大阪府泉大津市の臨海工業地帯に本社と工場を有する大一機工は、主に車のエンジン周りや足周りの部品などを製造する会社です。代表取締役社長の多田 茂さんは、小学生のころからアクアに興味を持ちエンゼルフィッシュやキッシンググラミーなどを飼育していたものの、途中頓挫。ところが去年、ひょんなきっかけでアクア熱がまたもやオーバーシュート(笑)。本社オフィスのそこかしこに、アクアな癒し空間がありました。
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◆いきなりコイプール
あらまあ、いきなり何という光景でしょう(笑)!。とはいっても、ここはれっきとした本社オフィスの玄関前。決して養魚場ではありませんので念のため(笑)。よくみると、ニシキゴイがバッシャバシャ。30匹近くはいるでしょうか、どのコイもすこぶる元気です。しかも赤やら金鱗やら銀鱗やら、バリエーションも豊富。
大きいものだと体長1mは余裕であります。このプールで生まれたコイもいるし、品評会で賞を獲ったコイもいるのだとか。
おなかをすかしているコイが1匹、また1匹。大きな口を開けて「メシはまだかぁ~?」(笑)。はいはい、エサやりは当番制なのでちょっと待ってね。夏場に入るとこのように元気ですが、冬場は約3カ月間冬眠生活。酸素を十分に供給できる強力エアポンプのおかげで、水もとってもきれいです。
プールは水深1m70㎝、水量40トンもあるそうです。なぜにコイを?何と驚くなかれ、これは防火用水だったんです。ただ水だけを貯めておくだけだと、水は汚れるしボウフラは発生するし。そこで、20年前に先代の社長であるお父様(故人)が自宅の庭で飼育していたものをここへワープイン。そうでしたか。多田さん自身も幼少のころアクアにハマってたわけですから、これはある意味アクア遺伝といってもいいかも知れません。
それにしても、防火用水だったとは。だから赤いコイが多かったりして(笑)。エントランスのすぐ横にあるので、搬入や搬出のトラックが時間待ちの際などにコイを眺めて癒されるドライバーも多いそうです。防火だけでなく、ちょっとした福利厚生にも一役買っています。
どちらかというとコイは縁起がいい運気上昇の生きものとして知られています。激流に立ち向かい数々の困難を乗り越え、やがて大きな龍へ成長するという中国の後漢書の登龍門の故事が由来だとも。コイの寿命は約70年といわれていますが、来年創業60周年を迎える会社にとってコイたちは守護神なのかも知れません。
◆導入したかったミストへのこだわり
「これがメダカ池なんですよ」と、多田さんに見せてもらった2番目のアクアシーンはオフィスに入ってすぐのところ、2階へ通じる階段の下にありました。1番目はコイで2番目はメダカですか(笑)。「去年からメダカが流行ってるでしょ?なのでメダカ池にしました」。コイプールは20年前でしたが、こちらは去年完成したばかりのホヤホヤです。
コイプールもメダカ池も、日常の管理は専門業者にアウトソーシング。でも話を聞いていると決してオール丸投げではなく、魚の習慣などの生態を日頃から細かくチェックすることも怠っていません。かつては飼育歴のある多田さん、メンテ会社まかせにすることなく、生きものに対する愛情がひしひしと伝わってきます。
白いモダンなスペースに、和テイストがブレンドされたメダカ池。中央にはダイナミックに配置された流木と岩場が。そして上流から下流へ、まるで川のような水の流れが再現されています。
中でも、白い小さな花を咲かせるウトリクラリアグラミフォリア(通称ウォーターローン)がひときわ印象的です。
目を凝らしてみると「上流」からはミストが吹き出しています。ミスト導入とはいいアイデアですね。「娘のところにある水槽にこの仕掛けがあったんです。昔のアクアリウムはこんな仕組みはありませんでしたよね。まるでジャングルのような雰囲気が、とっても気に入ってしまったんです」。え、お子さんもアクアを?お父様といいお子さんといい、やっぱりアクアのDNAはちゃんと引き継がれていました(笑)
植物は、ウトリクラリアグラミフォリアのほかビカクシダ、シダ類、水生植物はニムファ(スイレン)、長い茎が特徴のアンペライなどなど。
メダカはというと、ダルマ、楊貴妃、鉄仮面、五色、紅白、コイメダカなどなど。「この間、先代の墓があるお寺にコイを10匹あげたら、お返しにメダカを10匹もくれたんです」。この取引、果たしてどちらがトクしたのかは定かではありません(笑)
冬場はヒーターを使って22℃に設定。この会社ならではのアクアなおもてなし。今や取引先の商社や銀行などの癒しになっています。
◆ジャングルをつくりたかった
これで終わりかと思いきや、オフィス内には第3のアクアシーンが。社長室へと続くオフィス内の廊下に設置されていたのは、開口型の60㎝横長水槽でした。
設置されたこの場所は、オフィス内のいわばメインストリート。商談用の打ち合わせスペースもあり、いかにもうちの水槽見てください的なシチュエーションに好感が持てました(笑)
潤いのある水草とダイナミックな流木。そして色鮮やかなコケと可愛いグッピーやシュリンプたちとの共存共栄が展開されている、いわばアクアテラリウム。横からみると、まるで上下で陸と水中の生態系をパノラミックに見ているようです。
この水槽にもミスト装置発動(笑)。しかも背景のブラックボードに溶け込み、なかなかエチゾチックな雰囲気を醸し出しています。これもやっぱり娘さんの水槽に刺激されて?「そうです。ジャングルはやっぱりいいです」と多田さん、社員からの評判もよく満足そう。
植物はクルプトコリネ、シダ類、ウトリクラリアグラミフォリアなど。生体ではエンドラーズグッピー、ゴールデンハニーグラミー、ダイヤモンドテトラ、カージナルテトラ、オトシンクルスネグロなどが同居しています。
このほか、レッドビーシュリンプ、レッドチェリーシュリンプ、夢幻ブルーシュリンプも。この水槽も月2回の頻度でメンテ管理してもらっているのですが、給餌や植物の手入れを多田さん自らがハサミやピンセットを使ってやることも珍しくありません。一番の注意点は、「環境に合った魚を飼育することでしょうね。それとエサのやりすぎ。アクアショップでいいのがあってもすぐには買わず、できるだけ(メンテ会社と)相談してからにしています」。自身の手で水槽を管理することがない分、「やっぱり餅は餅屋ですから(笑)」とメンテ会社に対する信頼は厚いものがあります。
これは一体?聞くところによると、外国製の水位センサーを導入。水位を感知し、ボーダーラインを超えたらタンクから水が自動的に注入される仕組みになっています。乾燥した季節は特に水面からの蒸発が激しく水位が下がることが多いものですが、これなら、会社が長期休暇に入った場合でも水位が下がりすぎることがなく安心です。
◆果てしなく広がる構想はメンテスタイルだから
向かって右側の空きスペースには、メダカ池や60㎝水槽と同時期に導入した45㎝水槽があるのですが、諸事情によりメンテ会社サイドで水草などを養生中。今度はあくまでノーマルな水槽に仕上げるべく、第4のアクアシーン復活もそう遠い日のことではなさそうです。
「今ちょっと興味があるのはショーベタ。きれいですからね。以前飼っていたベタもまたチャレンジしてみたいんです」。ご自宅で飼育するという選択肢は?「家には犬がいますからね~。それと、妻が可愛がっているトカゲもいますから(笑)」。えー、奥様が???
これが奥様が飼育されているレオパのピーちゃん。目が合って名前を呼ぶとうれしそうに近づいてくるのだそうです。ただレオパ1匹をケージに入れておくだけでなく、ソイルや流木などのアクセサリーもたっぷり。だからでしょうか、爬虫類にしては珍しくすっかり人に懐いています(写真/多田さん提供)。
「こうやってすんなり手におさまってくれます。全然嫌がりませんから(笑)」(写真/多田さん提供)。
いつかは120㎝水槽が欲しいという多田さん。今度は今よりもっと水深のある水槽で、魚たちが余裕を持ってゆったりと泳げる環境をつくってみたいそうです。確かにオフィスのスペースは余裕たっぷり。120㎝水槽がきたら、さぞかし存在感を増すことでしょう。「まあ景気がよくなれば、の話ですが(笑)」
人それぞれのアクアライフ。多田さんを見ていると、次の一手をすでに考えているような気がしてなりませんでした。メンテをプロに任せるアクアライフだからでしょうか、これで完成という日はないのかも知れません。楽しい構想がエンドレスなのは、メンテスタイルのアクアライフだからかも知れません。
1度見たら忘れられない会社案内パンフレット。これだけでも、アクアに対する親子2代の思いが十分伝わってきます(笑)