関西では馴染みの深い一級河川・淀川。以前、下流の気水域を歩いたことがありますが、今回は河口からさらに約20㎞上流の枚方市へ。近くには、京街道の要所であり淀川水運の港としても栄えた枚方宿も。数々の災害や舟運の足跡など、数々の歴史を積み重ねてきた淀川。現在はどのような魚が生息しているのかも、気になるところです。
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◆整備された河川公園
京阪電車・枚方公園駅から北へ歩いて10分足らず。閑静な住宅街を抜けると、目の前に枚方地区の淀川川河川公園が広がっていました。
江戸時代には、三十石船が伏見と大阪を往来したことで、枚方は舟運の要衝として大いににぎわいました。
当時の繁栄の様子を物語る石碑などがそこかしこに。
ここは枚方百景のひとつでもあります。四季折々の風景が楽しめる、水のある風景。この枚方地区の淀川河川公園では、自然と人とが寄り添った川らしい風景が展開されています。
壁越しには、あの「ひらパー」の観覧車も見えたりなんかします。
公園には、散策したり軽い運動をしている人たちがいます。この位置からでは川と少し距離がありますが、芝生がきれいな公園はまさに市民にとってのオアシス。住みたいまちとして全国的に知られているのは、これも大きなポイントになっているのかも知れません。
ちなみに、地元では淀川や河川敷のことを「堤防」と称することが多いのだそう。枚方だけなのか淀川に隣接するほかの市や町でもそうなのか、ハッキリとしたことも理由もよくわかっていません。
◆緊急時に備えて
ロケットのような尖った白い建物が見えます。ここに一度でも足を運んだことのある人なら、必ず記憶に残る印象的な風景です。
ウォーキングを楽しむためのコースも整備され、風に吹かれて爽やかな汗を流す人たちも少なくありません。
ひと汗かいたあとは、大きな木の木陰でひと休みする人たちも。その光景はまるでニューヨークのセントラル・パーク。
かつての舟運を彷彿させるこんな設備も。基本的には大規模災害時のアクセスとして使用される緊急用ではありますが、今秋は期間限定で観光クルーズの発着場としても利用されました。
遠くに見えるのは、京都府の天王山。季節が移り、稜線が白くなり美しい銀世界が見れるかも知れません。
さっき見たロケットのような建物に迫ります。よく見ると、水位がメートル単位で記されています。
この建物は枚方水位流量観測所。明治初期から昭和にかけて、淀川は大雨や台風によりさまざまな洪水に見舞われてきました。そんな過去の教訓を生かして、大規模な災害に備えて常時監視を続けています。
◆枚方宿と淀川
淀川とほぼ並行して東西に伸びているのが、枚方宿。京街道の宿場であり、東海道五十七次でいうと56番目にあたります。長年淀川の舟運の港として栄えるなど、淀川とは切っても切れない縁でつながっています。
街道沿いの道中は1㎞ほどですが、当時を忍ばせる建物がいくつか残っています。
おしゃれなカフェなども。最近ではカフェだけでなく音楽イベントなども開催され、歴史好きで町歩きを楽しむ人たちも増えています。
雑貨などを販売する小さなショップが集積したスポットも。
枚方宿を代表する史跡・鍵屋資料館。江戸時代に栄えた船宿で、1997年まで現役の料理旅館でもありました。
2001年以降は資料館として一般公開され、船宿当時の建築形式をかいま見ることができます。
枚方宿の現在は、住宅が建ち並ぶ生活道路となっています。
形状が虫かごに似ているため、虫籠窓と呼ばれる窓が並ぶかつての豪農邸も印象的。
現在は公園になっているところに、かつてこの場所に枚方宿本陣跡がありました。
◆情報が詰まった淀川資料館
枚方宿をあとにして、再び河川公園へ。さっきとは風景がまったく違います。河口までは26.5㎞の表記がありました。
最後に訪れたのが、淀川資料館。歴史や自然環境など、淀川の各種情報を集積した国土交通省の施設です。
コンパクトにまとめられたエントランス。
かつての防災に携わってきた人々の作業服やツールなども展示。
こちらは歴史ゾーン。
この日は、淀川だけでなく全国の河川改修に大きな功績を残したオランダの建築技師デ・レーケ展が行われていました。デ・レーケがいかに淀川の舟運発展に貢献したか、よくわかる展示でした。
そしてこちらが環境ゾーン。壁面には枚方市を中心にした淀川の全容が表されています。もちろん淀川に生息する魚の水槽展示も。
◆魚たちを守るために
環境ゾーンの中央にシンボリックに設置されている180㎝水槽。
コイやフナ、オイカワ、カネヒラなどの代表的な淡水魚がここの住人。
つかむと胸ビレを使ってギーギーと音を出すギギ。目下昼寝中。
こどもの時は6本なのに、大人になるとヒゲが4本に減るというナマズ。
こちらはびわ湖最大級のビワコオオナマズの標本。以前、大雨で増水したあとの枚方市内の淀川の水辺に取り残されていた貴重な1匹。もともと、びわ湖とびわ湖から流れる川にだけ棲む魚で、通常のナマズよりも大きく120㎝以上にも成長するのだそうです。一度実物を見てみたいものです。
体にうっすら黒いラインの入ったタモロコ。短い口ヒゲがあります。
川底に生息して、エサを砂と一緒に吸い込み砂だけをエラ穴からアウトプットするカマツカ。しぐさだけを見ていると、どことなくコリドラスに似ています。
ほかにも、これほど多くの魚が生息しているとは知りませんでした。ワンドでくらす魚や、気水域からさらに上流へと上ってくる魚などがいるようです。
今最も危惧されているのが、淀川のシンボルフィニッシュといわれているイタセンパラ。さまざまな理由で、日本固有の淡水魚として絶滅の危機にさられています。このため多くの稚魚が放流され自然繁殖に期待が寄せられていますが、ブラックバスやブルーギルなどの外来種による影響が危惧されています。
外来種だけでなく、水質の変化なども生態に影響を与えているのかも知れません。
人も魚も、住みよい環境があってこそ。母なる川といわれ度重なる洪水に耐え舟運で栄えた淀川ではありますが、利便性が確立された今守るべきものはやはり環境以外何者でもありません。
それを一番よく知っているのは、本格的な冬を間近に控えた淀川そのものなのかも知れません。
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※2023年1月31日(火)まで有効