2022/02/18イベント, ユーザー, 人物, 技術, 歴史

【ユーザー訪問】これからも長~い金魚づきあいを☆仏壇づくり&金魚飼育の2足のワラジを履く弓場裕秀さん(奈良県大和郡山市)

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金魚関連のイベントや養魚場の取材などで何度も訪れている、金魚のまち・奈良県大和郡山市。今回のターゲットは、仏壇仏具を製作販売するユミバ鳳凰堂・代表取締役の弓場裕秀さん。地域に根づいた事業を展開する傍ら、「金魚ストリート」柳町商店街の理事を務めています。「本社に金魚を泳がせているので、いつでも見にきてください」とのお誘いを受けての訪問となりました。

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◆創業は1300年前

大和郡山市のメインストリートともいうべき柳町商店街を通りすぎて、さらに南へ南へ。この道は、かつては商都として栄えた今井町を経て和歌山まで続いていた歴史街道でもありました。JR大和路線の踏切を渡ると、 今日の訪問先が見えてきました。

 

この場所で約40年。今でこそさまざまな種類の仏壇・仏具が主力商品ですが、ルーツは何と刀づくりの職人。しかも創業は1,300年前という、飛鳥時代の年表に刻まれていてもおかしくない歴史があります。時は流れて、明治時代へ。廃刀令を機に、鞘や拵えなど刀づくりで培ってきた漆塗りや独自の木工技術を活かして、職人たちは仏壇づくりに移行していったそうです。

 

ショールームにずらりと並ぶ仏壇の数々。中には、ン千万もするハイグレード仏壇も。生活様式の変化とともに仏壇のあるおうちは少なくなりましたが、モダンで明るい色の家具調仏壇や場所をとらないコンパクト設計の仏壇など、時代を反映したハイセンスな商品も印象的です。

 

ショールームの展示に使われているアイテムのひとつ、イタリア製のつるっつるの薄い大理石が商品を支えています。仏壇にイタリアンな風を吹き込んでもまったく違和感はなく、むしろマッチしていたのが不思議でした。

 

仏壇製作のノウハウを生かした、特許申請中の木製スピーカーも。小型スピーカーと独自の内部構造によって、広がりのあるサウンドが臨場感たっぷり。仏壇から派生したスキルはこんなところにも生かされていたことに感心しながら、スピーカーが奏でるクラシックの名曲「月の光」に耳を傾けていると思わずうっとりしてしまいました(笑)。

◆ショールームに金魚プール

こんなところに露天風呂?確かに温泉に見えなくもない(笑)。でもこれが噂の金魚プールだったのです。

 

キワメテ曰く、「ユミバ金魚プール」。それを愛しそうに眺める代表取締役の弓場裕秀さん。さすが大和郡山、根っからの金魚愛好家です。「子どものころ、雨が降ると金魚すくいに行ってましたから(笑)」。どういうことかといえば、昔は金魚養魚場があちこちに点在し、雨が降ると金魚池から溢れ出た金魚が川や用水路にたくさん泳いでいたそうです。子どもたちにとっては、格好の金魚すくいの場でもありました。噂には聞いていましたが、そんなのんびりとした時代もあったのですね。

 

「ざっと300匹くらいはいると思いますよ。今の時期は、あまり動かず底のほうでじっとしていることのほうが多いですが」。個体はらんちゅう、オランダ、琉金などがラインナップ。

 

ひときわ元気なグループを発見。江戸錦やらんちゅうなど、別の場所で飼育していた3㎜程度の針子が2㎝に成長した時点でこちらのプールへ。去年移住させたばかりですが、食欲も旺盛なことでこんなに立派に成長。よほど居心地がいいのでしょう、冬期でありながら安定のカラーリング。

 

ところで、この3つの正体は?離島のように見えますが。

 

「ああ、これは浄化槽のフタなんです(笑)」。ああ、なるほど。見事なカムフラージュ(笑)。浄化槽という機能を維持しながら、金魚プールらしい景観も保たれています。

 

もちろん人が乗っても大丈夫。あ、弓場さんに乗ってもらったらよかった(笑)。実はこれ、ただのフタではなくイタリア製の大理石。そうなんです、さっきショールームで見たのと同じ大理石の1枚ものを、目隠しのためのフタに使うとは。価格を聞くのがためらうほど、ブラボーというしかありません(笑)。

 

取水した水は、フィルターでろ過されプールへ。その後、浄化槽へと排出される仕組みのいわゆるかけ流し方式。温泉と同じです。プールをつくってからすでに30年が経過していますが、大きなトラブルもなく金魚たちも「弓場ファーム」で順調に育っています。

 

それにしても立派な体格。しかも冬なのに元気。プールにいる金魚たちの中には、2年前から柳町商店街活性化のために行われている「金魚ストリート事業」へ提供された個体も少なくありません。まさに地域密着型のアクアスタイルです。

◆ニオイを抑制する「魔法の水」

ショールームのさらに奥まったところにはスクエアな金魚水槽が。90×90㎝のアクリル製オーダー水槽。「飼育し始めた時の個体は指先くらいの大きさでしたが、3年経ってこんなに大きくなりました」。こんなに立派な水槽なのだから、もっと目立つところに置けばいいのに、と思ってみたり(笑)。

 

オーバーフロー式で、仕組みに関しては弓場さんによるハンドメイドなのだとか。「なんでもつくれますよ~(笑)」と自信たっぷり。

 

こちらもヒーターなどの設備はなし。ただ、屋外のプールと違って空調が効いているせいで、真冬でも結構元気に泳いでいます。

 

おっと!すぐ近くには、一戸建てが一軒買えるほどのハイグレード仏壇が並んでいます。ついついここが超老舗の仏壇屋さんだったということを忘れそうになりました。これですね~、ン千万円する商品は。「2階にもっと高価な仏壇がありますよ(笑)」。いえいえ、一生縁がないと思いますので(笑)。

 

そして、数々の仏壇に混じって置かれている180㎝水槽には、メダカが数匹越冬中。

 

「実は支店にも水槽があるんです。今はコバルトルリスズメやカクレクマノミなどの海水魚が中心で、店内の池にはイワナやコイが10年以上棲んでいますよ」。聞くと、支店のある近鉄奈良線富雄駅周辺は水質がよく、淡水魚を飼育するのにも適しているのだそうです。「ただし、それまであった井戸の大半は水が枯れてしまったようですが、うちのところだけはまだ大丈夫なんですよ。ワッハッハッハ(笑)」。といつも豪放磊落なキャラの弓場さん。いつか支店のほうにもお邪魔させてくださいね。

 

「こんなアイテムもあるんですよ」と弓場さんが持ってきたのは、大きいボトルに入った液体と小さなボトルに収まった粉末。何ですかこれは。「バイオ酵素の働きでアンモニアを分解してくれる添加液なんです。生ゴミなどのニオイを元から断つだけでなく、以前堆肥に混ぜて野菜をつくったら大きく育ってくれて驚いたんです。嘘だと思ってるでしょ(笑)?私も最初は信じてませんでしたから、無理もないと思います」。

 

ニオイを完全消滅させると同時に、野菜を成長させる一人二役的な「魔法の水」。しかもノンオイルで無味無臭。もちろん人畜無害。あらゆるニオイの抑制に効果があるだけでなく、自然環境にもやさしいバイオ酵素なのだそう。

 

弓場さんの友人が開発に成功し、金魚プールにも試してみたところ特有のニオイがなくなりました。ということは、飼育水に使用すれば金魚も育つ?「そうなんです。食欲が以前より増えて体格もよくなりました。ワッハッハッハ(笑)」。どの個体も元気で立派なのは、これが功を奏したのかも知れませんね。

 

「アンモニアの分解が促進されるとあって、水槽の立ち上げ時にも重宝するかも知れませんよ。アクアだけなく、爬虫類やペットはもちろん、ありとあらゆるニオイを抑制しますから」と弓場さんが絶賛するオールマイティーボトル。現在はごくごく限られたところでしか販売しておらず、気になった人はぜひ弓場さんへどうぞ。

◆地元商店街の理事として

金魚が間近に見られるまちとしてすっかり定着した柳町商店街の金魚ストリートも、実は弓場さんが発案者でした。他府県から金魚を目的にやってくる観光客のためにも、商店街が率先して金魚をパフォーマンスしようと企画して実現したものでした。約30の加盟店がこぞって店先に展示される金魚たちの中には、弓場ファーム出身の個体もあったりします。

 

また、龍神くん祭で去年初めて行われた「全国ポイ投げ選手権」を発案したのも、弓場さんでした。あまりにもシュールなイベントでしたが、もしかしたら全国規模に広がる可能性だってないとはいえません。ユニークな金魚関連イベントを立ち上げたり継続させていくことで商店街の活性化につながれば、との思いが人一倍強い弓場さんが提案・実現した結果でもありました。

 

さらには、経済産業省主催の「はばたく商店街30選2021」では、全国17000もの商店街の中から活力のある商店街として選出されるなど、商店街活性化のための各種事業が高く評価されました(弓場さん写真提供)。

 

刀職人から仏壇づくりを経て、商店街活性化をも推進。折しも市庁舎が今春完成し、将来的にはリニアの停車駅も視野に。「大和郡山は、少しずつ面白くなってきましたよ。ワッハッハッハ(笑)」。弓場さんの金魚づきあいは、これからも続きます。

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