「飼育ではなく飼養」「飼うのではなく共存」。そんなモットーを掲げる爬虫類&アニマルカフェRUDE(るうど)のオーナー・今井裕太さん。ここでは、爬虫類以外の生きものも各方面から保護されています。生きものの種類が変わっても、救える命はすべて救いたい。そんな思いを寄せるのは、保護犬や保護猫だけではありませんでした。
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◆頼もしき今井さんの右腕
今井さんをしっかり支える本日のお手伝いスタッフをご紹介。(左から)まずは店長のゆりかちゃん。今井さんの学校の後輩で、それまでは爬虫類などまったく無縁でした。前職は何と私鉄の車掌さん。昔は電車の安全を見守り、今は動物たちが安心して生きていける社会を目指しています。続いて看護学生のみくちゃん。唯一、ペットショップ勤務経験のあるスペシャリスト。毒のある生きもの以外はすべて触れるという頼もしき爬虫類大好き女子。そして10代のそなちゃん。おうちにはイヌやウサギのほか、コーンスネーク、はたまたメダカなど、家族全員が動物好き。そしておうちにゴキブリがまったくいないのは、アシダカグモと共存している証拠です。将来は生物学者志望。何を聞いてもハキハキテキパキ返事がかえってくる女子でした。
右も左も、女子ばかり。近頃の女子力の源となっているのは、もしかしたら爬虫類の存在かも知れません。なぜ女子は爬虫類に惹かれるのか、わかる人があったらぜひ教えてください(笑)。
◆グリーンパイソンまで人馴れ
世間ではかなりヤバいやつといわれているグリーンパイソン。さすがにこれは慣れないでしょう?「いや時間をかければ大丈夫ですよ」と今井さん。
ごらんの通り、今井さんの手にかかればヤバいやつもめっちゃいい子に。これには驚きました。
さらには、この日初めて来店したという男子にも従順。いや、これはすごい。それにしても初来店の男子、怖さ知らずもいいところです。知らぬが仏というべきか。
よく見たら、結構可愛い目をしています。
◆ほかにもいるいる保護なんちゃら
そもそも爬虫類は、どのくらいで慣れるものなのでしょうか。「個体差はありますが、自分の経験ではレオパだと早くて数週間、ブラッドパイソンで2~3カ月、ラフネックモニターで半年、グリーンパイソンだと1年以上はかかります」。
これまで慣らしてきた動物は数知れず。普通なら数週間でもギブアップしてしまいそうですが、覚悟を持って動物たちと向き合うのは愛があるからこそ。これ以上のものはほかにありません。
ほかにも今井さんの手によって慣らされた子たちがいます。日本では害鳥指定されているハシブトカラス。ろくに飛べないでいた中びなだったころ、足と羽根が折れていた状態で発見者を介して保護されました。おそらく、車に轢かれたものと推察。ケガは治りましたが、さすがに野生には戻れません。なので終生飼育の道へ。保護したからにはこの先30年は世話をすると決めたのも、今井さんの覚悟にほかなりません。
ケージの中とはいえ、めったに見ることのないレースバト。飼育者が1羽だけ奇形の鳩を発見。残念ながらレースはできませんが、命を何とかつないでいきたいとの思いで里親を探していたところ、今井さんと出会いました。本来なら優れた飛翔能力と帰巣本能で数百㎞飛ぶのも珍しくないほどクオリティーの高いレース鳩。運命に左右されながら、今ではカラス同様終生飼育が行われ余生をすごしています。
精悍なイメージのハヤブサですが、かなりおとなしい。大空を舞いながら獲物を狙う戦闘機のようなキャラとは思えません。来月には1才になるそうですが、別のところで趣味で飼われていたものの飼育そのものに挫折。知り合いの鷹匠さんを通じてここにやってきました。犬や爬虫類だけでなく、害鳥から猛禽類まで保護しているアイテムは実に多彩。正しい知識と豊富な経験がなければ、これ絶対無理です。なぜそこまで?「救える命は救っていきたい。ただそれだけなんです」。いやはや、口でいうのは簡単ですがなかなかできることではありません。
◆無類の動物コーディネーター
原則、店内の動物たちのハンドリングはおおむね可能。ただし、機嫌が悪い動物やリハビリ中の動物はNG。生体販売も行っていますが、お客さんのりえさんのように欲しい動物のオーダーもピンポイントでOKです。
――爬虫類のイメージが少し変わりました。
「ヘビやトカゲなど、気持ち悪い・怖い・毒があるなどのイメージを昔から植えつけられてきましたからね(笑)。今もなかなか受け入れられない人のほうが多いと思います」
――しかもこんなに人に慣れるなんて思ってもみなかった。
「ゆっくり時間をかけてあの子たちと向き合う。それだけなんですけどね。そうすれば、あの子たちが持っているポテンシャルは引き出せるはずです。たとえばイグアナを慣れさせるために、タオルを口にくわえさせることがあります。最初は激しくタオルを噛むのですが、何度か繰り返していると噛まなくなるんです。イグアナにとってタオルを噛ませられるのはイヤなことなんです。そうすることで、噛むイコールイヤなことと認識するんです。かしこいですよ、あの子らも(笑)」
――なるほど、だから飼うには「覚悟」が必要と。
「飼育という言葉をよく耳にしますが、自分的には飼育ではなく飼養だと思っています。人が養ってあげなければ、誰が養うのだ、と。そしてあの子たちを上から目線ではなくあの子たちと共存していくのだという覚悟も必要なんです」
――店名の「るうど」とはどういう意味?
「英語でRUDE、アメリカでは悪口なんです。人を蔑む言葉で、最低だとか、無礼だとか。最低なんだから、あとは上へ上がるしかありません。自分に対しての誓いというか、店名に掲げて発奮材料にしたかったんです」
――もうオーナーというより、コーディネーターのよう。
「同じ思いを持った人が集まれる場所をつくりたかったんです。採算は度外視です(笑)」
税理士とカフェオーナーとの二足の草鞋。コロナ禍の影響もあり、現在の来店は完全予約制。もちろん人数制限も行われていますが、来店を希望する人はかなり多いようです。
それぞれが夢見る、自分だけのジュラシック・パーク。何かと世知辛い世の中ではありますが、愛はやっぱり無償のものだと気づかされました。
るうどに愛はあるんか~?
るうどに、愛は、あるんか~!?