2020/09/11ベタ, メンテナンス, 取材, 地域社会, 専門家, 教育, 未分類, 歴史, 水槽, 水草, 淡水魚

【ユーザー訪問】泣く子も笑顔に変わるアクア効果☆初代副園長の遺志を受け継いできたフタバ学園(大阪府東大阪市)

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園児たちを楽しませているのは、お歌やお遊戯だけではありませんでした。そう、玄関に置かれた水槽が朝な夕なに園児たちとふれ合っているからです。毎日のように繰り広げられるほのぼのとしたシーン。水槽のあるエントランスでは、どんな日常が繰り広げられているのでしょうか。

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◆生きものが大好きだった初代副園長

児童福祉施設・フタバ学園は、住宅が密集する東大阪市の一角にありました。外から見ても、創立20周年に植樹されたクスノキが青々と育ち、すっかり園のシンボルとなりました。

 

園内に入ると、保育園とは思えないモダンな建物が。まるで美術館のようなたたずまい。そしてカラフルな遊戯具が出迎えてくれました。

 

ん?こんなところにゾウがいるゾウ~(笑)。これは初代副園長がずっと前に海外で購入してきたお土産なのだゾウ~♪かなり大きなサイズだゾウ~♪この像も園児たちの毎日の送り迎えを見守っているのだゾウ~♪何より初代副園長は動物や生きものが大好きだったそうだゾウ~♪

 

春になると、めいっぱいの藤が咲くという藤棚。少し木陰に入っただけで、とっても涼しく感じました。

 

おお~、こんなに可愛いトマトが。

 

ボルダリングをイメージしたオブジェなども。こんなわくわくした仕掛けが随所に見られるのは、保育施設というワンダーランドだからでしょう。

◆水槽はとことん園児目線

そして玄関を入ると。ありました、ひまわり畑のような夏らしい水槽が。取材に伺ったのは残暑の厳しい一日でしたが、季節感を考慮して毎月四季折々の演出が施されています。

 

サイズは手頃な60㎝。角の方向からでも魚が見やすいよう、水槽は前面ラウンドタイプを採用。

 

万一園児たちが動かそうとしてもビクともしない特性カバーで水槽をガード。また園児たちにケガがないよう、クッションなどで安全対策もバッチリです。あくまで園児目線を意識して設置された水槽ビュー。今にも園児たちが走ってきて、黄色い声が聞こえてきそうです。

 

さて一体どんな魚がいるのでしょう。カージナルテトラやサイヤミーズフライングフォックス、アルビノグローライトテトラ、グラミー、ベタなどのほか、赤い個体が印象的なサンタクロースソードテールも。

 

ひまわりをバックに、生まれたばかりのサンタクロースソードテールの赤ちゃんもいました。水槽を管理するメンテ会社によると、園側と相談してできるだけ子どもたちの目にとまりやすいよう目立つ魚をチョイスしているのだそう。「中には魚の名前を覚えている園児もいるんですよ」と園長代理の大西和美さん。毎日ただ漠然と水槽を眺めているだけではなく、興味があるからこその好奇心の賜物です。

 

水槽の下には、個体の名前が写真とともに書かれていて、文字に興味を持ち始める園児たちへの配慮も忘れていません。

◆水槽と連動した“床下アート”も

早速園児がやってきました。食い入るように水槽を見つめるアクア男子やアクア女子(笑)。

 

「あれ?エビがいな~い」。いやいや、きっとひまわりの陰に隠れているんですよ。それぞれお気に入りの個体をチェックしているとは、将来が楽しみです。

 

アクアとの縁は、学園が創立された昭和28年にさかのぼります。その先駆けは、初代副園長だった小山清子さん(故人)でした。「生きもの全般や熱帯魚がとっても好きな人だったんです。多い時には90㎝クラスの水槽が4つもあって、魚の世話も掃除も全部一人でやっておられました」(現理事長・小山よしえさん)。

 

なるほど、それがアクア導入のきっかけでしたか。昭和28年といえば、どこの小学校の校庭にもウサギ小屋やニワトリ小屋、そして教室の後方には当たり前のように魚やカメのいる水槽があった時代。今と違って生きものとの距離は格段に近かった時代でもあります。いや、そのころはまだ生まれてなかったので人から聞いた話ですが(笑)。

 

「母でもある初代副園長の遺志を継ぎたくて。でも母のように自分たちで水槽を管理するのはさすがに難しかったので、管理は専門のプロにおまかせして今に至っているんです」。建物が新しくなった平成23年、満を持してアクアが復活。10年ほどのブランクはありましたが、水槽を設置した理由が軽い気持ちではなかったことがよくわかりました。「スペースに余裕があれば、本当はもっと大きなサイズを置きたかったんですけどね(笑)」。

 

ん?水槽の近くにあるのは床下収納庫?まさかキッチンじゃあるまいし(笑)。よく目を凝らすと、透明ガラスで中が透けて見えます。しかも透明ガラスは大人が歩いてもビクともしない強度で、これらも子どもを預かる施設ならではの配慮です。

 

さらに近づいてみると、ドールや貝殻などが置かれたシュールな世界が広がっていました。収納という機能のない、いわば“床下アート”。小山さんたちの手によって、水槽同様に季節を意識した演出が施されていて、園児たちに人気があるそうです。水槽管理は無理でも、床下アートなら任せて!という、デザイン心のある小山さんの心意気なのかも知れません(笑)

 

「朝当園した時はぐずっていたのに、水槽やこれを見て機嫌を直してくれる園児たちも多いんですよ(笑)。逆に、お父さんやお母さんがお迎えにきていても、なかなかこの場を離れようとしない園児もいます」(大西さん)。水槽と床下アートがセットになった玄関演出。全国の保育施設の中でも、こんな取り組みをしているのはおそらくここだけではないでしょうか。

◆水槽に子育ての息抜き効果

え、もう1個水槽があるって?そんなん聞いてませんけど(笑)。実は建物が新しくなった9年前、60㎝水槽の設置とほぼ同時期に別の施設にも水槽が設置されました。しかも歩いて数分のところだと聞いて、早速学園の関連施設「あそぼ」へ向かいました。

 

ここは地域子育て支援のための施設。水槽が置かれていたのは1階のスペース。しかもこちらは90㎝。この日は、さっきの水槽のように季節を意識したデコレーションは施されていませんでしたが、水草のみであしらった潤いのある水草水槽でした。

 

お母さんにとって子育ては24時間営業。自宅で24時間わが子に向き合っているだけでなく、違う環境でほかのお母さんたちとコミュニケーションをとることも大事。たとえ限られた時間であっても、子育てに勤しむお母さんの息抜きの場として重要なファクターとなっています。

 

ゆっくりと水槽を通して生きものとふれあいこと。それは、自宅とは違う環境でお母さんにとっても子どもたちにとっても、大きな気分転換になることでしょう。水槽で泳ぐ魚たちは、そんな親子のストレス軽減にも一役買っています。

 

エンゼルフィッシュ(ミックス)は、もともと保育園の60㎝水槽にいたそうですが、ソードテールの子どもが生まれたことでこちらへ“移住”。これによって、ソードテールの小さな命も守られました。

 

ひときわブルーがきれいなゼブラダニオ。

 

集団行動が得意なラスボラヘテロモルファグラスブラットフィン。一人でいることが好きな魚だったり、みんなでいることを好む魚であったり。どうやら、魚も子どもたちも共通点がありそうです。

 

お掃除係のセルフィンプレコもいるらしいのですが、夜行性のためかやっぱり表舞台には現れず(笑)。「え、そんな役割をする魚もいるんですか!?」と驚いた様子の大西さん。そうなんです、個体の特徴を子どもたちに伝えてあげれば、またひとつ子どもたちの興味が深まるかもですね。

 

ほかにグラミーやラミノーズテトラなども。水草の間を縫うように魚が泳ぐ、ファンタジックなアクアの世界。視認性のいい前面ラウンド型水槽を落ち着いた環境で見ることができ、時間の経つのも忘れてしまいそうです。

◆バーチャルよりやっぱり本物

この施設にこの水槽で正解でした。「最近は、水槽を本物そっくりに表現するバーチャル映像もあるようなんですが、でもやっぱり目の前で実際に動き回る本物を子どもたちに見せないと意味がないと思うんです。それによって飼育の必要性や命の大事さもわかるでしょうから」(小山さん)。そうなんです、言いたいことをよくぞ言ってくれました(笑)

 

「園に来るのが楽しい!」「お魚が待ってる!」。そんな声が毎日のように飛び出す保育園。遊びを通して少しずつ成長していく園児たちにとって、今やアクアの存在はなくてはならないものとなっています。

 

「どの園児もこの水槽が大好きで、毎日・毎月の変化を楽しんでくれています」(大西さん)。園が創立された際、先陣切って水槽を導入した初代・小山副園長の思いは、約70年が経過した今も脈々と受け継がれています。

 

まるで子どもたちが、フタバ(双葉)から本葉へと育っていく植物のように元気にたくましく育っていくのを見守っているかのように。

 

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