かつては寺内町として栄えた大阪府八尾市の久宝寺地区。今も昔ながらの面影が残り、昭和初期に建てられた木造長屋が印象的です。そんな一角に誕生した、長屋につくられた水族館。しかも全国初。何せ古い建物。電気大丈夫かな~、水大丈夫かな~と余計なお節介をしながら、レトロなスポットを訪ねてみました。
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◆寺内町の歴史とともに
JR大和路線・久宝寺駅を降り立つと、こんな看板が。飛鳥時代、この付近に聖徳太子が建てたといわれる久宝寺が、駅名や地名の由来となっているのだそう。大和路快速の停車駅であり、おおさか東線乗り入れなどの利便性ばかりが目につきますが、こんな歴史があるとは知りませんでした。
駅から北東へ徒歩約10分。木造建築として大阪府で2番目に大きいとされる顕証寺。このお寺の周辺に寺内町(じないまち)が広がっています。
マンションなどの高い建物がないせいか,町全体が落ち着いた感じ。
夜になると明かりが灯るのでしょうか、水路なども整備され情緒たっぷり。
◆長屋という庶民のくらし
そして、ところどころ目につくのが古い木造家屋。今も人々のくらしがあり、寺内町の雰囲気を色濃く残す特徴的なシンボルでもあります。
木造長屋の姿もそこかしこに。基本、四戸一で平屋建て。かつては庶民のくらしの中心だった場所が、今やおしゃれなアトリエやカフェなどに生まれ変わっています。
そんな寺内町にあるのが、「シゼンブ八尾長屋水族館」。今春誕生したばかりのホヤホヤ。こんなレトロなアクアスポットなんて、おそらく全国のどこを探してもないのでは。
外から見える窓はこんな感じ。まるで昭和のワンシーン。「はよ帰ってきいや!」とオカンの声が聞こえてきそう。
2軒となりのお店とも違和感なし。古いけど新しい。どこか生まれ変わった新鮮な空気があります。
◆もしかして日本でココだけ?
この日迎えてくれたのは、イケメン男子3人。中央に館長の大橋一輝さん、右に副館長の平山 陸さん、そして左に(諸事情により)れんさん。みんなアクア好きであり川魚好きなメンバーばかり。古~い長屋と若~いイケメン。一見ミスマッチなようで、不思議とレトロな風景にしれっとなじんでいるのが面白い。
いかにも昭和チックなアプローチ。この先、何が待っているのかワクワク感が止まりません。
玄関で靴を脱いで足を一歩踏み入れると、おお~!レトロであるはずの空間が、想像を超えたアクアな世界が広がってました。これはエモい。
窓際に並んだ水槽の下にはレトロな水槽台?いえいえ、かつてこの長屋で使われていた襖の戸を横に置いて再利用したものなんです。
こんな欄間も、当時のままの古民家ならでは。さすがに刀傷なんて残ってないけど。
ガラス障子の模様がいい味出してます。まるでアート。影絵ができそう。
畳の上を歩くとフニャッとした凹凸がところどころあり、ギイギイといったスリリングなBGMがもれなく。ちなみに畳のサイズはいわゆる「本間」。フルサイズ。京間や団地サイズではないので,6畳といえど結構広いんです。
さらに奥を覗くと、草ぼうぼう。その向こう側には、外付けのお風呂がそのまま残っています。平山さんによると、カフェとビオトープを新設する仰天プランがあるそうな。おお~、そうなれば女子にも人気の映えスポットになること間違いなし。はよやり!
水族館のスペースは2つ。いずれは靴を履いたまま入れるよう、傷んだ畳や床をガラリとリニューアルすることも視野に。ギイギイサウンド、あれはあれでよかったけどね。
◆川魚中心のパフォーマンス
早速魚たちをご紹介。こちらの水槽には、大和川を中心にした川魚のオンパレ。そう、八尾といえばやっぱり大和川ですからね。
八尾では一番よく見かける在来種のオイカワほか、コウライモロコ、タモロコ、ヌマムツ、カワムツなどなど。
こうやって見ると八尾にはたくさんの川魚がいるんですね。
横縞の模様が印象的なナマズがぬた~っと。4本のヒゲが生えてます。
やや暗い緑色をしたアブラボテ。
オオシマドショウ、ニシシマドショウ、チュウガタスジシマドショウなどもアブラボテと混泳中。
「ドジョウは33種類あるといわれてるんですが、いつかは33種類すべてを揃えてみたいです」(平山さん)。庭につくるビオトープでは、在来種のドジョウを繁殖させる予定なのだとか。あ、ビオトープもいいけど、カフェもよろしくね!
ゲンゴロウブナ。日本固有種(全滅危惧ⅠB類)。ヘラブナ釣りや養殖用として利用されるヘラブナの原種。
水槽メーカーのPRにもひと役買うギンブナ。
可愛いキャラのカワヨシノボリ。ほっぺたの模様に注目。
もともと長屋にあったレトロな座卓をちゃっかり水槽台にしているニホンウナギ。この日は、ずっとパイプの中にいて出てきてくれませんでした。パイプは避暑地かよ。
「ボクのおなか、赤いでしょ?」。よく見ると、アカハライモリ。めっちゃ近い。
みんな大好きノコギリクワガタ。このほかミナミメダカやギギ、モクズガニといった、八尾産の生きものも展示されていました。
昭和の初期ごろに建てられたと思われる建物。平山さん以外の2人は地元出身という地の利もあって、建て壊す予定の長屋を運よくゲットできたのだそう。
それにしてもなぜ長屋なのか。なぜ八尾でないといけなかったのか。キワテ的にはそこが気になった。そして取材を進めていくうちに、意外な事実が。決して思いつきやノリで開設したものなんかではなく、ちゃんとした理由があったんです。
【後編へ続く】