金魚のまち・奈良県大和郡山市で、今年も恒例の金魚品評会が開催されました。今年で5回目を迎えた金魚イベント「金魚フェス」の締めくくりとして行われる金魚品評会。今年もまた数多くの金魚が出品され、会場はいつも通りにぎわいました。
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◆秋ならではの風物詩
会場はいつも通り大型ショッピングモールのイオンモール大和郡山店で。ちょっと雨がきそうな予感。しばらく足が遠ざかっている間に、こんなオブジェがあったとは。知らんかった~。
すっかり恒例になった「金魚フェス」。今年で5回目。この知らせが届くと、ああもう年末なんやな~としみじみ。1週間前には金魚すくいなども行われましたが、トリは金魚品評会。金魚フェスの中でも最も人気のあるイベントならではです。
午前9時オープニング。同時に、審査員の紹介も行われました。左から、張奇さん(中国)、清水大輔さん(浜松)、吉野羽津喜さん(埼玉)、加藤寿規さん(弥冨)、平賀範之さん(埼玉)、太田善康さん(大和郡山)、オムさん(韓国)。いずれも生産者やバイヤーさんなどで構成されています。
オープニングもそこそこに、早速審査開始。6人の審査員がグループごとにチェックしています。
審査基準は、全体のバランスがよく調和がとれているか、骨格の曲がりや歪みがないか、各ヒレのかたちや広がりはどうか、ヒレやウロコに欠損がないか、泳ぎかたが健全か、発色がよくツヤがあるか、品種の特徴を顕著に表現しているかなどなど。
それぞれの審査基準に則って、5~8段階で評価して各部門ごとに優勝・準優勝・準々優勝・四席・五席までが決まっていきます。そののち、各部門の優勝のみが決勝に進出し、最終的に総合優勝が決まる仕組みです。
審査員がコレだ!と思った金魚にはオレンジ色のボールが投入されていきます。これだと、一般来場者の目にとまりやすくていいと思います。
◆韓国金魚事情
審査員の一人、韓国から来日したオムさん。20歳のころ日本に留学していたので日本語はペラペラ。おお~、それならせっかくなので話を聞いてみることにしましょう。
――来日は何度も?
「はい、品評会だけでなくセリ市も含めてよく来ていますよ」
――観光の目的も?
「全然。金魚の買いつけ以外に興味はありません(笑)」
――来日のきっかけは?
「10年近く前に、やまと錦魚園さんと知り合いになったことがきっかけでした。大和郡山の人はとても親切なので一緒にいても安心です」
――日本の金魚を最初に韓国に輸入したのはオムさん?
「そうです。以降、輸入のパイプ役として韓国のショップに金魚を卸しています」
――日本の金魚は?
「とても丈夫です。日本より寒い韓国ですが、外飼いもできます。なので、動画配信サイトなどを通じて、韓国の人たちが持っている金魚のイメージを覆したいと思っています」
――まさに金魚大使(笑)
「日本の金魚の文化に感動して以来、日本の金魚について正しい情報を発信しないといけない。ネット社会の韓国ですが、高品質の日本の金魚をしっかり伝えていきたいと思ってます」
意外なことに、趣味としての金魚に興味はないというオムさん。「別に好きなものではないから、客観的に見ることができるんですよ」と言ったひと言が印象的でした。
◆会場で出会った人たち
会場で思わぬ人と遭遇。こよなく茶金を愛し、ブリードしている八尾市の前畑さん。おお、久しぶりもう何年ぶりでしょうか。もう顔忘れるとこやった(笑)。!3匹出品したうち、大の部/茶金・丹頂・青文魚の部で優勝しました。知る人ぞ知る金魚マイスターでもあります。
こちらは小の部/茶金・丹頂・青文魚の部で四席を獲った茶金。普通の茶金より体が長いタイプの茶金が作れるよう努力しているのだとか。金魚の主要イベントにはほぼ必ず顔を出す前畑さん、金魚だけでなく、レオパのブリードやダックス、オカメインコなども絶賛飼育中。
審査基準って何回聞いても覚えられへんなあとボソボソ話していたら、気軽に声をかけてきてくれたのが名古屋市の粉川さん。ブリーダー歴10年で日本一大会にも出品されたことがあるとのこと。今回は、10匹出品したうちお気に入りの2匹をご紹介。そのうちの1匹は、大の部/土佐金の部で四席を受賞しました。
こちらは大の部/土佐金の部で五席を受賞。このほか、大の部蝶尾の部で準々優勝を、また小の部/土佐金の部では準優勝と五席を、さらに桜錦・江戸錦の部で準々優勝を受賞しました。聞くところによると、自宅以外にも奥様の仕事場である美容室には、以前アロワナを飼育していた時の2m水槽があるのだそう。2m!これは見に行かなければ!粉川さん、約束しましたよ~。
今年8月に20歳になったばかりの吉田さん(神戸市)は、金魚すくいと金魚飼育の二刀流。金魚すくい大会では最高3位にまでなったというメジャー級。「人生の半分は金魚をすくってます!」ってオモロイやん。そんな吉田さんは計5匹を出品。このうち、小の部/琉金・キャリコの部では優勝(写真)と準優勝を受賞しました。
さらには、小の部/水泡眼・頂点眼の部で準優勝(敢闘賞)を受賞。自分の部屋でトロフネで金魚を飼っているという吉田さん、「よいものを見分けて買うことはできますが、良いものをつくるのは難しいと知りました!」。いやはや、世代交代は確実に始まっている気がします。金魚の将来はまかせた!
ドラゴンスケール大好きな丸林さん(松阪市)は今回初出品。4年前からブリードを始めました。品評会やセリ市などで知り合いが増え、金魚の輪もますます増殖中。今回出品した2匹のうち、大の部/オランダ型その他の部で準優勝を受賞しました。
さらに大の部/和金型その他の部Bの部でも、同じくドラゴンスケールで準優勝(敢闘賞)を受賞。一度見たら忘れられないドラゴンスケール、現在は自宅のビニールハウスで飼育中なのだそう。松阪といえば松阪牛。春になったらぜひ取材に伺いますね。「意外と思われるかも知れませんが、地元では牛より鶏が主流なんですよ~」。撃沈。
馬渡さん(生駒市)は初出品。しかも地元の愛好家グループ・大和郡山とさきん秀鱗会メンバーの一人。今回は2匹を出品し、小の部/土佐金の部で見事優勝。ほかにもう1匹も準々優勝するなど、打率10割。「めっちゃうれしいです!」と喜びを隠せませんでした。金魚飼育に限らず、一人ではなかなかうまくいかないことでも身近に仲間がいれば鬼に金棒。ぜひ金魚の地元で、楽しい輪を広げて行ってくださいね。
◆世代交代は確実に
そして第5回の金魚品評会で総合優勝を飾ったのは、奈良市の吉見さんでした。おめでとうございます。もともと長者が好きという吉見さん、今回も銀鱗朱文金を中心に計14匹を出品(本品評会MAX)。結果、大の部/和金その他の部・Aの部で総合優勝を勝ち取ったのも銀鱗朱文金でした。去年、総合で惜しくも二席に甘んじた吉見さんでしたが、今年見事雪辱を晴らしました。
こちらは小の部/和金型その他の部Aで優勝した銀鱗朱文金。吉見さんいわく、「太くなっていったり柄が出てきたりして、墨と紅の配色具合が特に好きなんです」。自宅では約400匹を所有。本品評会ではこの2匹以外にも10匹が受賞するという快挙を成し遂げました。金魚すくいから金魚の面白さにハマった吉見さん、「それより、以前セリ市で取材受けましたよ~」。えー、マジで?最近物忘れが激しくなったのは年のせいでしょうか。
表彰式では、2人のお子さんに第41代女王卑弥呼も交えてファイブショット。「吉見さ~ん、もっと笑ってよ~」のリクエストに答えてくれてありがとさんでした。
このほかにもユニークな人との遭遇が続々。今回は出品されなかったものの、大阪府吹田市に拠点を置く錦魚振興会の副会長・川向さん(大阪市)は、らんちゅう歴16年というツワモノ。「1週間に1回の水換えでスパルタに育てています(笑)」なのだそう。
このほか、可愛い金魚たちと「遠足」がてらにやってきた山田さん(神戸市)も錦魚振興会のメンバー。聞いたところによると、北海道の有名な作家さんが羊毛フェルトでつくったのだそう。同じメンバーで動画配信サイトで情報発信する井上さん(寝屋川市)たちとともに、金魚一色の1日を楽しんでおられました。
「写真撮るよ~」の声に集まってくれた錦魚振興会のみなさん。現在30人のメンバーで構成され、年に4回開催される独自の品評会を中心に活動しています。来年4月に開催される品評会にはぜひお邪魔してみたいと思います。おや、総合優勝を果たした吉見さんもメンバーでしたか。表彰式とはキャラが違ってたので気づかんかった(前列右端)。
そして今回も大阪ECO動物海洋専門学校のみなさんがお手伝い。準備を含めて2日間、お疲れさまでした!きっと単なるお手伝いだけでなく、レベルの高い金魚ばかりを目の当たりにして、大きな刺激となったことでしょう。
過去4回の金魚品評会を見てきましたが、確実に世代交代は進んでいるような気がしました。というより、金魚の文化継承のためにはそうでないといけないのでしょう。
特に、一個人だけでなく、愛好家グループによる活躍も印象的でした。一人ではできないこともグループだったら可能になる。金魚だけでなく、メダカやグッピーでもグループによる活動がさかんなことでもよくわかります。結果、アクアの将来にもつながります。
朝からどんよりとした曇り空でしたが、ついに雨が。この日を境に、全国でもぐんと気温が下がり、いよいよ冬本番となりました。
秋の終わりを告げる定番の風物詩・金魚品評会。「キワメテ!水族館」も今回が2023年のラスト配信。今年もご愛読いただきありがとうござました。また来年どこかでお会いしましょう!