2017/11/24ユーザー, 取材, 技術

【ユーザー訪問】「呼吸するよりディスカスが好き」☆佐藤 駿さん(大阪市住吉区)

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茶髪で、破れたジーンズ、そして魚オタク(笑)。

一見チャラ男にみえなくもない男子ですが、大阪市大の大学院で魚類を研究し、学会で発表した論文は2本。

さらに今年の9月には、2017年度日本魚類学会・最優秀ポスター発表賞を受賞するなど、院生として立派な実績も残しています。

先般の大阪市大での取材でも、聞きたいことにちゃんと答えてくれて礼儀正しくて、人はみかけによらないものだとつくづく(笑)

そして、何よりもディスカス大好き人間。

「100匹くらいはいると思いますよ」と聞いて、スルーするわけにはいきません。

約3カ月ぶりの再会場所は、ディスカスに囲まれた自宅の一室でした。

 

 

◆本邦初公開!オタクのオタク

 

訪れたのは、大学とほど近い住宅街の一角。取材の前日、関西地方を襲った台風21号の影響で大和川があわや氾濫寸前。自宅と川が100mくらいしか離れていないので、あわてて友人のマンションに避難したそうです。

わざわざ最寄駅まで迎えにきてくれた佐藤君、「お久しぶりです!」とペコリ。こんなところも、意外(?)に律儀。あれ?茶髪がさらにパワーアップしてるけど(笑)。「はい、9月に賞をいただいた反動で、さらにやっちゃいました(笑)」。いきなり意味不明な取材スタートとなりました。

 

自宅に入ると、まず出迎えてくれたのが、縦型の爬虫類用ケージ。おお~、まるで熱帯ジャングル。あれ?ディスカスだけじゃないんだ。これってテラリウム?「いえ、実際に生き物がいるので、ビバリウムということになると思います」え、生き物がいる?

 

ああ、いたいた!神秘的なブルーの色をしたカエルは、北米南部や南米などに生息するヤドクガエル。今回まともに遭遇したのは1匹だけでしたが、ほかに3匹ケージの奥のほうに潜んでいるそうです。強い毒性があり、先住民が、このカエルから抽出した毒吹き矢の先端に塗り付けて利用したのが名前の由来だそう。こわ(笑)!ケージ内はまさに熱帯地方。植物も元気に育っています。

 

タイマーによって、雨だって自動的に。湿度70%以上に保っておかないといけないそうです。いや~、タイマーとはいえ排出される水も管理しないといけないし、これだけでも大変なのにディスカスが100匹以上いるなんて、凡人には信じられません(笑)

 

さてさて本邦初公開!これが佐藤君の「オタクのオタク」です(笑)。男の一人暮らしにしては、意外ときれいでした。真ん中にソファとテーブル、目の前にドデカいパソコンのモニター(なぜこんなに大きなサイズが必要なのか不明)、そして周りをディスカス水槽がコの字型に取り囲んでいます。

夏も冬もエアコンはフル回転。設定は常に25~26度。「8月は3万円近く電気代がかかりました(笑)」。もはやディスカス中心の生活。オタクはこのくらいの覚悟がないと(笑)

 

でもたまにはマジで凹むことも。「以前お金がなくて困っていたころ、カップラーメンを夜に食べて、カレーのルーをわざと残しておいて翌朝のごはんにかけて食べていたことがあったんです。ふと水槽をみると、あいつらはゆうゆうと(エサの)ハンバーグを食べていやがる(笑)。こっちがひもじい思いをしてるのに、なんという矛盾だ!って、ぶっちゃけ神を恨みましたね(笑)」。それでも変わらぬディスカス愛。これまでも、これからも変わることはありません。

 

1年365日、水槽は毎日水替え。「全然苦じゃありませんよ」と、寝る前までの4時間は水替えに費やすのだとか。テレビとかは観ないの?「観たことがありません。というか、興味ないんです」。彼女は嫌がらない?「全然。昔付き合ってた彼女は逃げていきましたけど(笑)」。もし今の彼女が“私とディスカスとどっちが大事なの?”って言われたら?「ディスカスはぼく自身なんです。だからその質問、私とぼくとどっちが大事?ということになりますよ(爆笑)」。論理的なのか屁理屈なのかよくわからないキャラ、なかなか魅力的です(笑)

 

◆子育てのシーンをみているのがたまらなく

 

――ディスカスのどういうところが好き?

「人間らしいところですかね。たとえば、おなかがすいてる時は必死にアピールするくせに、エサが気に入らない時は、嫌々食べるんです(笑)。わかるんですよ、“しゃーないなー、食ってやるよ”みたいな反応をしているのが(笑)」

――ペアの絆も強い?

「夫婦間に限らず、親子関係でもそうですね。基本的に群れで生活する魚なんですが、稚魚が生まれてすぐの時などは、父親が必死になってわが子を守ろうとする。そんな子育てのシーンを観察するのがとてもわくわくするんです」

――単に観賞用ではなく交配も?

「そうです。ディスカスの存在を知って興味を持ち始めたのは幼稚園のころですが、そのころからすでに交配に興味がありました。当時はまだ飼える年齢ではなかったですが、自分で図鑑などで調べつつ近くのアクアショップでも色々と教えてもらうなどして、どんどん深みにはまっていった感じです」

――本格的に飼育を始めたのは?

「小学5年生のころだと思います。自分の部屋はもうすでに水槽だらけで(笑)。ペアで飼って産卵まではいきましたが、孵化するまでには至りませんでした。そんな簡単には産んでくれませんよね(笑)。結局孵化に成功するまでは1年半かかりました」

――当時の将来の夢は?

「魚類学者。ほかに考える余地はありませんでした(笑)」

知れば知るほど、研究すればするほど、ディスカスへの興味がどんどん強くなるのだそう。底知れぬ魅力があるといいます。「今自分がディスカスのユーザーとしてどのあたりのレベルにいるのか、正直わからないんです。まだまだ下のほうかも知れないし、かなりのところまで到達しているかも知れない。それがまたやる気を起こすモチベーションになっていることは確かです」。理学博士目前の佐藤君、返ってくる言葉はいつも冷静で客観的です。大丈夫、君なら何をしてでもやっていける(笑)!

 

◆「ゲキオコ」のパパにゴメンナサイ

 

水槽の数は大小合わせて全部で15個。オールアクリル。45×45×60㎝がディスカスサイズの定番なのだそう。飼い始めたころから使っている水槽もたくさんあります。実家の東京から大学のある山口へ、そして大阪へきて2回の引っ越し。よくぞディスカス愛を貫いてきたものだと、感心せざるを得ません。「段取りさえ踏まえれば、水槽の引っ越しなんて家具や生活用品と同じですよ」と簡単に言うけど(笑)

 

まずは一番大きい水槽。子育てが終わって養生中の親魚が10数匹。そして成長しきれなかった成魚も数匹。一番大きいサイズで16㎝はあります。なので、900の水槽でもいっぱいいっぱい。体調の変化など、ここにいる魚たちでコンディションはほぼわかります。

 

普通の観賞魚飼育より周辺器具が少なくて済むのも、ディスカス飼育の特徴です。水草や底砂がなくても、ライトがなくても大丈夫。ちなみに、フィルターは自作のスポンジフィルターを使用。「スポンジに付着するバクテリアが安定しているので、むしろこちらのほうがいいんです」。

 

普段は群れをつくって生活するディスカス。繁殖期でない今、群れをつくっておさまっているのがわかります。

 

この水槽は、最も注目度の高いディスカスばかりがいます。生後約5カ月。あと1年もすれば親魚として繁殖が期待されるものばかり。「こいつらにはすっごく期待してるんですよ!」。確かに部屋の中では一番目立つところにある水槽。特に、一般的に紅雀と呼ばれる独特の発色がどのような繁殖につながるか、期待が高まります。

 

おお~、まあなんと悩ましい色のライトカラー(笑)。「色を間違って買ってきてしまったんです(笑)。やっぱりアクアリウムはブルーでないとだめですよね」。あらまあそれだけのこと(笑)?ここには親離れさせたばかりの子どもグループがたくさん。いわば、幼稚園みたいなカテゴリーでしょうか。このグループも、いずれ有望な親魚に育っていくことでしょう。

 

さてさてこちらは、わが子がたくさん生まれて子育て真っ只中のパパとママを中心に平和にくらすファミリー水槽。。。といいたいところでしたが。「この間水槽を掃除した時、子どもを奪われると思ったオスが怒り狂ってしまって(笑)。以来、水槽に人が近づくだけで威嚇するようになってしまったんです」。あー、確かに。「ね、激怒(ゲキオコ)でしょ(笑)!?」

 

ごめんね~、写真撮らないといけないので。そんなに突つかないで~。子育ての邪魔して申し訳ない。「いやいや、そろそろ親子を離す時期にもきていますので大丈夫です」。でも子育てをママにまかせっきりにしないパパの姿勢。もちろんフリンなどとんでもなく、芸能人も政治家も見習わないといけません(笑)

 

自作のオーバーフローの装置。ひとつ下の水槽で、温度を一定にしたろ過済みの水をつくって、4本のパイプで上の水槽に供給する仕組みです。オーバーフローというと海水魚のイメージが強いですが、「オーバーフロー水槽のほうが全体の水量が多いので、水質と水温が安定するのでいいんです」。

 

おっと、この水槽はわけあってNGなのだ(笑)

 

ディスカス以外にも水槽が数本。ネオプロローガスレレウピィ、コンビクトシクリッド、セベラム、トロフィウスモーリーなど、南アフリカのタンガニイカ湖やアメリカに生息する魚を集めた水槽も。これじゃ水槽がいくつあっても足りない気がします。

そういえば、以前住んでいたところでは水槽が足りなくなり、何と風呂場にディスカスを“放流”していたことも。いくら水槽が足りないからといって、バスタイムを犠牲にしてまでディスカスに尽くしてどうする(笑)?「友達のうちのお風呂を使わせてもらってました」。お友達も、とんだとばっちりをくらってしまうハメに(笑)。ハンパないディスカス愛。そこまでやるか的なエピソードは、数知れません。

 

◆失敗は成功の始まり

 

そんな佐藤君ですが、失敗談も数知れず。高校生の時、お正月にお年玉を握って横浜へディスカスを買いに出かけた時のこと。「ショップ寸前のところで祖母から電話があったんです。“家が水浸しじゃないの!!!”と。そこでハッと気づいたんです、水替えの途中だった!って(笑)」。しかもこんな緊急事態なのに、ここまできて引き返すわけにはいかないと、「とりあえずショップまで行って、ディスカス買って帰りました」。いかなる緊急事態であっても動じず、目的だけはきちんと果たす責任感のある性格(笑)。でないと100匹以上も面倒見きれません。

こんなこともありました。大学生のころ、エサ用にミジンコを沸かしたことがありました。ところが「不覚でした。水にボウフラがすみついてしまい、結果的には蚊が大量発生してしまって、部屋に無数の蚊との共同生活を余儀なくされたんです」。水槽があるので殺虫剤も使えず、「蚊に刺されまくった夏を送りました(笑)」。話を聞いてるだけでも痒くなってきます(笑)。それもこれも、愛するディスカスのため。今も部屋では殺虫剤は使わず、エアコンはすべてディスカスのいる部屋限定。「夏は暑く夜は寒い寝室で寝ています(笑)」。ディスカスのためなら自己犠牲もやむなしという強靱な精神力。もう尊敬してしまいます(笑)

 

そんな佐藤君が、飼育について興味のある話をしてくれました。失敗は成功の始まり(笑)。もちろんこれも本邦初公開。わかりやすくまとめましたので、ディスカスを飼育しているユーザー必見です。

 

☆大雨あるいは長雨のあとの水替えは要注意

先日の台風のような大雨が降ったり長雨が続いた時は、川の水質が変化するそうです。このため、上水道の浄水場を経由した水であっても、水質はさほど変わらないとのこと。「決まって魚の調子が悪くなるんです。体の色が普段より黒くなるのですぐにわかります」と。人間にとって恵みの雨であっても、ディスカスにとってはあまりよくないのかも知れません。佐藤君の経験則ではありますが、みなさんもぜひ注意してくださいとのことでした。

 

☆軟水化するためにイオン交換樹脂が最適

 

子育て中の水槽に入れられたイオン交換樹脂

ディスカスに軟水が適していることは知られていますが、そのためにはイオン交換樹脂がいいそうです。イオン交換樹脂。。。こんな言葉、初めて聞きました(笑)。ちょっと調べてみましたが、水処理用品のひとつのようです。そんなに高価なものでもなく、ネット通販などでも入手可能です。ぜひお試しを。

 

☆ブラインシュリンプには栄養強化剤を

ブラインシュリンプを稚魚の主食に使用している人は少なくありません。この場合、栄養強化剤を添加するのがオススメだそう。DHAが主原料の栄養強化剤は、体調がよくなるだけでなく、群れ行動などの面において社会性が高い魚に育つらしいです。「つまり健康で頭のよい魚に育つわけです」。これもぜひ実践してみたいですね。

 

☆稚魚の生存率を高めるアスタキサンチン

孵化した稚魚が、いかに健康に育ってくれるか。繁殖を重視している人にとって、これは切実な問題です。そんな時役に立つのがアスタキサンチン。観賞魚用にも市販されていて、卵を産む魚をアスタキサンチンで色揚げしてから繁殖させると効果があるそうです。これによって稚魚も元気に。これも試してみる価値ありですね。

 

ちなみに、これらのノウハウは水産養殖で使われている技術の中からヒントを得て、佐藤君自身が実践しているものです。大学が水産系だったこともあり、在学中の研究で身につけたノウハウなのでしょう。「もちろんマル秘テクニックもありますが、大切な人から教えていただいたものなので、ここでは言えません」。限りなく律儀な男でした(笑)

 

◆ディスカスは自分の人生そのもの

 

――もしディスカスに出会ってなかったら?

「今の自分はないと思います」

――やっぱりチャラ男ではなかった(笑)

「人とめぐり合えたり、魚の勉強を始めたり、可能性がある限り追求していきたいのも、全部ディスカスがいてくれたからなんです」

――飼育以前の問題でもある?

「もちろん飼育も楽しいですよ。でもそれ以上に、ディスカスがぼくの人生そのものなんです。ぶっちゃけ、呼吸するよりディスカスのほうが好きなんですから」

――もはや神ってるよ(笑)

「いや、それくらいの存在なんです本当に。今やディスカスに感謝したいくらいなんです。でもやっぱりぼくって、変態かオタクでしょうか(笑)」

好きが講じて極めていくとここまでくるのだと、佐藤君に接していてついつい感動してしまいました。若干26歳の若者にしてやられた心境です。

もはや趣味とはいえない世界。とはいえ、商業ベースにする気なんてさらさらなし。もしディスカスでなくても、どんなことでも極めてこれたんじゃ?「いや、それは絶対ないです」ときっぱり。

 

一人の少年がディスカスと出会い、いつの間にか人生そのものに。大学院生活もあと数年でおしまい。その先に何が待っているのでしょうか。夢が叶って立派な魚類学者になった時でも、茶髪スタイルは変わってないのかな(笑)

 

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