「小さな命との、大きな絆」をスローガンに、京都市内の本店ほか路面店やホームセンター内など計10店舗のペットショップを展開する京都魚苑グループ。
そう、「御苑」ではなく「魚苑」なんです。
聞くところによると、現オーナーが大のお魚好きなのだとか。
会社名に関しても、それなりのこだわりがあるのでしょうね。
ペットショップではありますが、どちらかというとアクアがメイン。
とりわけ京都市南区のぺっとふりーくは、3号店としてアクアファンを増やしてきたグループ唯一の路面店。
夏真っ盛りのとある土曜日、早速取材にうかがいました。
◆JR京都線・桂川からも至近距離
「最寄り駅はJR京都線の桂川になります」。ん?そんな駅あったっけ(笑)?取材の2日前、広報担当の西川さんに電話を入れて事前に所在地確認しようと思いきや、ふとそんな疑問が。JR京都線を利用するのは決して少なくないんですが、いつも新快速を利用しているので、途中の駅にまったく関心がないという(笑)。しかし立派な駅でした。大型ショッピングモールとつながり、つい最近できた駅かと思っていたら、駅ができたのはすでに2008年のこと。こりゃ失敬。
改札口を出て下におり、国道沿いを東へまーっすぐ。駅から10分足らずでお店に到着。なるほど、電車を利用して来店されるお客さんも多いという理由がこれでわかりました。
◆「入りやすい店」を目指して
現着。明るく大きなガラスドアがとても印象的です。路面店のアクアショップというと、入口が暗くて初心者が入りにくいイメージがありますが、これなら初心者でも親子連れでもカップルでも安心。とかくマニアックに思われがちなアクアの世界、何でも最初が肝心ですよね~。
入口脇には、お店独自のPOPが。「お子様連れでもごゆっくり!~店内を見るだけでも大歓迎です!~」「お客様についてまわったりいたしません!~初心者さんもお気軽にどうぞ!」「質問・相談はスタッフまで!~どんなことでもお声掛けください!」。なーるほど、これなら初めて来店する人も気軽に入れそうです。スタッフの強いおもてなしの精神が感じられます。
午前11時、お店のオープンと同時に田代和之店長とご対面。グループの3号店として誕生した当時は、バブル絶頂期でした。観賞魚飼育を趣味とする人も多く、水槽、生体、用品などがコンスタントに売れた時代でした。
そういえばバブル崩壊後は価格競争が激化し、業界では経営的に苦しくなった路面店も多かったはずですが。「うちは大型ショッピングモールやホームセンターなどにも早くから出店していたので、さほど大きな影響は受けませんでした」と田代店長。要は、ターゲットをどこに絞るかで変わってくるんでしょうね。
ちなみに、京都魚苑グループで大型ショッピングモールやホームセンターに出店しているのは、8店舗。京都市内や大阪市内など、いずれも「ペットプラザ」「アクアスペース」などの名称で親しまれ、こちらはどちらかというと初心者や家族連れが多いようです。
◆金魚・メダカに群がる「アクア男子」!?
お店の1階はすべてアクア関連。用品ゾーンと生体ゾーンは、ほぼ半分ずつ。結構広いです。この広さはやはり路面店ならではでしょうね。商品をめいっぱい詰め込んでいる感もなく、通路の幅にも余裕があり、これならゆったり買い物ができそうです。
そして、1階・2階ともわんちゃん猫ちゃんの同伴がOK。ペットと一緒にアクアのショッピングが楽しめるのもいいですね。
一方、2階は小動物や犬猫、鳥類、爬虫類たちのいるワンダーランド。2階はあとでお邪魔するとして、まずは1階をご紹介しましょう。
入口には、夏の風物詩でもある「看板魚」が。猛暑にもかかわらず、元気いっぱいに愛嬌を振りまいて出迎えてくれました。なぜかカメラを構えるとたくさん寄ってきたりなんかします。ちなみに、水質管理の主役はKOTOBUKIのP-CUTなのだそう。屋外での飼育のため水質管理にはかなり気を使いますが、「色々試してみましたが、これが一番効果がありました」と、田代店長も太鼓判を押してくれましたよ~。
オランダや東錦など、質のいい金魚たちが揃っています。お値段のほうは、さすがという感じです。
お店に入って右側の奥が金魚コーナー。そしてその手前には、最近配置換えをしたというメダカコーナーが。田代店長いわく、年齢層の高い「アクア男子」、いわゆるオジサンたちにとっては、このあたりがパラダイスだそうな。いわゆる「男の趣味」(笑)。金魚では、琉金、出目金、コメット、東錦などが人気です。
そういえば京都魚苑グループのオーナーさんは、大の金魚とメダカがお好き。だからというわけではないと思いますが、金魚のコーナーとメダカのコーナーが至近距離に。オーナーさんの意図を反映したのかどうかは不明です(笑)
◆ブラックシリコンのレグラスが安定人気
アクアを始めるにあたって、最初はどんなものを揃えたらいいのだろうというのが、初心者にとっては率直な疑問ですよね。とりあえず水槽からということで、「扱いやすいコンパクトなフィルターなどが付属するセットがオススメです。KOTOBUKIのレグラスシリーズもそのひとつで、特にキリリと引き締まったブラックシリコンがかっこいいと買っていく人も多いですよ」と田代店長。レグラス、安定した人気を保っているようです。かっこいいという点でいえば、照明器具では最もスリムなフラットLEDもコンスタントに売れているそうです。
夏真っ盛り。水温を上げるのはヒーターなどを使えば比較的簡単ですが、水温を下げるのは結構大変ですよね。そういった問い合わせも結構あるのだとか。それを見越して、店内には各種夏対策グッズも用意されています。
◆幅広いニーズに応えるペットの百貨店
水槽コーナーのところでもご紹介したように、ぺっとふりーくさんにこられるお客さんは、初心者が結構おられます。一方、自家繁殖を楽しんでいるベテランユーザーもいます。年齢層も、金魚好きな年配のかたからベタやレッドビー、テトラ系が好きな家族連れや若年層まで、これまた幅広いのが特徴です。専門店でもなくホームセンターでもない、百貨店的な要素を含んでいる気がします。「ぺっとふりーくへ行けば何でも揃っている」的なイメージがきっと定着しているのでしょう、アクアユーザーにとっては安心です。
あ、突然ですがスタッフ紹介をちょこっと。通常は2~4人体制で臨みます(2階は3人)。どのスタッフも若くて、アクアに関しては豊富な経験を持っています。それぞれに得意分野があり、どんなお客さんのオーダーにも的確に応えられるのが強みです。だからこそお客さんもお店に信頼を置き、リピーターさんも多いのでしょう。
接客以外に、日々の水槽のメンテナンスやブログの更新もスタッフの仕事。新商品の入荷情報など、とりあえず若いアクアファンにとってSNSはかなり有効な情報源ですから。
“男社会”の中にあって紅一点。山下詩織さんは、今春海洋動物系の専門学校を卒業してつい最近この店にきたニューフェイスです。どんな魚が好き?と聞いたらメダカ全般だとか。ついでにベタの話になったら、「どこよりもうちにいる子が一番かわいいと思ってます!」と、自信たっぷりに話してくれました。
もしかして、最近は犬や猫だけでなく、魚に対してまで「子」と呼ぶあたりは、魚に対する愛情のかたちも変わってきているのでしょうか。「それはあると思います。特に若いお客さんたちと接していると、犬や猫のように生体をペットとしてみて可愛がる傾向が強いような気がします」と田代店長。やっぱり、時代は変わってきてるんですね。
店内の至るところに手づくりのPOPがありますが、このPOPなんかはいかにも若い人たちの言い回しですよね~。
◆自家繁殖で生まれた貴重なエンゼルフィッシュ
飼育入門魚ともいえるスマトラは、見た目にも可愛くて丈夫なのだとか。動きの活発なコイ科の魚との混泳も可能で、初心者にも人気があります。
水草コーナーでは、国産に人気が集中。水草も無農薬の時代なんですね~。
ん?このコーナー、なんと自家繁殖させたエンゼルフィッシュがたっくさん。【「えんじぇるふぁーむ」ブリード】と表示され、ひときわ目立っています。驚いたことに、数年前からオーナの息子さんが京都の山間部でブリーディングに成功してきた成果なのだとか。
京都魚苑グループに、オリジナルのファームがあるとは知りませんでした。エンゼルフィッシュだけでなく、国産グッピーやメダカ、貝などもブリーディング中だそうです。さすが親子の血は争えませんね~(笑)。
えんじぇるふぁーむで生まれた品種のブルーレオパードダイヤモンドベールテール。ちょっと長い名称ですが(笑)。プラチナエンゼルよりもさらに美しくとの思いが実って、キラキラと美しい姿が特徴です。
ほかにも1品種、似たような名称ですがブルーレオパードベールテールも。淡いブルーの色合いとと長く伸びた尾びれが美しい~。エンゼルフィッシュファンはぜひ足を運んでみてくださいね。
2018年4月から古代魚に対する規制が厳しくなるのは周知の通りです。特定外来生物として仕入れたり買ったりできなくなるのだそうで、北米産の淡水魚として人気の高いアリゲーターガーも、ショップではもうみれなくなってしまうのは寂しい限りです。
初心者でも飼いやすいレッドオスカー。体が丈夫なうえに飼育者をちゃんと覚えていて、エサをやる時に寄ってくるため、ペット感覚で飼えるほど愛情がわいてくるのだそうです。若い人に人気があり、きっと名前なんかもつけたりして可愛がるんでしょうね~。
おろ?可愛い海水魚に遭遇。チャチャッとアメンボみたいに素早く移動したかと思うと、急にピタリと底砂など止まる仕草が可愛いミナミゴンベ。ゴンベなんてちょっとイケてない名前ですが(笑)。この日、一番気になったお魚でした。
◆2階は小動物たちのワンダーランド
2階にも足を向けてみましょう。さぞかしわんちゃんや猫ちゃんが多いのかと思いきや、意外なことに小鳥のラインナップが豊富でした。ちょっと写真撮りたいんですけど~という無理なお願いに応えてくれたのは、2階担当の上村純さん。特に爬虫類に詳しく、仕入れはすべて上村さんの仕事で、お店にはなくてはならない存在です。
コザクラインコのノーマルカラーとガールデンカラー2匹を激写。パートナーの愛情が深いところから、別名・ラブバードとも呼ばれています。
小鳥のみならず、今人気の小動物もたくさん。ケージがあるので男前に撮れなくてゴメンナサイ(笑)
やっぱり気になるのは爬虫類コーナー。ちょっとだけお邪魔させてくださいね。トカゲさん、こんにちは。どうぞお手柔らかに(笑)
爬虫類ではありませんが、ひときわ目を引いたのがアカメアマガエル。ボディのグリーン×模様のブルー×目のオレンジの配色がとってもきれいで、何ともフレンドリーなキャラをしています。世界的にも人気のある品種で、色々な分野でキャラクターやぬいぐるみにもなっています。そういえば、ずっと前に海遊館のお土産コーナーでみたことあるような、ないような(笑)
上村さん、お忙しいところありがとうございました。約束通り、インスタグラムにも載せましたから~(笑)
わんちゃん猫ちゃん用のトリミングコーナーのほか、ペットホテルも完備されています。ケアは万全ですよ。
◆120㎝水槽で独自の世界観を表現
1階のとある水槽では、テラリウムがすくすく成育中&デモンストレーション。今はまだ養生中ですが、あと1カ月もすれば、きれいなウィローモスという名の苔が自生して、より美しさを増すことでしょう。
ん?この横長の水槽はもしかして?「はい、KOTOBUKIさんの120㎝水槽です。残念ながら今では生産されていませんが、準既製品としてこのような大型水槽がつくれるのはすごいですよね」と田代店長。ああ、やっぱり(笑)。実際に水を張った状態を間近でみると、思った以上に迫力のあるアクアビューだということがわかります。
実は田代店長、子どものころから川や山で魚を獲ることが好きだったそうです。決して、スマホを使ってモンスターを追いかけるような少年ではありませんでした(笑)。その思いが講じてこの仕事に就くことになったのですが、その世界観を表現したのがまさにこの水槽というわけです。引っ込み思案のカマツカが泳いだり砂に隠れたり。まぎれもなくここは、“川”なのです。思い出やロマンを惜しげもなく水槽に投影できるのも、アクアの魅力ですよね。
らんちゅうの稚魚、初めてみました。しかもこんなにたくさん。おうちで宇野系らんちゅうの自家繁殖をさせているお客さんから仕入れて、お店で販売しているのだそうです。単なる商品の売り買いだけでなく、こうしたお客さんとのコミュニケーションも大切にしています。
珍しい柄の鯉をみつけて、早速お買い上げのご年配のお客さんがいました。「いつもエサを買いにくるついでに鯉のコーナーものぞくんやけど、今日みたいにいい鯉に遭遇したりするんですわ。鯉が泳ぐのをみてるのはほんまに癒しやからね。この店へ来るのが楽しみですねん」と。
また長岡京市から電車でお越しの女性は、「色々飼ってはいるんですけど、一度メダカを飼ってみたくて」とご来店。メダカの売り場を広げたばかりだったので、ちょうどよかった(笑)。きっとメダカ飼育について、スタッフがちゃんと答えてくれることでしょう。
◆人の気持ちも魚の気持ちもわかる店
取材中もひっきりなしにお客さんがこられます。中には、「あ~、やっぱり中は涼しいな~」と入ってくる意味不明なお客さんもいましたが(笑)。確かに年齢層はまちまちだし、アクアに対する関心も人それぞれ違っているのもよくわかりました。
お店がオールマイティーに対応するのは一見簡単なようにみえますが、どんなオーダーが飛んでくるかわからないという点でいえば、それぞれのスタッフが得意分野を持っていることは大きな武器だと思います。同時に、どんなオーダーにも応えますよという、スタッフの自信の表れにほかなりません。
「私と同じ気持ちを共有できるお客さんがいることがうれしいんです」と田代店長。それは、何を隠そう“命を大切にする”という思いの表れです。生体は単なるコレクションではないという信念でもあります。より多くの人に出会いたい、より多くの魚を知りたいとこの道に飛び込んできた田代店長、経験を積めば積むほどその思いは確信に近づいていったのでしょう。
魚の気持ちがわかる、ぺっとふりーく。もちろん人の気持ちもわかります。暑い一日でしたが、田代店長のキャラそのままの爽やかで心やさしいひと言が印象的でした。
★京都魚苑グループ ぺっとふりーく
602-8212 京都市南区久世上久世町791
℡075(931)3020
営業時間は午前11時~午後8時
水曜日定休