大阪ミナミといえば、めっちゃ人・人・人で賑わってますよね~。
それもそのはず、大阪地下鉄・御堂筋線なんば駅だけでも、1日約30万人以上の乗降客が。
外国人観光客からも人気も高い場所だし、さすが大阪を代表する繁華街だけのことあります。
その一角にある小さなアクアリウムといえば、誰もが「あ~、知ってる知ってる♪」。
そうそう、大阪人ならあのスポットを知らない人はまずいないのでは?
でも、なぜアクアリウムがあんなところにあるのか、いつもきれいな水槽を誰がメンテしてるのか、気になる人は少なくないと思います。
ということで、今回はアクアファンならずとも気になる、あのスポットを取材してみました。
◆とりあえず名称は「なんば駅のアクアリウム」
まずは場所のおさらいから。
一番近いのは、地下鉄なんば駅の北東改札付近。
といってもピンとこない人がいるかもしれませんが、【近鉄の大阪難波駅から南海なんば駅へ通じる長~い地下の通り】といえばたぶんおかわりかと。
そうなんです、駅構内でありながら地下のコンコースにも面してるんです。
もしわからなかったら、「水槽の置いてあるところ知りません~?」と誰かに聞けば教えてくれると思います、たぶん(笑)
ありましたありました~、2つの水槽が地下の通りの展示スペースにビルトインされてます。
そして、水槽の向こう側が地下鉄駅の構内です。
それにしても、いつもすっごい人!
両方からひっきりなしに人がくるし、おまけにみんな早足だし、ん~大阪っぽい(笑)
この場所を知ってか知らずか、夢中で水槽に見入ってる人たちが結構います。
アクアマニアなのかどうかわかりませんが、すっかり大阪の名所になっている気がします。
地下の通りを挟んで、コインロッカーが向かい側にあり利用者がついつい足を止めることも。
それにしても人通りの多いこと。
立ち止まって観察していると、早足であっても水槽をチラ見してる人が結構多いんです。
認知度&注目度はバッチリです。
駅構内のほうからみたらこんな感じ。
さっきの通りと違って、こちらのほうは比較的ゆっくりみれます。
トイレが近くにあることから、【相方】を待つ時間つぶしに水槽を眺めている人も多い気がします。
アクアリウムがこの場所にできたのは、今からちょうど20年前。
その2年前に関空が完成した際、この付近に広告を展開したいというクライアントがあったそうです。
公共性の高い場所でもあるし、「せっかく広告をするなら、憩いの場となるようなところに」との思いから、広告とは別にアクアリウムを置くことで満場一致。
人通りの多い、いかにも大阪らしい場所に設置したことで効果テキメンでした。
以後20年間、憩いのアクアリウムとして地下鉄や私鉄の乗降客を見守り続けてきました。
2つの水槽はガラス製で、幅150㎝・奥行60㎝・高さ70㎝の特注水槽。
現在の水槽が2代目で、ガラス飛散防止フィルムやガラス鏡面保護フィルムなども貼られ、安全対策も万全です。
手前の水槽は、水草を中心に構成された、どちらかというとマニア向け水槽。
向こう側の水槽は、季節感をデコレーションで施された、遊び心いっぱいの水槽。
投入されている魚は、レイアウトの特性に合わせてそれぞれ種類は違います。
水草水槽に近寄ってみましょう。
グッピー(タキシード)、カージナルテトラ、ラミノーズテトラ、トランスルーセントグラスキャットフィッシュなどがラインナップ。
あ、このグッピーもうすぐ赤ちゃん誕生ですね~。
ヤマトヌマエビがツマツマしてます。
人気のプレコ(ノーマル・アルビノ)だっていますよ~。
ちょっと恥ずかしがり屋で、しかも人見知りなところが玉にキズですが(笑)
ウォーターウィステリア、キューバルドー、レッドルドウィジア、ミクロソリウム、ロタラインディカ、ウィローモスなど、水草も元気に育っています。
ついこの間、グッピーが生まれたばかりなので、よくみるとたくさんの赤ちゃんグッピーが泳ぐ姿がみれますよ。
こちらの水槽は、普段はシクリッド系ですがここ数年は金魚が入っています。
金魚の一種であるコメットをメインに、クラウンローチ、オーネイトキャット、フライングフォックスなどなど。
そこそこの大きさでありながら比較的動くのも早く、元気な姿をみせてくれています。
なお底砂には化粧砂が使用されています。
ここの一番の特徴は、いつみても水槽が本当にきれいなこと。
コケべったりの水槽ではちょっとね(笑)
え、掃除しているのをみたことがない?
そりゃそうです、みなさんが寝静まっている真夜中にメンテしてるんですから(笑)
ということで、誰が水槽をきれいに保っているのか、早速調べてみました。
◆OA機器販売やアウトソーシング事業の会社がアクア?
やってきたのは、大阪市北区に本社、東京に支店を置くダイビスという会社。
大阪本社ではOA機器販売のBS事業部、アウトソーシング事業のOS事業部があり、何と今年創業60周年を迎えるのだとか。
そしてBS事業部に所属しているのが、アクアグループ。
OA関連中心の会社でありながら、な、な、なんと、アクアのリースやメンテナンスなどもやってのけるというから、ビックリ。
てっきり、アクア関連の専門店がメンテをしているのだと思ってました。
「もう20年以上も前、創業者がアメリカへ視察に行った時、ある会社の玄関にある大きなアクアリウムを目の当たりにして、これだ!と思ったそうです」と、同社BS事業部アクアGリーダーの牧野麗さん。
なるほど、直感というわけですね。
でも考えてみれば、複写機などをセールスする際、「ついでにアクアなんかもおひとついかがですか?」なんて営業トークも、あながちフシギではないですよね(笑)
今では東京から九州までの広いエリアで、ショールームや一般オフィス、医療施設、保育所、個人宅など100近い数のリースを手がけているそうです。
何と、お笑いの殿堂であるあの有名企業の劇場の楽屋に置いてある水槽も、こちらの会社が手がけたものだそうですよ。
会社のストックルームをみせてもらいました。
あれま~、まるでアクアショップのバックヤードみたいじゃないですか!
たくさんの水槽が、何段にも積み上げられています。
そして、たくさんの魚がていねいに育てられています。
ここで育った魚は、いずれリースによって【晴れの舞台】へ。
なるほど~、ここは2軍=ファームみたいなところなんですね。
以前この場所には、【本業】である印刷機が置いてあったとかで、今ではすっかりこんなことに(笑)
ここまでみせられたら、メンテの現場をみないわけにはいきません。
そうでしょ?読者のみなさん(笑)
かくして、難波のアクアリウムのメンテナンス作業に同行させてもらうことになったのです。
眠気なんかに負けませんから(笑)!
◆真夜中の作業は駅係員による「ノーゲスト!」が合い言葉
時間は午前0時半。
再びやってきました、なんばのアクアリウム。
でも昼間と様子が全然違います。
当たり前ですけど、人がいない(笑)
最終電車が行ったあと、駅係員によってすべてのシャッターが下ろされます。
「OKです!ノーゲスト!」と駅係員。
へ~っ、こんな言い方するんだ~、と妙に感心している場合ではありません(笑)
これを合図に、作業が始まりました。
作業は通常は2人で行います。
牧野さん(左)とともに二人三脚で労苦をともにしてきた、アクアGリーダーの大谷健志(右)さんが相棒です。
8年前までアクアショップで働いていたという大谷さん、そういえば牧野さんも水産系の専門学校出身でしたっけ。
まさかお二人ともOA機器の営業やメンテナンスも?
「いやいや、それは勘弁してくださいよ~(笑)」(大谷さん)
まずは外装部品の屋根部分を外しながら、照明器具も清掃が始まります。
自動エサやり機も外されました。
誰もいない駅の構内で、水を少しずつ抜きながら頃合いのいいところで水槽についたコケの除去から。
アクアのメンテの基本ですね。
ん~、でもそんなに汚れてる気がしないんですが。
定期的な月2回のメンテナンスに加え、お二人の作業自体ていねいに行っているからなんでしょうね、とにかく水槽がきれいだと評判がいいのは誰もが認めています。
あ、こんなところにPRが(笑)
「いいことも悪いことも電話がかかってきますから、気を抜けないんです」(牧野さん)
このシールは、ある意味責任の証といえるでしょうね。
サイフォンを利用した機器を使って、底砂もきれいに。
そのひとつひとつが、地味な作業です。
外部式フィルターの清掃も。
ちなみに、それぞれの水槽には2本ずつ使用されています。
今回は活性炭を新しいものに交換しました。
ん?
どこからともなくゴトンゴトンという電車の音が。
最終電車はとっくに出たはずなのに。。
空耳アワー(笑)?
いえいえ、線路を点検するための特殊車両が走っているのだそうです。
真夜中の地下鉄駅、なかなか面白い!
さてさて、前回までのデコレーションが外されました。
合格祈願にちなんだ絵馬風のデコレーション。
この春、ここでアクアをみた人みんなが合格してたらいいだろうな~。
だーれもいない地下コンコースに、意味もなく一つポツリと置いてみました。
寝そべって撮ってみたい、そんな気分でした(笑)
育成具合の状態をみながら、少しずつ水草を除去したり剪定したり。
「地味な作業でしょ(笑)?」(牧野さん)
ふだんきれいにみえるものこそ、その陰ではこうして地味な作業があるものです。
それにしてもこの作業、かなり熟練を伴います。
さて、4月の【お題】は春。
桜やら菜の花やら、春にちなんだ装飾が施されています。
大谷さんの仕草をみていると、思わず生け花を連想してしまいました。
「入社当初、創業者から生け花を習うよう言われたことがありまして(笑)。
会社に生け花の先生がこられて教えていただいたこともあるんです」(大谷さん)
へー、マジですか!?
まあでも、水草をレイアウトでどうみせるかという点では、生け花に通じるものはあるかもしれません。
水足しは会社から持ってきたお湯と、給水栓からの水を利用します。
作業もそろそろ佳境に入ってきました。
こちらの照明は、白とピンク、白とブルーの2蛍光灯をそれぞれ1セットとして設置。
光のちょっとした感じでみえ方も変わるので、照明ひとつにも神経を使います。
デコレーションが終わり、水草の手入れもほぼ終わりました。
よくありがちなメンテ後の濁りもほとんどなく、約3時間で作業は終了。
真夜中の作業、本当にお疲れさまでした。
きれいになったふたつの水槽。
水草はいきいきと命の輝きを増し、もう一方の水槽はすっかり春爛漫となりました。
一番問い合わせが多く人気者だという、アフリカ産のオーネイトキャット。
メンテが終わって、心なしか安堵感に満ちているような。
いやいや、この子はいつものこの魚砂底あたりで【休憩】してるんです。
「今日は珍しくクラウンローチがくっついて離れませんね~(笑)」(大谷さん)
◆早足もほどほどにたまにはゆっくりアクアリウムを
メンテの2回に1回、つまり月1回はほぼ水槽の中身が模様替えされます。
深夜の作業に同行させていただいた時は、桜咲く本格的な春への装いにチェンジされましたが、秋には秋の、冬には冬のデコレーションがあります。
たとえば梅チラリホラリ。
たとえば受験シーズン。
たとえば夏の風物詩。
たとえば紅葉真っ盛り。
たとえばわくわくクリスマス。
こうして一年中、通行人の目を楽しませてくれる水槽は、まさに癒しのカレンダーといえます。
水槽以外の部分に桜吹雪や竹林ラッピングを施し、水槽をさらに引き立てる演出を施したこともありました。
人気のプレコを擬人化した、ユニークなキャラクターも人気です。
(以上8点の画像は大阪オリコミ提供)
2002年に日本でサッカーワールドカップが行われた時、難波周辺には多くの群衆が集まり異様な空気に包まれました。
阪神タイガースが優勝した2003年や2005年も同様でした。
道頓堀へ飛び込んだファンが何人もいたのもこの時でした。
興奮した群集心理は危険だと先を見越し、いち早く自主的に水槽の警備にあたったそうです。
幸い水槽は無事でしたが、奇声をあげてコンコースを歩く光景は異様だったそうです。
「や~っぱり神経を使います」と力を込めて言う牧野さん、責任感の強さを感じさせる人柄です。
20年間、大阪のさまざまな歴史に遭遇してきたなんばのアクアリウム。
深夜のメンテナンス作業を取り巻く環境も、ずいぶん様変わりしてきたそうです。
今より景気がよかったころは、お酒を飲んでご機嫌なサラリーマンが午前3時ごろでもたくさん地上にいたそうです。
外国人観光客が急増する最近では、「深夜なのに小さな子どもが路上で平気で遊んでいたりしてビックリしますよ(笑)」(牧野さん)と、驚きを隠せません。
時代がそのまま映し出された、ミナミかいわい。
癒しのパフーォマンスのかたわら、そんな時代の移り変わりを最も敏感に感じてたのは、案外魚たちかもしれません。
そしてこれからも、道行く人に癒しを提供していくのでしょう。
大阪のみなさん。
気持ちはわかりますが、あまり急ぎ足ばかりで歩かないでたまにはゆっくり【憩いの場所】でくつろいでくださいね(笑)
★取材協力/株式会社大阪オリコミ、株式会社ダイビス
【おことわり】
なんば駅のアクアリウムは2018年10月23日(火)に水槽展示を終了いたしました。(2018.10.25追記)