関東エリアの中でもアクア激戦区といわれる埼玉県。そんな中で勝ち残っていくためには、アクアに関する質の高いノウハウもさることながら、初心者でも女性でも気軽に立ち寄れる雰囲気もウリのひとつに。去年創業25周年を迎えたアクアショップイブ。平成10年に急逝した前オーナーの父親・福田勝彦さんの後を継いだ長男の良一さんは、「あまりにも急だったので、色々覚えるのは大変でした。だって、それまで魚にまったく興味がなかったんですから(笑)」。店長として、今の場所に移ってきて10年ちょっと。そんなに経っていることを感じさせない、いつもフレッシュな気持ちで店を切り盛りする夫婦の姿がありました。
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◆目指したのは「誰でも気軽に入れる店」
埼玉県越谷市の通称「市役所前通り」に面した一角。さほど車の通行量も多くなく、比較的のんびりとしたファームな風景が広がっています。近くには、日本最大級のいちご農園があったり、日本一大きい大型ショッピングモールがあったりのシチュエーションです。
かつては別の場所にありましたが、「雰囲気が時代にそぐわないと思って」(福田店長)移転オープン。たまたま空き倉庫だった建物でしたが、10年以上も経過していることを感じさせないフレッシュテイストが印象的です。
「全国的に有名なあのカジュアル衣料販売店をイメージしたんです。どんな感じの店にしようか考えていた時、最初は色々なアクアショップを見て回ったのですが、なかなかピンとこなくて」。結果、アパレル関連の店舗を参考にしながら、路面店としてもふさわしい今のイメージに落ち着いたそうです。夏の青空ともベストマッチング!
エントランスの両サイドには椰子の木が置かれるなど、トロピカルな雰囲気も。開口部が大きくて明るくて、ショップ内は最大6mもの天井高の余裕が。こんな雰囲気のアクアショップなら、誰でも気軽に入りやすそうです。
店内のアイキャッチャーなプランツの数々。今ウワサのチランジアなどのエアプランツが各種色々と。誰ですかー、こんなおしゃれなセンスのショップにしたのは(笑)。
◆内助の功にリスペクト
ショップ一押しはオーストラリアプランツ。オージープランツなんて初めて聞きました。特殊な土を使わないといけないこともあり、国内で取り扱っている店も少ないのだとか。「2019年にはオージープランツを充実させていこうと、年間目標を立てて取り組んできた結果なんです」。1年ごとに計画を立ててそれを実現させる。なかなかできないことですね。
女子の間で人気の色鮮やかなハーバリウム。知り合いがつくったものを販売し始めたところ、意外なことに男性に大ウケ。普段から買っていく9割のお客さんが男性で、母の日やクリスマス前になると売上は倍増。今の時代、どこで何がヒットするか、やってみないとわからないものです。
プランツを中心にした、まるでおしゃれな雑貨ショップのようなノリ。これらはほとんどグリーンが大好きな奥様の仕業だと聞いてまたビックリ(笑)。誰でも気軽に入れるショップにしようと、奥様が積極的に提案した結果なのだそうです。要するに、ダンナが魚に夢中になっている間にヨメがプランツを物色中という青写真。お客さんもゆっくりできるし、リピーターも増えるわけですね。これぞイブのダブル効果!いやあ、奥様リスペクトしちゃいます(笑)
いかにもプランツ女子のハートをつかみそうな、奥様手書きのPOPも印象的です。特にコメントの最後の「♡」にキュン(笑)
◆努力すれば神様は放っておかない
エントランスまわりのインパクトがありすぎて、アクアをご紹介するのがすっかり遅くなってしまいました(笑)。スペース的には、生体と用品は4:6といったところでしょうか。エントランスは人の出入りが多いので、室温が比較的安定している奥側が生体ゾーンとなっていて、あえて照明はやや暗めの設定です。
オープン前、お客さんがゆっくり回遊できるような余裕のある店にしたかったという通り、生体・用品ゾーンともに歩行空間はゆったり。ここまで広ければ、メンテだってやりやすいことでしょう。
ちなみに、スタッフは福田店長と奥様との2人のみ。えー、こんなに広くて大変じゃないですか?「大変です(笑)。店舗だけでなく、老人福祉施設や動物病院、幼稚園などのメンテもやっていますから」。若さのパワーって素晴らしい(笑)!今まで誰の力も借りずに2人でうまくやってこれたという自負もあるでしょうから、人事は今後の課題になるかも知れませんね。
とにかく水槽がきれいです。とはいえ、これだけの数の水槽をメンテするのは結構大変だと思いますが。
「最初は魚のことはまったく知らなかったんですよ~。だから必死で勉強しました。問屋さんやメーカーのかたをつかまえては、根堀葉堀と(笑)」。知ったかぶりもせず、謙虚で直球勝負のところがよかったのでしょう、その経験が積み重なって今ではアクアのスペシャリストに。ネットでの評価も高く、知識が豊富でとても親切に教えてくれるというのが大方の評価。もしアクアショップを引き継いでなかったら、たぶんそれまで通り自動車関係の仕事をしていたという福田店長、大変身の巻でした(笑)
◆イブといえばシクリッドでしょ!
さてさて、イブさん最大のウリは、何といってもシクリッド。すでにご存知のかたもいると思いますが、シクリッドのことならイブへ、といわれるくらいすっかりショップの代名詞になりました。代名詞=特徴=ショップの個性=明確な販促のポイント。ここ、大事ですから(笑)
実は、父親・勝彦さんもシクリッドのスペシャリストだったそうです。といっても、当時は輸入ルートがなく東南アジアからの輸入ものがほとんどだったので、福田店長が引き継いでからはシクリッドの本場ともいうべきアフリカンシクリッドにブラッシュアップ。今ではドイツブリードやワイルドが主流となりました。
しかも、入荷後は最低1~2週間をかけて水質と水温だけをチェックしながら生体を管理。薬を使わないトリートメントによって、福田店長が大丈夫と思えるまで販売しないという徹底ぶり。結果、関東はもとより高品質のシクリッドを求めて全国から引き合いが多く、つい最近も出張を利用して来店してきた広島のサラリーマンもいたそうです。
ごらんの通り、もう売れちゃいましたよ~的な目印もいっぱい(笑)
ここでほんの少し、アフリカンシクリッドギャラリーを。売り切れていたらごめんなさい(笑)
まずはこれ、キラキラしたナイスバディが美しいアウロノカラ スチュアートグランティ チルンバ(ドイツブリード)。アウロノカラ属では一番普及しているタイプで、岩礁地帯と砂地が交じりあった中間地帯に棲んでいます。
コパディクロミス ボルレイ ンカンダ(ワイルド)。おとなしく飼いやすい人気種で、比較的温和な性格で混泳も可能かもしれません。
プセウドトロフェウス ゼブラ マイソニー リーフ(ワイルド)。アフリカ・マラウィ湖で最も種類が多いのですが、縄張り意識が強く混泳には注意が必要です。
クセノティラピア パピリオ キビリ サンフラワー(ドイツブリード)。砂泥底に棲んでいて、砂を口に含みエラから吐き出しながらエサを探す姿から、サンドシクリッドとも呼ばれています。ドイツを中心にヨーロッパ各国で人気があり、孵化した稚魚はオスが子育てをするという特異な繁殖スタイルもユニークです。
フロントーサ ブルー ムピンブェ(ドイツブリード)。1992年に新しく発見された種。ダイバーの手からエサを食べるほど人懐っこく、物怖じせず姿を隠すこともほとんどないので、ファンも多いのだとか。
マラウィ湖に棲むアウロノカラ ステベニィ ウジスヤ(ドイツブリード)。どれもこれも、独特のカラーリング。どちからというと、タンガニイカ湖のシクリッドよりマラウィ湖のシクリッドのほうが、大型で発色のきれいなものが多いようです。鮮やかでおしゃれ。そして、水槽で飼育するにはちょうどいいサイズ感。シクリッドにハマっていく人の気持ちがわかるような気がします。
こんな子もいました。観賞用熱帯魚として人気の高いヨーロッパブリードのアピスト エリザベサエのペア。水質の変化には敏感なため上級者向けといえます。
これはまた美しい!オレンジフィン ロケットシャークバルブ(ブラックのラインが細いほう)にレッドライン トーピードバルブ(ブラックのラインが太くさらにオレンジのラインがあるほう)。よく見ていないとどっちがどっちかわからなくなってしまいます(笑)。いやあ、取材とはいえ名前を記録するだけでも大変です。「でしょ(笑)?」。はい、オープン当初の大変さがよ~くわかりました(笑)
◆番号札導入でサービス向上
魚以外にこんな水草も。福田店長のおすすめ。国産で発根系の水草「リベラプランツ」。無農薬栽培で、出荷時に虫取り処理などのメンテ済み。根張りも強くかなり丈夫なのだそう。「やっぱり自分が使ってみていいと思ったものを売りたいですからね」。説得力あります。
各種メダカや金魚も。平日は比較的高齢者が多いそうで、もうちょっと早く開店してくれかたらね~というお客さんが結構いるのだとか。う~ん、平日11時オープンでも遅いんでしょうかね(笑)
KOTOBUKIのフィッシュフード「FLY MIX」。食いつきがよく、消化不良もいいとお客さんからも好評だそう。前よりも成長が早くなったという声もあったそうで、健康志向の時代は確実に魚にもやってきています。
◆え、無料で水質検査も?
おお~、新型インテリア水槽「ビュース」も。そうですね、ショップではこうやって置いてもらえるとさらに雰囲気がよく伝わります。特に、レッドをチョイスしたセンスにも拍手!
可愛いチビッ子用のビーサンかと思いきや、キーホルダー。このほかにも各種アクセの数々が。どれもこれも知り合いのお友だちがつくったというオリジナルグッズ。なんだかホッとしちゃいます。
ん?これは一体?「さまざまな目的を持ってこられるお客さんがいらっしゃるので、順に対応するのに不公平があってはいけないと、思い去年からやり始めました。この番号札を導入してから、接客がスムーズになりお客さんからのクレームも激減しました」。まさに問題と対策。頭を抱えていても、何も生まれませんからね。
ターゲットは、初心者から中級者。特筆すべきは、水質検査を無料で対応している点。どうしても飼育がうまくいかない人のために、水槽の中の水を持ってきてくれれば福田店長自らがテストを行い、適切なアドバイスを行っています。「さらに調子が悪くて気になる魚は、動画で撮ってきていただけると助かります」。これはうれしいサービスです。アドバイスによって原因がハッキリすれば、こんな頼もしいことはありません。お店の信用にもつながります。もしかしたら、自動車のメンテを長年やってきた経験がこんなところにも生かされているのかも知れません。アッパレです!
まさに二人三脚のアクア人生。店にも商品にも魚にも、思い入れはたっぷり。だからこそ、魚が快適にすごせるよう水換えやメンテなどにも力が入るのでしょう。「そういえばうちのヨメ、可愛くてしょうがなかったハリセンボンがこの間売れた時は泣いてましたもん(笑)」。
商品を単なる商品と割り切れないところに、深い愛情を感じずにはいられません。生体を扱っている以上、そんなシンプルな感情が品質を左右される重要なファクターになっているのかも知れません。
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