「絶景の宝庫」として知られる日本遺産・和歌山県和歌の浦。風光明媚な景色でありながら、干潮時には県下屈指の干潟が出現するアクアなロケーションでもありました。そして、絶滅危惧種・ハクセンシオマネキの生息地でもある和歌の浦。取材当日、詰めの甘さであえなく撃沈で終わりましたが、リベンジは果たせたのでしょうか。
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◆圧巻!干潟の驚異
あれから約1週間。悔しい思いを引きずりながら潮位表アプリを再度チェックしてみると、取材当日のちょうど1週間後が大潮にあたることが判明。小潮ではなく中潮でもなく、大潮!そうとわかったら、このチャンスを見過ごすわけにはいきません。かくして、再び和歌の浦にやってきたのでした。まるで何かに取りつかれたように。リベンジ取材の始まりです!
降り立ったのはこのバス停。玉津島神社は、和歌の神様が祀られていることで知られています。わくわくドキドキ。気合十分。いよいよ県下屈指の干潟と対面できることになりました。ちなみに下車したのはキワメテスタッフだけ。平日だから仕方ありませんが、地元の人たちにとっては干潟なんて別段珍しくないのかも知れませんね。
この日の干潮は12時18分。ランチタイムじゃありませんか。潮位差は何と186㎝!今度こそ広範囲に広がる干潟と、ハクセンシオマネキと出会わなければ男が廃ります。さてさて気になる海面の状況は?
おお~!思わず息をのむ光景。1週間前とはまったく違います。これが大潮の干潟なんですね。いやあ圧巻です。自然の摂理の結果とはいえ、頭で思い描いているのと実際ではテンションがまったく違います。無理して来てよかった!
どの方向を見渡しても、干潟、干潟、干潟。これほどまで広範囲に渡って広がる干潟は今まで見たことがありません。以前、ウミウシの観察会に同行させてもらった時も干潮でしたが、岩場が中心の海岸とはテイストがまったく違います。さすが大潮、アングルも何も考えずにひたすらシャッターを切り続ける自分がいました。まさに干潟萌え♡
どこからともなく飛来してきたサギ。目下エサを物色中?もちろんキミも大潮を狙ってきたんだよね。「干潮サギ」に遭わずによかったね!
定点観測地その1。1週間前の風景はこんな感じでした。
そして今回。これだけ景色が違います。言っときますけど、水が不足して干上がったわけではありませんから。ちゃんと元に戻りますから!たぶん。
定点観測その2。角度は若干違うものの、1週間前に消沈の思いで足を運んだ妹背山。
今回の妹背山。まるで別世界。二次加工なし!
さらに妹背山頂上から見た様子。まさに絶景の宝庫。まるでサウジアラビアとエジプトの間に位置する紅海のよう。テンションが高いと発想までグローバルになってきた!
◆オーラを放つ「アレ」
さてさて、干潟にばかり感動している場合ではありません。お目当てのアレを探しに行かなければ。ということで、はやる気持ちを抑えてとある場所に移動。あいにく干潟の観察にふさわしくない装備で来てしまったので、またまた後悔。学習能力なさすぎ。
大人の事情で干潟に直接下りることができなかったので、陸地から下へ向かって観察。10分ほど見渡したでしょうか、直径1㎝程度の穴がいくつもあいているのに気づきました。
まばたきするのも忘れて磯を凝視していると、穴を目指してチョコマカチョコマカ横走りしている小さな物体を確認。あ、これがもしかしてアレ?
やっぱりそうでした。間違いありません。初ハクセンシオマネキ!片方のハサミが大きくて、白い色をしています。体長およそ1㎝程度。もっと大きいサイズだと勝手に想像していたので、これは意外でした。感動のご対面となりましたが、ハクセンシオマネキにとってはきっといい迷惑だったに違いありません。それにしても横に走る姿が可愛い。
普通のカニと違って、どこかしらオーラを感じるのはキワメテスタッフだけでしょうか。この子は左のハサミが大きい感じ。もしかして左利き?♪私の私のカニは~ 左利き~♪
この子は右利き?ハサミが大きい側が利き手?知らんけど。ハサミだけでなく、甲羅の模様が今風で何かカニらしくなくてカッコよさげ。初めて見るハクセンシオマネキ。熱中症警戒アラートが発令されてさえいなければ、いつまでも見ていたい気持ちでした。
上から見ていると、意外と数が多いことに驚かされます。でも絶滅危惧種。それでなくても干潟そのものも減少傾向にあり、生きものもそれに正比例しているのが現実です。いくら観察しても構わないので、そっとしておきましょう。和歌山県立自然博物館の楫さん、見つけられましたよ~!「よかったです。1日に2回、ダイナミックに景色が移り変わる干潟は、万葉の人々もさぞ楽しんだことだと思います」って、楫さんは結構なロマンチスト?
◆和歌の歴史はカニの歴史?
そういえば、こんな話も耳にしました。地元の紀州東照宮で行われたかつての神事では、餠搗踊の法被に、種類は違いますが同じシオマネキのなかまのカニが描かれていたのだそうです。かつての品種はすでに絶滅したそうですが、それほどまでして地元で大切にされていたシオマネキ。和歌の浦は和歌の聖地でありながら知る人ぞ知るシオマネキの聖地でもあったのです。
干潮から1時間が経過してもこの様子。大潮って本当にすごすぎます。やることが極端すぎ。ちなみにこの日は十五夜。。煌々たる月に照らされた干潟って、きっと幻想的で素敵なんでしょうね。
その歴史は1300年といわれる和歌の聖地。ハクセンシオマネキが1300年前から生息していたのかどうか定かではありませんが、きっと歌人たちにも愛されていたのでしょう。
リベンジ大成功。暑さも吹っ飛ぶ感動の1日。大規模な干潟も見れて、貴重なハクセンシオマネキも見れて、この夏の一番の思い出になったことは間違いありません。もしかして、ハクセンシオマネキを詠んだ歌もどこかにあったりなんかして。