水槽メーカーの老舗・KOTOBUKIには、店舗設計という“もうひとつの顔”があります。
聞くところによると、その礎は創業当時からあったのだとか。
関西を中心に、アクアショップやホームセンターにおける実績は、去年だけでも年間24件。
北は東北から南は沖縄まで、営業エリアはコンスタントに拡大しています。
老舗の水槽メーカーだからこそできる、とっておきのポテンシャル。
「KOTOBUKIにまかせておけば間違いない」という評価が、なによりの励みとなっています。
◆ホームセンターならではの工夫
今回の現場は、リニューアルオープ前の大型ホームセンター・カインズホーム東大阪店。開店10周年を機に全店改装に伴い、1階のペットコーナー内アクアリウムのゾーンも一新されることになりました。
一番奥に壁面水槽が3段で構成されています。数えてみると、45㎝水槽が40本、30㎝水槽が12本、60㎝水槽が6本、90㎝水槽が2本、合計ジャスト60本のオールガラス水槽です。
多くの水槽を支えるブラックの什器は、スチール製。そしてメンテの際に開け閉めが必要なハネ上げパネルにはエンビが使われ、耐久性・機能性に優れています。
ハネ上げパネルをオープすると、水入れ用・水抜き用2種類のコックが。わかりやすい配置なので、これだとアルバイトスタッフでも簡単に作業ができます。通常の水槽管理はこの作業だけでいいので、普段の作業効率もアップすることでしょう。
最上段水槽のさらに上には、オーバーフロータイプの貯水槽が格納されています。こうした設計により、個々の水槽で水質管理や水温管理が可能だそうです。
水草用のいわゆる島水槽。約60㎝の水槽で構成されていますが、よくみるとそれぞれの水槽の高さが違います。高さが違うことによって、さまざまな大きさの水草を見てもらうことができそうです。なお金魚用も水草用も、それぞれ下部の浄化槽で加温し各水槽に水を回す仕組みです。
こちらは金魚をメインに取り扱う島水槽。約60㎝の水槽が上部・下部合わせて8本あります。これから夏にかけて、金魚に需要が集まるシーズン。改装後は、きっと多くの金魚ファンでにぎわうのが想像できます。
ホームセンターという性格上、誰もが気軽に立ち寄れるよう、どこに何があるかみやすさ・わかりやすさが徹底されています。生体はまだ投入されていませんが、やっぱり新しい水槽をみていると清々しい気分になります。さらに什器が精悍なブラックで統一されているため、全体をグッと引き締めています。
◆地方出張でもグルメや地酒とは無縁
工事を担当するリーダーは、KOTOBUKIの佐郷(さごう)健次さん。この道10年以上のベテランです。通常3~4人で作業にあたるのが一般的ですが、工事が重なると佐郷さんが複数の現場を掛け持ちすることも珍しくありません。半月以上も会社に戻ってこられない日もあります。
――本社で顔を拝見する機会が少ないのは、この仕事をされているからなんですね(笑)?
「ああ、そういえばそうですね(笑)。何よりも現場優先になりますから、会社にいるより現場で仕事をしているほうがはるかに多いと思います」
――はたから見てるとテキパキしておられますが、昔から手先が器用だったんですか?
「どうなんでしょうね、自分でもよくわかりません(笑)。ただ、こうして体を動かすのは昔から好きでしたし、自分に向いている仕事だと思います」
――まさに体力勝負ですね。
「それに納期は絶対厳守ですから。たまに図面と実際で寸法が違う時があるんですが、もう冷や汗ものですよ(笑)。なので、仕様変更などが急に発生するかもしれないということを極力予見するためにも、普段からのコミュニケーションは密にしています」
――そういう時も臨機応変に対応しないといけないんでしょうね。
「はい、色々な修羅場は何度も経験しています(笑)」
――でも全国を飛び回れるわけですから、仕事が終わったら地元の名産や地酒を堪能することもできるのでは(笑)?
「みなさんそう仰るんですけどね(笑)。限られた納期に間に合うか、抜け落ちてることはないか、いつも繰り返し頭の中でリピートしているので、アフターファイブを楽しむことはほとんどありません。現場とホテルを往復するだけなんです。(笑)」
――大型ホームセンターでの仕事が多いみたいですね。
「そのせいでしょうか、全国どこへ行っても店舗の中での作業ですから(笑)。その地方の特色とか、ほとんど感じないんです。この仕事をしている以上仕方のないことでしょうが、まずは店舗什器の完成を考えて仕事をしています。」
自動車が趣味なんですという佐郷さん。B級ライセンスを持ち、年3~4回ジムカーナのレースにも出場するのが楽しみなのだとか。休みの日になると、体を休めることなく近辺の山へトレッキングに出かけて、鋭気を養っているそうです。
◆自社製品に対する自信
ホームセンターでの工事期間は平均4日間。この日はほぼ最終段階で、水漏れがないか、あるいは電気配線は適切かなど、計3人のスタッフで各種点検作業が行われていました。
壁面水槽裏の配線&配管も入念にチェック。
バックヤードは耐震への配慮も。「特にオーダーがなくても、当たり前のようにやっておかないといけない部分です」(佐郷さん)
壁面水槽をよくみると、最上段の水槽だけが斜めにカットされています。これにより、最上段にある水槽でも下からよくみえるように工夫されています。このあたりの工夫は、長年水槽づくりに徹してきた経験がちゃんとモノをいうポイントです。
島水槽のライトはKOTOBUKIのフラットLED900。薄型のライトなので、水槽の視野を妨げることもありません。
すべての水槽にデザイン性とちょとした機能が嬉しい水中フィルター「ろかドーム」を。
また水槽には耐久性に優れた信頼度抜群の電子制御式サーモスタット「ET-1000X」で温度管理もバッチリです。
ろ材ももちろん自社製品。品質に自信があるからこそ、提案できるアイテムです。
◆自社スタッフだけで取り組むメリット
KOTOBUKIが店舗設計を手がける意味は、どこにあるのでしょうか。「まずは自社製品の耐久性の立証だと思います。メーカーとして長年エンドユーザーに安全な商品を使ってもらっているという自負がありますから、水槽においても什器においても、自信を持っておすすめしています」(佐郷さん)。自社製品を提案するのは当たり前というのではなく、これまでの実績があるからこそできる提案なのです。
なにより、KOTOBUKIの社員がじかに工事にあたっているのが心強い気がします。どの分野でも合理化が進み外注が多い中、自社ですべての責任を負うというのも大きな信頼につながっています。
「それにリーダーは私一人でも、いざ工事に入ると全国のスタッフと連携が図れるので、小回りが効きますし、何かあった時の対応も早いのが強みだと思います」と佐郷さん。それだけKOTOBUKIの技術基準が常に一定に保たれているという証明でもあります。「やっぱりKOTOBUKIさんにやってもらってよかった、と言ってほしいですからね」という佐郷さんのひとことに、すべてが凝縮されているような気がしました。
最近は店舗設計だけでなく、大型商業施設におけるイベントの展示装飾なども手がけています(奈良県・イオンモール大和郡山)。
本業を離れて、エンドユーザー向けイベントのコーナーを任されることもあります(「ペット王国2017」)。
会社行事で第23回「全国金魚すくい選手権大会」の選手としても活躍。今気づいたんですが、メガネをかけてる佐郷さんって、歌手のさだまさしさんに少し似てますね(笑)
安ければいいのではなく、馴れ合いな関係になるのでもなく。専門技術プラス人間味のある仕事ぶりは、今も昔も変わらないKOTOBUKIらしさ。
「まかせられる信頼」こそ、最大の評価にほかなりません。