわやさしいフォレストグリーン
名古屋市天白区元八事5丁目。地下鉄・塩釜口から歩いても10分かからない好立地の幹線道路沿いに面しています。閑静な住宅街の一角に位置し、近くには名古屋を代表する有名大学もそこかしこに。
ショップカラーでもあるフォレストグリーンとのコンビネーションで、ひと目見ただけでショップの業態がわかります。駐車スペースも11台OK。
エントランス付近には、ペットをモチーフにしたガチャガチャなんかも少し。これならファミリーで来店した時に、子どもたちに家族サービスができそうです。
◆SNSアップの際は#をお忘れなく
エントランスを抜けて店内に入ると。。広っ!しかもオシャレ!空間もたっぷりあって、森と呼ぶほど密集させるのはこれから。まだまだ余裕があります。去年の秋にオープンしたばかりなので、これからアイテムも増えていくことでしょう。そのうちアイテムが密集して、森の中からうれしい悲鳴が聞こえてくるのかも知れませんね(笑)。
こちらはサボテンのコーナー。どのサボテンもミニサイズで、サボテン女子が好みそうなものばかり。人気のコーナーのひとつです。
サボテンの価格はほとんど500~1,000円まで。お財布にもやさしくリーズナブルです。
サボテンの大半は、同じ愛知の春日井市からお取り寄せ。春日井市はサボテン苗生産地として、全国的にも有名なのだそう。そういえば去年取材した天下一植物界でも、おもとや盆栽などが盛んなのも愛知だと聞いたことがあります。そういう点では、この場所に路面店をオープンさせたのは正解でした。地元で生産された苗がこの森ですくすく育っていけばほかとの差別化も図られ、リピーターも増えていくことでしょう。
あれれ、こんな可愛いサボテン君まで。ついついスマホを向けたくなっちゃいますよね。大丈夫です、ちなみに店内は自由に撮影OKだそうです。ただし画像をSNSにアップする際は、ハッシュタグ【#フォレストデザイン八事店】をお忘れなく!
◆見逃せない「アクアOB」
店長はこの人、橋本桂介さん。35歳。長身で色白、話し口調もやんわりしていて、どことなく俳優の大泉洋をのほほんとさせた感じ。出身は九州ですが店長として抜擢され、妻子を九州に残しての単身店長となりました。「オープン前後はバタバタの連続でしたが、今年に入ってようやく落ち着きました。あれ、こんなところに植物を買えるお店があるなんて知らなかった、という女性のお客様が多いです」と、森のオーナーは順調な滑り出しにひとまずホッ。
九州地区マネージャーから、中部地区マネージャーへ。立場は変わっても、仕事愛は変わらず。
――これからもアクアではなくコケリウム中心?水槽でコケリウムをつくっていると、水を張って魚を泳がせたくならない(笑)?
「それはもちろんあります(笑)。もともと自分もアクア出身だったので、そのことはよく頭をよぎります。意外かどうかわかりませんが、アクアを卒業されたお客様も結構いらっしゃるんですよ」
――ああなるほど、アクアOBであっても水槽だけは手放したくないと(笑)
「そうですそうです(笑)。なので、完成品を買われるのはほとんど女性ですが、アクア出身の男性はやっぱり自分でつくりたいと思われるのでしょう、コケやパーツを別々で買われるお客様が多いです。とはいうものの、これからは女性にもコケリウムをつくる楽しさを体験していただきたいですね」
――植物以外に増やしていきたいアイテムは?
「現在小動物(チンチラ)が数匹いるんですが、他店との差別化を図る意味で充実させていこうと思っています。ちょっとした動物園みたいに、ハンドリングもOKです」
――森にいるのは植物だけじゃないですからね。
「あと、サソリとかヤドクガエルとか。まだハッキリしていませんが、コケの充実と平行しながらそんなものも取り入れていこうかと」
――やっぱり水に近づいてる(笑)
「(笑)。そのあたりは様子をみながら、ということになると思います」
コケに対する知識やノウハウもないとニーズに応えられませんしね。完成品でもキットでも、ファンが増えるかどうかにかかってます。
「もちろんそうです。近々、コケに詳しいスタッフが合流することも決まっています。商品がさらに充実して、店全体が本当の森になるよう頑張ります」
橋本店長自らが製作したというコケリウムの水槽はKOTOBUKIのレグラス900R。「水槽のコンパクト化が進んでいるので、60センチ以上は今や大型水槽の部類に入っちゃいましたよね(笑)」。流木がダイナミックにあしらわれ、シンプルながら迫力があります。でもこうやって水槽を見ていると、やっぱり水を張りたくなってしまいます(笑)。
こちらも橋本店長作。もちろん水槽はKOTOBUKI(レグラス900R)。
もしかしてと思いきや、「さっきのもそうですが、水槽台もKOTOBUKIのプロスタイル600Lホワイトです」。ああ、やっぱり(笑)。
スタッフの中田奈緒美さん(左)と談笑する橋本店長。オープニングスタッフ募集の時は40人以上も応募があったそうです。こんなに広々とした場所なら、誰でも働きたくなります。平日はスタッフ2人で対応し、日祝日はさらに増員しシフトを強化しています。
◆イチオシはKOTOBUKIコンパクト水槽
コケリウムの完成品にはKOTOBUKIのコンパクト水槽が使われています。「やっぱり丈夫で使いやすく透明度も高いので、自分としてはイチオシです」と橋本店長。どちらかというとラウンド型のガラス容器が主流っぽいコケリウムですが、スクエア水槽のほうが見た目にも存在感があるような気がします。しかもアクア経験者なら、「見せ方」だってわかっているはずでしょうから。
シダやスギゴケ、ヒノキゴケ、シノブゴケ、スナゴケなどが使われていて、水槽もすべてコミコミで8,000円とかなりリーズナブル(水槽はレグラスネイチャーS300横置き)。
おお~、同じ水槽を縦置きにしたコケリウムが。さすが橋本店長、レグラスを知り尽くしてますね(笑)。水を張ったり広がりを見せるなら横置き、流木やシダなどを使って高さを表現するなら縦置き、といったところでしょうか。こちらも8,000円。ネフロレピス、コツボゴケ、シノブゴケ、ホソバオキナゴケが使われています。
これまた可愛いジオラマ風コケリウム。若手スタッフが描いたというPOPも新鮮です。そういえば店内には、売る気満々の派手な値札やPOP がありません。「店の雰囲気をまず優先したかったんです」と橋本店長。こちらは6,000円の完成品。レグラスネイチャーC200が使われています。
まるで宙に浮いているようにも見えるKOTOBUKI製天空の水槽・アーク400も。これをアクアではなくコケリウムとして使った例は初めてみました。アッパレあげます(笑)!
ユーザー自身の手でコケリウムを製作したい人はぜひこの中からお選びを(笑)。
◆さらに充実した品揃えを目指す
もちろんラウンド型のガラス容器やボトム型容器を使ったコケリウムも、各種絶賛販売中。女子ウケ間違いなし。
こんなにコンパクトなコケリウムも。
もちろんコケそのものもパック入りで販売中。比較的扱いやすいコケがラインナップされています。
熱帯地域が原産の養生シダ・ビカクシダなんかも少し。直射日光ではなく、レースカーテン越しなどに光を当てると育ちやすく、インテリアとしての価値も十分。
クネクネと曲がりくねった葉が特徴のフペルジア。これもシダ類で、直射日光ではなく明るい日陰に置くのがベストなのだそう。そして、冬になれば乾燥しがちになるのはコケリウムも同じこと。インテリアに植物を取り入れるための主導権はほとんどが女性のような気が。長い髪をかきあげながら、ショッピングの途中に赤いフィアットなんかでサッと乗り付けてチャッと植物を買っていくアラフォー女子を妄想してしまいました(笑)
エアープランツコーナーも少しずつ充実。今後はライオンゴロシや悪魔の爪など、世にも珍しい種の仲間や食虫植物などもぜひラインナップに加えてくださいね。絶対ウケますから!
もともと爬虫類の水飲み容器だったストーンポット。これをサボテンなどの鉢受けがわりやコケリウムの容器に起用してみたら、女性客の間でヒット。少し発想を変えれば、思わぬヒット商品につながる可能性だってあるのです。
◆チンチラを筆頭に小動物も
ここから先は、いきものたちが棲む森。現在は数匹のチンチラが、お客さんをウェルカム。チンチラという名前はよく聞きますが、ペットショップなどでは意外とあまり見かけないチンチラ。チンチラのことならフォレストデザインへ、というフレーズが地元で定着するといいですね。
おお~、もふもふ可愛い!ホワイトのチンチラ。大きさはうさぎと同じくらいです。南アメリカ南西部原産で、トトロのモデルにもなったそうです。テンジクネズミ(漫才師ではありません笑)のなかまで、部屋で放し飼いにして遊ばせることもOKだそうです。
こちらはピンクホワイトのチンチラ。上下の運動を好むため、高さのあるケージが必須。でも飼うと、ちゃんと人になついてくれるそうです。
ケージの中でスヤスヤ。「ハリネズミはいないんですか?という声が増えてきました。ハリネズミは今小動物で一番人気のようてすが、小動物を扱っている以上ラインナップに加えたほうがいいのかなと思っています」(橋本店長)。まだまだやらないといけないことがたくさんありますが、オーバーヒートしないように(笑)。
チンチラ用品コーナーでは、巣箱やトンネル、ステージ、エサなどのグッズもかなり充実しています。
◆あまりにも贅沢なフリースペース
コケリウムを店内でつくってお持ち帰りできる工房も。
店内で買った材料を持ち込み、ここでコケリウムとして完成させるスペースです。もちろん製作にはスタッフが指導・アドバイス。これなら、製作中に迷いやわからないことが起きても、すぐにスタッフに聞けるのでいいですね。
コケリウムに関するワークショップもスタート。こういったお客さんを対象としたイベントが始まると、お客さんとのコミュニケーションがさらに深まり、森のファンはさらに増えていくことでしょう。
さてさて、今日個人的に一番気に入ったスペースがココ。座席数もたくさんあり、ゆったりとくつろげます。こんなフリースペースを確保できたのも、やっぱり店舗全体が広いからにほかなりません。
10人以上は軽く着席できるスペース。日も適度に差し込み、緑に囲まれた空間はまさに癒しの森でもあります。いっそのこと、フォレストカフェと呼びたい(笑)。
ソファもごらんの通りグリーンで統一。やっぱりそうきましたか~(笑)。「お客様が使っていただける多目的なので、ご家族揃ってお越しになった時の休憩用として、あるいは奥様が品定めをしている際のご主人の待機場所としてご自由にご利用ください」(橋本店長)。
◆豊かな森は豊かなコミュニケーションから
「店内のコケリウム完成品の大半は、店で扱っているコケを使っています。完成品を買って帰る時はコケの種類をスタッフに聞いいただいて、店内のコケの説明を見ておくとご自宅でも長い期間きれいなコケが維持できると思います。また自分でコケリウムをつくりたいお客様には、どんなコケを組み合わせたらいいのかなどのイメージトレーニングにもご利用いただけたら幸いです」(橋本店長)。
大手ペットショップ・コーワペッツが満を持してオープンさせたフォレストデザイン。こんな店をやりたくてもなかなかできない理想を、そのままかたちにしたようなショップのような気がします。これもコーワぺッツの底力といえるでしょう。
とはいっても、まだオープンしたばかり。1年も経過すればニーズは把握できるでしょうし、軌道修正の可能性だってあります。
せっかく森というコンセプトで立ち上げたユニークなショップなので、これからもブレない森でいてほしいと思います。そして確実に育っていってほしいと願うばかりです。
植物や動物などさまざまな自然が共存共栄して豊かな森をつくっていくように、お客さんとスタッフ、あるいはお客さん同士のコミュニケーションによって形成されていく、うるおいのある豊かな森。このフィールドでどんな出会いが待っているのか、これから先が楽しみです。
★同店は2020年10月18日付で営業を終了することになりました