今年創業50周年を迎えるアクアショップ・アワジヤ(大阪市西区)。アクア系の専門学校卒業後、同店一筋で今も変らぬライフスタイルを貫いている笹井章寛さん。気がつけばもう10年選手。おお~、ってことは今年創刊10周年のキワメテと同じやん!めでたい者同士が4年ぶりにアクア談義。新しい発見が多すぎました。
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◆ただいま実験進行中
大阪府高槻市内のマンション1階。リビングのさらに奥の部屋が水槽部屋。コの字型配置で、真ん中には別途飼育用ケージなんかも少し。飼育しているものは魚だけでないことから、「ペット可のマンションを探すのにかなり歩きました」。これ自体、笹井君にとっては初体験。
アワジヤでは多くのファンがいる笹井君。接客の中で、笹井君の飼育環境を見てみたい人はきっと多かったはず。やっぱり見てみたい?
それと、笹井君自身の生活に大きな変化があったということも、今回の取材につながりました。さてそれは一体?
水槽は60㎝中心。曰く、「このサイズで飼育するのが一番ベストなんです。水替えの手間やコケなどの発生頻度、魚とのバランスなどを考えると、初心者でも60㎝がオススメです」。いざ自宅に置いてみると確かに大きい感がありますが、結局そのほうが魚にとってはベストなんです。
ライギョのなかまが中心。中でもスネークヘッドは昔から笹井君のお気に入り。前からそうだったよね。「はい、カッコいいですから(笑)」。今日はスネヘについて色々語ってもらいましょう。
どちらかというと熱帯魚よりは存在感のあるスネークヘッド。「エサをやりすぎると大きくなりすぎて体調も壊しやすくなるので、そこだけ注意すれば初心者の人にも飼えますよ」。飼っていると可愛くなってくるので、ついついエサをやり過ぎてしまいがちですが、ここはグッとこらえましょう。
◆新婚家庭を直撃
笹井君にとって今年大きな変化のあった出来事。それは今年5月に結婚したからです。おめでとう~!すでにご存じの人も多いかと思いますが。取材とはいえ新婚ホヤホヤのおうちに押しかけてごめん!
奥様の麻衣子さんも、元はといえばアクア好き。笹井君の水槽の中には麻衣子さんお気に入りの魚も混じっていて、小動物や爬虫類なんかも少し。「コロナ禍で3万円を握りしめて買いに行ったのがベタだったんです!」。そんな熱い思いをしっかりアルバムにして今も大切に保存。
自作のアルバムはほかにもたくさん。魚や小動物がとても好きで大切にしていたことが、よくわかります。
特にお気に入りなのが、保護猫のぷんちゃん。男の子。魚じゃないけど。生まれてすぐ保護されていたところを譲渡。保護施設でしつけが行き届いていたおかげで、そこらじゅうをカリカリしたり絶対しないのだとか。
特筆すべとは、「アクアにやさしいぷんちゃん」である点。2人が出かけて留守中の時も、悪さは一切しません。「水槽をじっと見る目は獲物を狙っている目ではないんですよ(笑)。しかも、全体の水槽を見渡している感じなので、今や趣味の守り番として頼もしく思っています」。これは観賞魚なんだからね!という教えを頑なに守っています。
◆コリドラスの魅力
さてさて、水槽の話に戻りましょう。一番手前にあるのは水草レイアウト水槽。誰もが知る世界的に有名なレイアウトコンテストには毎年出品。現在は前年出品した状態のまま放置中。いやいや、放置中には見えないんですが。
これがコンステトに出品した際の写真。メインの流木の配置がダイナミックですね水草の量ともバランスがとれている感じです。来年もまた上位入賞を!
ちなみにぷんちゃんもこの水槽が一番のお気に入り。審査員にでもなった気でいたりなんかして。
続いて海水魚水槽。「店で海水魚をたくさん扱っているので、自宅でも海水魚を管理維持して勉強しています」。以前、笹井君からベルリンシステムという言葉を聞いたことがあるんですが、それって何やったっけ?
一般的には飼育が難しいとよくいわれる海水魚。カクレミノのペアとサンゴに寄り添いながら、笹井君独自の新飼育システム開発待ち。いずれ「海水魚も飼いやすい!」のノウハウが確立されるのも、遠い日のことではなさそうです。
大きめのコリドラスが数種類いる水槽。フードタイマーを使って1日6回給餌。
「この種類のコリドラスは背ビレがピンと立つ姿が美しいんです。なので、それに向かって理想の個体を育てたいと思っています」。ほぼ毎日水替え中。
◆変らぬスネークヘッド愛
笹井君のスネークヘッド好きは麻衣子さんにもトランスミッション。胸ビレのシマシマ模様が印象的なチャンナプルクラは、麻衣子さんのもの。
普通にいけば25㎝くらいにまで成長するのだそう。
四国旅行の途中で買ったチャンナバンカネンシス。水草のアンブリアがしっかり茂っています。「水草を多めに入れることで、照明の明るさを軽減させています。特にアンブリアは窒素を吸ってくれるのでコケも出にくいんです」と一石二鳥。
スネークヘッドの中には、水草を引っこ抜いてしまったりする種類もいるので、生体の大きさを把握しつつ、魚が関心を寄せなさそうな水草を色々使って実験中。「この個体はまだ小さな部類に入るので、水草を入れても大丈夫なんです」。
スネークヘッドが続きます。繁殖を目的にペアで飼育中のニューレインボースネークヘッド。生息地・ヒマラヤ山脈の影響を受ける地域の自然に近い環境に合わせて、水位を下げて実践中。
「現地では、乾季は土の中に潜っているんですが、季節が変わってヒマラヤの雪解け水が流れ込んできたことに驚き、そのことに危機を感じて繁殖行動をとり始めるといわれているんです」。春になると毎年繰り返される大自然の営み。標高8,000mのヒマラヤ山脈が目に浮かんできそう。
レッドギャラクシーコウタイ。60㎝水槽でありながら照明はあえて半分の光量である30㎝用を使用。スネークヘッドのなかまには明るさにデリケートな個体もいるので、照明には注意が必要とのこと。このため、「水槽内に明るい部分とそうでない部分をつくって、1年間様子を見ながら飼育していますが、赤いスポットがきれいに残っていて、よかったです」。
エサを与えすぎると不必要に太り、夏の暑さで弱ってしまうこともしばしば。スネークヘッドにとっての適量は?「大人の個体で週1回、子どもの個体だと週2回くらいを目安にしています」。意外と少なめ。「人工エサを与えすぎると、太ってしまうだけでなく強い照明が当たることによって黒っぽく日焼けする可能性もあるんです」。エサの影響だけでなくこの水槽だけ照明を半分に落としているのは、そういう理由もあったというわけです。
上部式フィルター部分の空きスペースにはヤマサキカズラを成育。水の通りを利用して観葉植物も楽しめています。「また上部式フィルターは重石の役目も果たしていて、個体の飛び出し防止にも役立っています」。スネークヘッドって案外力が強いんですね。
別の水槽にはガジュマルを。
さらに別の水槽にはラゲナンドラを。
笹井君曰く、「熱帯魚に限らず、魚の飼育放棄などは絶対やめてほしいです。かったら最後まで責任をもって飼ってください」。当たり前のことが当たり前にできなくなってきた憂慮すべき時代。シンプルなひと言ではありますが、ショップの一スタッフとして、アクアユーザーの一人として、その思いは十分に伝わってきました。
◆ペット系生体?
「この子だけはペットなんですよ(笑)」と、笹井君がうれしそうに話すのはキングカムファ。笹井君が個体をペットとして位置づけるのはめっちゃ珍しいんですけど。タイのコンテストで優勝した個体の子らしく、「色上げ用のエサ(レッドバル)を使っています」。
あそうそう。後で聞いた話ですが、麻衣子さんはすべての個体に名前を付けているらしいですよ。ただし笹井君にはナイショで。
ほぼ水草レイアウト水槽状態にいるベタ・アントゥタ。大きくて青いのが印象的です(オス)。3日に1回程度のエサやりのペースで、約2カ月間は足し水のみで持続。これも実験水槽の成功例。
コケとりにはサイアミーズフライングフォックスを同居させています。
ここにも麻衣子さん所有の個体が。見るからに可愛いブロンズパファー。淡水フグなんですよね。
レオパードクテノポマ。「ヒョウ柄が気に入って買いました!」。さすが大阪人!
ほかにも、初心者でも飼いやすいクレステッドゲッコーがいたり。
アメリカアマガエルもいたり。このほか、スナネズミ、デグ、ーアフリカヤマネコもいたりして、ちょっとしたミニ動物園状態の新婚・笹井家。
結婚する前と後とでは生きものライフにも変化が。新しい価値観が加わるのもまた夫婦のよきところなり。
◆「カッコいい」理由
動画配信サイトを約1年前からスタート。サムネはやっぱり大好きなスネヘ。今やSNSの筆頭ともいうべき動画配信。初心者にもわかりやすいMCもイケてます。毎日忙しいのに、いつこんなことやる時間があるのか不思議で仕方ありません。すべては「アクアの裾野を広げたいですから」。
ただし、無理しすぎて自律神経失調症にだけは気をつけて。
自宅の水槽と接する時間は1日1時間程度という笹井君。「結局生活スタイルに合わせた水槽管理がベストなんですよ。それに、実験の成果というか水草の種類によってはほとんど水替えをしなくてもいいものもありますから」。
8年前、初めて店で会ったころの笹井君。ういういしさが漂いまくり。今ではアクアリウムバー・BAR CHLOのオーナーとして活躍している通称クロちゃん・黒田祥知さんも懐かしすぎます。
結婚してアクアライフに何か変化はあった?麻衣子さん曰く、「アクアリウムのことを話している時の夫、めっちゃカッコいいです!」。知らんがな。