関東・中部・関西・九州の各エリアを拠点に、計23カ所で店舗展開を図る総合ペットショップのピーツー・アンド・アソシエイツ(営業本部・福岡県)。今春、3店舗がリニューアルオープンし、2020年の新たな顔として生まれ変わりました。そのうちの1店舗は、大阪ミナミのど真ん中にあります。関西を代表する華やかな1等地で、ついつい時間を忘れて和んでしまうオアシス的な存在の同店を訪ねてみました。
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◆人とペットが楽しく一緒にくらす
多くの人やモノが行き交う大阪ミナミ。その中心に位置するのがセレクトショップやカフェ、シネマ、アミューズメントなどで構成された大型商業施設「なんばパークス」。その5階にP2なんばパークス店があります。まるでインテリアショップのような店構え。若年層が中心の大型商業施設内でもあり、まさにニーズにマッチした洗練された印象を受けます。
P2は1937年に創業して以来80年以上もの長きにわたって「人とペットが楽しく一緒にくらす」をテーマに事業を展開。身近なペットやプランツとよりよい関係でくらすことが、その延長線上にある野生動物や自然を大切に思う気持ちや人と自然が共生する社会環境を育てていく、という願いが込められています。ペット(Pet)・植物(Plants)・人(Person)が共存できる社会環境の実現こそ、P2の目指す世界観にほかなりません。
ペットショップとは思えないほど、エレガントでハイセンス。若年層を主要ターゲットにしているなんばパークスともうまくリンクしています。店頭POPひとつをとってみても価格を強く打ち出すこともなく、決して価格で勝負するのではない独自のスタンスが表れているような気がします。
取り扱いとしては、アクアはもちろん観葉植物やコケなどのプランツ全般、小鳥・ハムスターやハリネズミなどの小動物、そして犬猫関連の各種用品などとなっています。リニューアルオープンしたのは、今年2月22日。大きなポイントは、プランツゾーンとアクアゾーンがつながった点にあります。プランツゾーンのグリーンがコケリウムやパルダリウムなどのアクアゾーンとクロスオーバー。さらに、アクアゾーンを経て小動物ゾーンへと緩やかに展開する店舗構造は、まさに自然の楽園。まるで森の中を歩いているような気さえします。
◆創業は83年前という小鳥飼育のパイオニア
出迎えてくれたのは、コザクラインコの「よもぎちゃん」。なんばパークス店の看板鳥でもあり、営業スタッフでもあります。コザクラインコは、パートナーへの愛情が深いことからラブバードとも呼ばれていて、大の鳥好きの福島さんが根気よくよもぎちゃんと寄り添ってきた結果、お気に入りの人に素直についていく『追跡』なる小技もできるようになったそう。初対面の「キワメテ!水族館」スタッフの手にも、こんなにお行儀よく乗ってくれました。1937年に田坂飼鳥店として創業した歴史を持つP2。80年前といえば、日本にはさほどペット文化が浸透していなかった時代。反面、小鳥を飼育する趣味は当時から盛んで、80年経過した今も小鳥を大切にしているのは、そんな歴史があってのことなのでしょう。
オリジナルの大型水槽に、オカメインコがいました。オカメインコが楽しくすごせるように、たくさんの遊び道具を入れておくにはどれくらいのケージが必要なのかが、よくわかるシュミレーション的な提案展示です。さらに小鳥の仕草や行動がよく観察できて、それぞれの小鳥たちの個性を知ることができます。
自社ブランド「HAPPY HOLIDAY」。小鳥用品やハムスターのフードなど多くのアイテムを開発販売し、今では小鳥ファンにもすっかり浸透しています。自社ブランドの立ち上げと長期的継続。まさに、技ありというべきなのでしょう。
◆アクアリウムの楽しさをたくさんの人に伝えたい
アクア関連グッズのセレクトは、「ひとつのメーカーにこだわることなく、それぞれのメーカーの持つ個性を大切にしています。それらをトータルに組み合わせて展示することで、既製品にはないオリジナリティーを大切にしています」と、エリアマネージャーの福島祐嗣さん。曰く、「もっと自由にアクアリウムを楽しんでほしいから。セット商品の在庫もありますが、お客様のライフスタイルに合ったアイテムをひとつひとつ吟味していただき、最終的にはお客様ご自身の手で水槽の立ち上げができるようサポートできたらいいなと思っています」。場所柄、明確な目的を持って来店する人は少ないかも知れませんが、ふらっとカフェに立ち寄るように、何気なくアクセサリーを探し求めるように、ひとつの来店機会がアクアを始めるきっかけになると信じ、これからも水の中に広がる小さな自然を提案していきます。
それではアクアゾーンを紹介していきましょう。まず魚たちの住処となる水槽を支える什器はKOTOBUKI製。スッキリした白色で仕上げてあるのは、若い人たちが集まる商業施設という場所柄でしょうか。今回の店舗リニューアルに伴い、水槽関連の什器も順次刷新していく予定です。
什器だけでなく、水槽もオールオリジナルのKOTOBUKI。「店の雰囲気や客層を考えると、飼育しやすい小型のきれいな魚が人気です。アロワナのような古代魚を置いてみたい気持ちはあるんですが、ここには合いませんよね(笑)」(福島さん)。コンパクトな水槽には、小型カラシンのネオンテトラ、レッドテトラやラミーノーズテトラ、ブルーグラスなどが混泳しています。
こちらは、ブラックファントム、金線ラスボラ、ガーネットテトラ、プリステラなどが混泳。誰もがやってみたい混泳水槽ではありますが、初心者にとって相性のいい魚はどれなのかわからず、ついつい見た目だけで判断してしまい結局失敗、という悲劇も少なくありません。こんな風に、複数の小型魚が泳いでるシーンをみていると、ああこんな魚同士も飼えるんだとひと目でわかるところも、初心者にやさしい提案展示としての配慮です。
1匹だけ泳ぐ姿はちょっと寂しげ。闘魚のベタだから仕方ないんですが。プラカットジャンボのオスがゆうゆうと泳いでいました。
人気のメダカも、たくさんの種類がいると目移りしてしまいます。この水槽には、改良品種のシロメダカや、野生の日本メダカにルーツを持つ黒メダカが。春の訪れとともに、いよいよメダカの季節です。
しばらく泳ぐと日光浴、そしてまたちょっと泳ぐ。そのパターンを繰り返す行動特性が実に可愛いゼニガメ。ついつい見入ってしまいます。カメは、女性はもちろん子どもたちにも大人気です。
金魚の養殖で有名な弥富産の琉金。これくらい大きくなってからだと、上手に飼えそうな気がします。どこか懐かしさを感じつつ、新しい金魚のいるくらしを始めてみてはいかがでしょうか。
◆ヒュドラケースも提案展示
KOTOBUKIのレグラスネイチャーC200をベースに、こんなオリジナル水景も。プランツだけでなく、水を張った状態のレイアウトもなかなかイケてます。メーカーにこだわらず、いいなと思う水槽やパーツを組み合わせて展示し、実際に自宅に置いた時イメージしやすいように工夫されています。これも独自の提案展示といえるでしょう。
店頭にあるのは、比較的初心者にも扱いやすいコンパクト水槽が中心。小型の熱帯魚を手軽に楽しみたい人におすすめのフレームレス水槽とフィルターがセットになったレグラスR-200フィルターセットも。アクアを始めるならやっぱりフレームレスがいいという人にも、このサイズなら手軽に取り組めます。
発売以来好調なスタイリッシュ水槽「ビュース」。お店では特に白と黒が人気だそうで、底面フィルターがセットになっている点が初心者でも扱いやすく、アピール度も十分。聞くところによると、つい最近までこのビュースにミシシッピーニオイガメを2匹入れて展示していたとのこと。しかも流木に水流を当ててやさしい水の流れを演出するという提案が功を奏し、ビュースはもちろんミシシッピーニオイガメや流木、カメのエサなどのセットを買っていく人が多かったそうです。
プランツと人気のメダカを組み合わせて、見ているだけで心を和ませてくれる水辺の世界へ。
ヒュドラケース3133を使って、人気のヒョウモントカゲモドキが展示されていました。今人気の通称・レオパ。やっぱり女性に人気があるんですよね。「ただ、生きたコオロギをエサにするのは女性には抵抗があるみたいなので、それを考慮して人工飼料で慣らしてから(レオパを)販売しています」(福島さん)。
生き餌が苦手なユーザーにおすすめなのがこれ。アメリカ製の人工飼料。人工飼料に慣れたレオパとこの商品を組み合わせれば、初心者の女性でも安心してレオパが飼育できます。
高さのあるヒュドラケース3133にいるのはアカハライモリ。久しぶりにアカハライモリが自由に泳ぐ姿を目ることができました。それにしてもヒュドラケースが3つも展示されている光景は、実に稀少でした。
金魚飼育にマッチした和テイストの底砂「和彩」。小型水槽はもちろん金魚鉢にも合い、お店ではベストヒット商品ということでした。
◆ペットやプランツとの出会いとくらし方を提案
一般的なショップではまだまだ珍しいジュエルオーキッドも。プランツのトレンドにも詳しいスタッフのセンスが功を奏しているのでしょう。
さまざまな種類のプランツが所狭しと並んでいます。しかも、どこからでも自由に出入りのできるオープンな店舗構造も魅力のひとつです。入店することをためらわないでもいい空間配慮が印象的です。
P2なんばパークス店は、これからもひとりでも多くの人にペットやプランツとの出会いと素晴らしい生活を提案していくショップであり、アクアの裾野を広げていくという点ではなくてはならない存在であることも確かです。
スタッフのみなさんは、接客時の笑顔も素敵です。そしてP2では、動物たちのことを“生体”とは呼ばず、扱っているのは単なるモノではなく生き物なのだ、という強い信念が伝わってきます。生き物を扱うすべての人にとって、忘れかけていた何かを思い出させてくれたような、そんな基本に立ち返らずにはいられませんでした。
2025年には万博開催、2031年春には主要都市部を結ぶ新たな大阪メトロ路線が開業予定、そして誘致中のIRが実現すればターミナルの拠点となるミナミは今以上に活性化することでしょう。