「全国金魚すくい選手権大会」の開催など、夏になるとガゼン注目される金魚のまち・大和郡山市。
そんな夏の熱いシーンの一方で、すっかり目立たなくなった「お気毒スポット」を、忘れてはいませんか(笑)?
来庁者にはおなじみすぎる、市庁舎玄関ロビーの金魚水槽。
実は、水槽のメンテや玄関周辺の管理をコツコツとこなしている若手職員がいるんです。そう、ユニークな金魚水槽が市内のあちこちに誕生する陰で、キワメテ地道に(笑)
最近では、他府県からの観光客も増えてきた庁舎玄関ロビー。
だのに、若手職員が日の目を見ないのはあまりにも哀しすぎます(笑)
ということで、今回はそんな若手職員の活動をクローズアップしてみました。
◆むかし金魚池 いま金魚水槽
市庁舎が建てられたのは、昭和36年。「当時は至るところに金魚池がありました。大雨の時は池からあふれ出た金魚が川を泳ぎ、それを獲りにいくのが子どものころの楽しみでした(笑)」市庁舎の近くで電機店を営む中野さんは、当時を懐かしそうに振り返ります。今は想像もつかない、金魚池のある原風景。そんな当時こそ、金魚のまち・大和郡山そのものだったのでしょうね。
中野電機店さんには、電器製品にまじって電子レンジ型の水槽やホットプレート型水槽が。あちゃー、これもユニークな水槽ですね(笑)。息子さんのアイデアによるものだそうですが、金魚池があったころを懐かしむ中野さん自身の強い思い入れもあったに違いありません。
さて庁舎内を見渡してみると、ありますあります。2階には金魚関連の写真や装飾、そして奥には水槽が。どことなく、昭和レトロなにおいがプンプンしてたまりません(笑)
玄関を入って金魚水槽より先に目に飛び込んできたのは、リニアモーターカーの模型でした(笑)。数十年先、大和郡山にリニアの駅ができるかもしれない的なデモンスト。この模型、実際に走らせることもできます。でもちょっと速すぎて、時々ウンともスンともいわなくなるのが玉にキズですが(笑)。
そして金魚水槽がこれ。85㎝水槽が2本、115㎝水槽が1本の計3本。住民票や印鑑証明をとりにきたり固定資産税を払いにきたことのある人にとっては、おなじみの光景なんでしょうね。
普段からしっかりメンテナンスされているのがよくわかるくらい、とってもきれいです。失礼ながら、こんなにきれいだったとは意外でした。
今春「金魚のおうちコンテスト」で入賞した「せんすいそう」も、案内カウンターにありました。
さらに、金魚模様のソファと水槽がセットになった応接コーナーも。
え、金魚すくい応接セット?マジかいな(笑)
お母さんに連れられて庁舎にやってきた姉妹も、水槽をじーっと。でもお母さんにとってはもはや当たり前の光景(笑)。「かれこれ40年以上住んでますからね~、今さらそう珍しいことでも(笑)。でもやっぱり私たち市民のシンボルであることは確かです」。
水槽には、小赤や琉金、コメットなどなど。季節によって多少の入れ替わりはあります。どの金魚もなぜかフレンドリーで、人をみるとお尻をフリフリやってきます。「金魚ってちゃんと人を見分けるんですよ」と、真顔で話すとある職員、ほんまかいな(笑)
◆メンバーはピッチピチの若手職員
これら玄関ロビーの金魚水槽のみならず、ロビー全体の管理を司っているのが、「ザ・チームきんとっと」です。平成25年度に結成され、現在メンバーは22人という陣容。全員が市の若手職員で、部署も年齢もバラバラ。入庁2年未満の若手職員を、チームの先輩たちが個別にアタックしてメンバーに引っ張り込んで(笑)、、、いやいや、メンバーの一員として活動してもらっています。ほぼ毎週、就業時間終了後が主な活動タイムです。
早速、4代目リーダーの伊藤哲史さん(保険年金課)に話をうかがってみました。
―――チーム発足の経緯を教えてください。
「その前に、数年前にはここ(玄関ロビー)には巨大水槽があったんですよ」
―――え、そうだったんですか?
「庁舎ができた当時はこれといった金魚関連の施設が市内になくて、ここが金魚観光の集積地だったみたいです」
―――なるほど、そんな水槽があっただなんて想像もつきません。
「ところが、水槽もだんだん老朽化して金魚の数も減ってきて、これではいけない、と」
―――前面改修することになったんですね。
「これをきっかけに、せっかくなら水槽管理は自分たち職員の手でなんとかしていこう、ということになったんです」
―――それだと個々の意識も高まりますし、何より経費節減にもなりますよね。
「玄関ロビーの改修がひと通り終わって、今のかたちになったことで、チームが結成されたんです」
―――メンテでは、単に水を替えるだけの作業に終わらないでしょ?
「もちろんです。コケとりなどはもちろん金魚の健康状態もチェックしておかないといけませんし、お盆やお正月でもチェックしにきますよ」
――-さすがに女子のメンバーはいないでしょうね。
「いや、それが結構いるんですよ~(笑)。水槽を掃除してくれるだけでなく、水槽台の装飾なども自発的にやってくれてます。ぜひぜひ写真を撮ってください(笑)」
もちろん喜んで~(笑)。
本邦初公開!これが、かつて玄関ロビーに設置されていた巨大水槽。おそらく初めてみる人もいらっしゃるのでは?当時としては画期的で、まさに金魚のまち・大和郡山の象徴だったのでしょう。みようによっては、いけすにもみえますが(笑)
◆まるでブカツのような楽しさとやり甲斐
取材のこの日は、交替制による週に1度のメンテの日。特に今回は、季節の変わり目ということもあり、水槽台の装飾も手がけることになりました。
メンテは、庁舎のすべての業務が終わって午後5時半ごろから。来庁者の姿はありません。市民のみなさん、こんな光景をみるのはきっと初めてでしょう。今の若いもん、捨てたもんじゃありませんよ~(笑)
ちょっと待ってちょっと待って!そんなに早く水替えしたら写真を撮る時間がありませ~ん(笑)。と、こちらがあせってしまうくらい、手際がいいのには驚きました。「どうせ職員がやる作業だから、モタモタしてると思ってたんでしょ(笑)?」。はい、その通り(笑)
水替えだけでなく、水槽台周辺の装飾もちょっと模様替え。こういう時に、女子力を発揮するのでありました(笑)
メンバー最年少の志度谷すず子さん。19歳とは思えないほどしっかり者でびっくり。みなさん、大和郡山にもすずちゃんがいますよ~(笑)
「以前は装飾もやってましたが、水槽の掃除をするのも楽しくなってきました~」と笑顔を絶やさない小山 茜さん。
うーん、若手職員の女子力がこれほどまでイケてたとは知らなかった(笑)。失礼!
4月に入庁してきたばかりの清水康平さん。「家でも水槽があるほど、昔から熱帯魚が大好きでした。金魚に関する色々な仕事に携われるだろうと、市に勤めることを決めました」。意外なほどしっかりしたコメントが返ってきました(笑)。加えて、「熱帯魚と違って、金魚飼育の難しさを知りました」と。将来が楽しみです。
雰囲気はまるでブカツ。全然役所らしくない(笑)。しかもやらされている感はまったくありません。若いメンバーが中心だということもあるのでしょう、みなさん自主的にのびのびやってます。ああこれが若さというのものかーと、ちょっと嫉妬(笑)
水替えも終わり、装飾も完成した水槽それぞれ。すっかり真夏の装いとなりました。
総務課、企画政策課、保険年金課、都市計画課、介護福祉課、生涯学習課、秘書人事課など、所属はみんな違います。しかしながらチームの活動によって、それぞれの部署を超えて交流が図れ、日々の業務もスムーズになったそうです。職場の風通しもいいはずです。そして結果的に、市民サービス向上につながっているのでしょう。
水槽や照明などの機器は、4年前にチームが発足した当時のままで今も健在だそう。
―――そろそろ新しいのに買い換えたら(笑)?
「壊れてくれれば(笑)。でも今まで、故障らしい故障がないんです」
―――ああ、それはいいですね。
「おかげでメンテもとっても楽ですし、やっぱりいい機器というのは使いやすくて長持ちするんですよね。結果的に、それが金魚にとっても好環境をもたらしているのだと思いますよ」。
さすが伊藤リーダー、めっちゃ説得力あります(笑)。
チームで経験したスキルをアイデアやプランにして、他部署に提案することもあるのだとか。たとえば金魚関連イベントに関することや、周辺機器に関することなどなど。金魚のまち・大和郡山の縁の下の力持ち的存在ではありますが、こうしたかたちで若手から声が上がってくるのは、市にとっても大きな財産だといえるでしょう。
約1時間ちょいのメンテ、これにて終了~。普通ならこの時間、居酒屋やカラオケボックスでノリノリでもおかしくないのに(笑)。若いエネルギーを庁舎のために費やしてくれて、お疲れ様でした。
◆これぞ「チームワーク」の集大成
実はこの巨大ディスプレイによる情報の収集・編集もチームの仕事なのだとか。情報収集のためには常にアンテナを張りめぐらせておかないといけません。うーん、もしかしたら、これが一番大変な仕事かも(笑)。外野は勝手なことを言ってしまいますが、それもすべて若手職員自身のスキルアップにつながると思います。
最近、他府県からの観光客が金魚情報を求めて来庁することも増えたそうです。せっかく足を運んできてくれたのだから、金魚水槽も見て行ってくださいねー。
一方、飼育方法など自分の飼っている金魚自慢をしにくるオジサンもちょこちょこいるのだとか(笑)。でもまあそれもひとつのコミュニケーション。中身がどうあれ、市民との距離が近くなるのはいいことです。
最近完成した「金魚マップ」には、金魚に関する見どころスポットがぎっしり詰まっています。よくできていて、これオススメです。来庁の折りにはぜひお持ち帰りくださいね。
官民一体となって、さまざまな取り組みを行っている大和郡山市。確かに、昔たくさんあった金魚池は激減してしまいましたが、反面、こうした若い人たちのモチベーションが上がっていくのは大きな将来性が見込めるような気がします。ましてや、新庁舎誕生時には大きな役割を背負うことになるのは必至です。
若い人から若い人へ。順送りしながらメンバーが少しずつ変わっていくザ・チームきんとっと。だからこそ、その火が絶えることは100%あり得ません。ひとりではできないことも、チームだからできることがある。今や死語になりつつある「チームワーク」という言葉の原点を感じさせてくれたような活動にふれることができました。めざせ、金魚のスペシャリスト!