当初はフィッシング愛好家たちのイベントでした。男ばかりのメンツで、魚ヘンの人たちどころか、「魚くさ~い人たち」の集まりだったそうな(笑)。そして今回が23回目。いつの間にか、こんなに長い歴史を刻んできました。なぜ2月開催かというと、渓流のオフシーズンだから。何とわかりやすい(笑)。最近では魚女子の出展も増え、華やかさもプラスされてきました。出展物も、釣り竿やリールといった直接的なツールではなく、あくまで魚にちなんだモノ。しかもアート色も濃く。ということで、早速会場に足を運んでレポートしてみました。
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◆アクアとフィッシングのイイ関係
それにしても、いいイベント名です。「サカナヘンノヒトタチ展」。「魚ヘンに人」。実際にこのような漢字はありませんが、何となくありそうな気さえするくらいハマってます。インパクトのある1文字に、イベントの趣旨も概要も凝縮されています。考えてみれば、「キワメテ!水族館」だってある意味サカナヘンのヒトに違いありません。
もちろんアクアユーザーだってそうです。アクアとフィッシングは別物、と安易に決めつけるなかれ。多くのアクアユーザーは、「子どものころ魚や生きものが好きだった」「親や友人とよく釣りに行った」と、アクアのきっかけを熱く語っているではないですか(笑)!
たかがきっかけ、されどきっかけ。フィッシングが限りなくアクアの入口に近いことは間違いありません。たぶん(笑)。何より、魚が好きだという大きな共通点。アクアであろうがフィッシングであろうが、あなたも立派なサナヘンのヒトなんです(笑)。
DMもなかなかイケてます。出展者の職業や年齢はまちまちで、デザイナー、写真家、経営コンサル、銀座の宝石商、さらには現役タレントなど、実に多彩。1年に1回定期的に開催されているイベントですが、もしかしたら「キワメテ!水族館」も来年あたり1ブースもらって出展しているかも(笑)。もちろんアクアユーザーの出展もOKなので、ぜひご検討を。
◆差し入れにも注目!
会場にはさまざまな差し入れが。特筆すべきは手前のお酒。何と自作の山桃酒。来場者の藤林幸次さん(京都市)が数年前から自分で果実を摘み取って酒づくりに励んだのだとか。もちろん国税庁公認。一体どんな味がするのでしょうか、カーネルサンダースおじさんも興味深そうです(笑)。来年もまた違う種類の果実酒をつくって届けてくださるそうですので、来年もまた取材に行かなきゃ(笑)。
展示物はすべて撮影OK。でもパクリはいけません(笑)。当たり前ですけど。
この日は「サカナヘン・デー」。会期中唯一の土曜日ということもあり来場者も多く、終始盛り上がっていました。
◆「遠距離恋愛」の秘密
おお~、いきなりダイナミックなブースに遭遇!通路をはさんで左側がニュージーランドで撮影された写真、右側がびわ湖に生息する固有種・ビワマスを中心にした写真で、こちらは去年びわ湖博物館でも展示され、のべ40万人の目にとまって大反響を呼んだのだそうです。
早速許可をいただいて、拙者が接写(笑)。サイズは何とB0。写真パネルとしては、これ以上ないビッグサイズ。これほど大きなサイズだと、ビワマスのディティールがよくわかります。水深約70~80センチのびわ湖で、シュノーケリングで撮った力作の数々に圧倒されてしまいました。
500ミリレンズを駆使したびわ湖の夕陽。いいですね~。
撮影者は、関西の釣り専門雑誌を中心に活躍中の写真家・廣田利之さん(左/兵庫県)。淡水魚ユーザーの中には、廣田さんを知る人も多いのではないでしょうか。3月2日(月)放送のNHKBSプレミアム3の番組「ワイルドライフ」(午後8時~8時59分/再放送は9日(日)午前8時~)では、ビワマスはもちろんホンモロコやアユ、ウグイなどの水中撮影に協力。写真家でありながらびわ湖の巨大水系や淡水魚の生態を知り尽くした廣田さんならではのクオリティーがいかんなく発揮されています。サカナヘンノヒトタチ展、のっけからすごい人に遭遇してしまいました(笑)。
ブースは変わって、こちらは魚拓の数々。魚拓というと、今もモノクロの世界だとばかり思っていたので、鮮やかな色彩のマダイにはびっくりしました。
ちなみに関西と関東ではそれぞれつくり方が違うのだとか。関西は魚体に着色させて和紙で転写する「直接法」が主流で、関東では魚体に和紙を貼り付けてから着色する「間接法」が一般的なのだそう。現在は水のおいしい南アルプス(山梨県)の「アトリエにこもってます(笑)」と話す出展者の熊本昇平さん。そんなくらし、うらやましすぎて嫉妬してしまいました(笑)。
ん?なんでこんなキャプが(笑)?2匹を魚拓にしたキャプなんですが、かつてのマダイの生息エリアを最北(オス)と最南(メス)で示し、ちょっとした遊び心も加えたのだそう。てっきり熊本さんの実体験かと思いました(笑)。
後日、ご自身のフィッシング&スリーピングカーに「キワメテ!水族館のステッカー、ちゃんと貼りましたよ~!」と報告をいただきました。なかなか律儀でええ人です(笑)!
会場には、チビッコ向けにこんなコリントゲームも用意。魚に興味を持ってもらうための方法として、こんな遊び心満載の展示物はイケてます。
◆サカナヘンを通じてまさかの再会
おお~、まるで美術館の様相。油画、アクリル画、POPデザインを展示したブース。「自分で言うのも何ですが、かなり面白いと思ってます(笑)」と神谷利男さん(大阪市)。さすがクリエイターだけあって、発想も内容もポテンシャルが高い!
実はfacebookを通じて知り合った、かなり前からの友人。数年前にオフィスを訪ねてきてくれたことがあるのですが、てっきりまだ京都山科に住んでいるものと思いきや、「今堂島のタワーマンションに住んでますねん」ってドヤ顔で話していたことを、今でもハッキリ覚えてますから(笑)。
このイベントでは、実行委員の最前線にいるアクティブでオシャレな人。デザイン会社のオーナーでもあり、幅広く各界で活躍中です。まさか取材を通じてまたお会いできるとは思ってもみませんでした。ぜひ今度何か一緒にやりましょう!
こちらでは流木が展示されています。かなりアクアに近いシチュエーション(笑)。和歌山県の煙樹ケ浜海岸で見つけてきた流木を、古代魚やタツノオトシゴに見立ててアートに。多少は演出パーツの付け足しは多少ありますが、原型は流木そのまま。創造力がモノをいう展示物です。
よく見ると、スゴい顔してます(笑)。もしかすると、写真を撮る来場者が一番多かったブースだったかも知れません。ユニークでありながら迫力もあり、しかも自然の流木という点でもポイントが高かったのでしょう。
実は出展者の篠原幸男(八尾市)さん、かつて在籍していたデザイン会社のスタジオ部門のコワいコワい上司だったんです。もう30年以上も前の話。まさかこんなところで再会するとは思ってもみませんでした。ヤラセなしの偶然。もしかしたら、サカナヘンのヒトになったからこそ、気性も穏やかになったのも知れません、多少(笑)。
まるで理科室の実験のような展示物。廃棄処分されてしまった魚を、特殊な加工方法で色鮮やかな透明骨格標本にして蘇らせました。小さな魚ではありますが、骨格のひとつひとつがハッキリ見てとれます。単に美しいというだけでなく、子どもたちの教材としても価値ありとみました。
出展者は松前諭さん(大阪市)。自身が在籍していた大学の教授からこの技法を学び、しかも教え通りに広くノウハウをオープンにしつつ、教材やアクセサリーとして販路を拡大中です。簡単に言うとこれだけで終わってしまうのですが、実は若いころのワークスタイルは超波瀾万丈の連続でした。あまりにもブラックすぎて、ここではさすがに言えないことが多々(笑)。そんな暴露話より、せっかくなので透明骨格標本をより多くの人に知ってもらいたいので、機会をみつけてまたじっくりと話を聞いてみたいと思います。
「これって、小動物や魚のシェルターとして使えません(笑)?」と松前さん。あー、それいいかも。外来種として駆除が盛んなアカミミガメの甲羅を、珍しい骨格標本として展開していきたいとのこと。中をのぞくと、しっかり背骨があります。こういうのが教材に役立つんですよね。「現在、アイデア募集中です」(松前さん)。
◆ここにもいた!おっさんずLOVE
コースターではあるんですが、よく見るとコースターのどこかに魚にちなんだ文字や絵柄なとの小ネタが詰まってます。「このイベントが始まると、普段でもついついカタカナモードになるんです(笑)」と話す山崎謙介さん(名古屋市)。ナンデヤネン(笑)。
時間を持て余して、飲み屋さんのコースターで色々描いていたら、いつの間にかアートに。さすが印刷会社勤務というだけあって、色だの版ズレだのウルサそう(笑)。あまりにも可愛いテイストだったので、最初はてっきり女性の作品だと思っていました。「オッサンですみません(笑)!」(山崎さん)。
さてさて、気になる女性の作品にも注目。魚模様で書かれたLOVEの文字。4文字の中には、それぞれハートマークが隠れているとのこと。今回初出展の武田みかさん。「みなさんで探してみてくださ~い♡」って。はぁ~、ほっこり笑顔とLOVEテイストに癒される~~~(笑)。シンプルな作品ではありましたが、サカナヘンのオトコたちをトリコにしていました。
グラフィックデザイナーでありながら、のこぎり奏者でもあるというユニークなプロフィールの安藤玲子さん(八尾市)。今やサカナヘン愛が一番強いともいわれていて、墨で描かれた文字やチンアナゴが印象的でした。それにしてものこぎり奏者って気になります。え、最終日でも弾いた?ずる~い(笑)!
トモチンさんは松竹芸能所属のシンガーソングライター。魚好きが講じて、サカナヘンにも参加。ユニークな作品はもちろん、トークの面白さも相まって見どころ&聞きどころ満載。タチウオをモチーフにしたベルトやら、手足がペンになったペンダコやら、さすが関西の芸人魂MAXの作品が印象的でした(笑)。
アメリカ在住の石村美佐子さん。一見、小学校か中学校の校長先生のような穏やかで包容力もありそうなキャラ(笑)。ところが何と現地ではフライフィッシングウーマンとして、数々の賞もゲットしておられる人なんです。「水面に映る景色が好きで、川の中の魚をみつけるとうれしくなるんです」と笑顔が素敵な石村さん。自身の油彩画を解説してくれるたどたどしい日本語も、いかにもアメリカンでした(笑)。
◆日常がちょっとだけ魚に偏った人たち
このほかにも、さまざまなアプローチで魚をテーマにした作品がてんこ盛り。シュールなリアリズムを追求した数々の写真の集大成。
ご主人のアイデアで、ブイに絵を描いた奥様の絵がイケてるインテリアにもなりそうな球体アクセサリー。
イワナやブナなどをアルミ合金でつくったレリーフ各種。
出展者自らがイメージしてつくった仮想ブランド「KEY BLADE」のキャップとTシャツ。
ロープワークによってつくられたヤマメやアロワナの壁掛け。
魚も人も釣れるという(笑)、ソルトフライ。
まるで即売コーナーのような圧巻の浮きコレクション。
宝石商が描いた絵(笑)。
そして、びわ湖と西日本エリアの淡水魚フィッシングを楽しむ釣り雑誌「Walton」オーナー・北原一平さんのご子息コーナーも。お父さんと同じくとことん魚が好きなのだそうで、つい最近ドデカイ鯛を釣り上げたのだそう。あーやっぱり魚の子、、じゃなくてカエルの子はカエルなんですよね~(笑)。かたちは違っても同じサカナヘンのメディア同士、いつかコラボできるといいですね。
◆1分30秒の壁にあえなく撃沈
この日、午後4時からは自分の作品を1分30秒で紹介する「ライトニングトーク」なるミニイベントも。
ライトニングトークはちょっとした自己紹介も兼ねていて、作品だけでなく出展者の人柄を知るいい機会にもなりました。そして、どの出展者もとってもいい顔されていました。
でもほとんどの出展者が時間オーバー(笑)。
みなさんやさしいし、人なつこいし、親切だし。何よりも、フィッシングという側面にとどまらず淡水魚の生態や地理・水系を知り尽くしているところがすごい。それぞれ仕事は違いますが、こうしたイベントを通じて得るものは大きい気がします。魚好きに悪い人はいないとよくいわれますが、本当にその通りだと思いました。多分(笑)。
わずか数時間滞在しての取材でしたが、もうアッちゅう間。時間が経つのを忘れてしまうほど、サカナヘンのみなさんに囲まれたハッピーな一日でした。
大阪府立江之子島文化芸術創造センターで開催された6日間のイベント。日常がちょっとだけ魚のほうへ偏ってしまった人たちが、この期間だけは日本の芸術文化を背負って立つアーティストに(笑)。さまざまな作品に圧倒され、驚き、感心し、癒されたサカナヘンノヒトタチ展。でも作品以上に輝いていたのは、出展者や来場者といったサカナヘンのヒトたちそのものだったような気がします。