去年4月に発足したばかりの土佐錦愛好家グルーブ「大和郡山とさきん秀鱗会」。名称こそ金魚のまち・大和郡山の名がつけられていますが、メンバーは市外の人ばかり。一体どうして?今にも泣き出しそうな空にハラハラしながら、同会主催の「第2回春季品評会」にお邪魔してきました。
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◆車6台分のスペース
会場となったのは奈良県・大和郡山市商工会館「まいどほーる」北側駐車場の一角。ここなら車も停めれるし、会場は目と鼻の先。よほどのことがない限り、満杯になる心配もありません。駐車料金も安い!知らんけど。
近鉄郡山駅やJR郡山駅から歩いても10分少々。結構便利。
このあたりは北郡山といわれるエリアで、ある意味金魚のまち・大和郡山の表玄関でもあります。たぶん。
現着。午前8時を少し回ったばかりなのに、品評会の会場はすでに出来上がっていました。
駐車場に車を停めるスペース6台分が会場。おお、これはうまく考えましたね。イベントの規模に応じてフレキシブルに対応できます。
雨対策も万全。まるでオートキャンプのたたずまい。今時稀少な未舗装の駐車場ではありますが、そんなこともご愛嬌。
品評会に必要なものは全部自前。
だけど、どこかアットホーム。ピリピリ感がまったくなく、みなさんゆる~く楽しんでおられました。なんかいいな~、このフレンドリーな空気感。
金魚を撮ろうと思っても、ニットのシマシマがどうしても反射しちゃうんだよね~。
でもちゃんと会報もあります。ポリシーや会則、活動報告などがきちんと列記され、結構なページ数。去年発足したばかりの会だとは思えないほど、毅然とした決まり事も盛り沢山。しかも明瞭会計。これなら、某通訳のような金銭問題は絶対起こらないでしょう。
◆ソコにこだわるキワメテ
そもそもの発端は去年地元のイオンモールで開催された金魚フェス関連イベント「第5回金魚品評会」でした。
同イベントで土佐錦2匹を初出品し、小の部・土佐金の部で優勝・準々優勝を果たしたのが、この会のメンバーの一人だったのです。会発足後、わずか半年ちょいの快挙でした。
大和郡山が金魚で有名なのは周知の事実ですが、金魚の愛好会があるとは知りませんでした。いや、あってもおかしくないんです。それが当たり前だと思ってましたから。
とはいえ、メンバーの中に大和郡山市在住者は一人もなし。え、どういうこっちゃ?引っかかったのがそこ。これはちゃんと話を聞いて事実確認をしなければ。という理由もあり、今回の品評会にお邪魔させてもらった次第です。キワメテ的こだわり。
◆意外なところで土佐錦ラブ
早速この日のメンバーに集まってもらいました。右から藤田さん(姫路市)、岡尾さん(伊丹市)、宮地さん(大阪市)、一人置いて馬渡さん(奈良市)、中村さん(座間市)。ほらね、地元に住んでいる人が誰もいません。唯一、左から3番目の森川さんだけが地元在住で、このかた実は地元では誰もが知る土佐錦のブリーダーさん。会のメンバーではないものの、メンバーを刺激し土佐錦愛に火をつけた師匠だったのです。
ひょんなことでつながった大和郡山とのパイプ。会の名称に大和郡山の4文字が刻まれているのは、そんな巨匠・森川さんに対して払った敬意の表れでもあります。いやいや、土佐錦愛だけでなく、義理愛・人間愛にも満ちあふれていました。
ややもすると、自分が自分が的な行動に走りがちな時代にあって、かつて受けた施しや初心を決して忘れない姿勢が、この会には存在していました。ワンダホー!
どうやればスマホできれいに撮れるのか思案しているメンバーがいたり。
SNSでライブ配信しているメンバーがいたり。
久しぶりに会ったメンバー同士がのんびり談笑したり。
2024年問題に頭を悩ますユニークなヘアスタイルのメンバーがいたり。
ゆる~く、ゆる~く。金魚愛好会に対して思っていたイメージとはまったく違いました。
「うちの敷居は地面より低いですから(笑)」と藤田さん。おもろいやんそれ。とかく難易度が高く個性の強いブリーダーが多いと思われがちですが、ここでは子どもでも女性でも初心者でも垣根は一切なし。「みなさんにゆる~く楽しんでもらえればそれでいいんです」(藤田さん)。そうですね、それが愛好家の原点ですよね。
◆産卵時期に立ち会うこと
会が扱っているのはほぼ土佐錦。尾びれの根元がキラッと輝いているのが大きな特徴です。この日の結果は次の通りでした(◯は加点、△は減点)。
◎2歳の部1位(宮地さん評)
・頭がとがっている◯
・比較的左右対称◯
・丸みがある◯
・尾が成長して大きくなる可能性がある◯
◎同2位(同)
・金座(尾の付け根)がいい◯
・1位より尾が乱れている△
◎同3位(同)
・かたちがいいので親魚として期待大◯
・尾芯が重なってしまっている△
◎親魚の部1位(藤田さん評)
・尾のかたちが整っていて水平◯
・尾芯の一部がなくなり、さくら尾の状態になってしまっている△
・尾にシワがある△
◎同第2位(同)
・渡り(尾の前方部分)が前がかりになっている(体の大きさのわりには前方に出すぎている)△
◎同第3位(同)
・止まった時の姿がきれい◯
・泳いでいる時右に頭をふる△
・尾の先がまくれている△
・袋が切れてさくら尾△
・お腹がもうちょっと出て欲しい△
総体的には、①目先がとがっていること②金座が大きいこと③左右対称であること④体が丸いこと⑤尾芯が重なっていないこと⑥尾先が開いていないこと、などが高評価の条件だそうです。
このほか、金座が小さいと尾を支え切れないので尾が下がってしまうことがあったり、2歳魚で尾芯が重なってしまっていると大人になっても尾が開かなくなるなど、今まで知らなかったエピソードも聞かせてもらいました。審査ポイントは、品評会によって微妙に違ったりすることもあるそうですが、泳いでいる姿も静止している姿も審査のポイントになると聞いて、興味がますますわきました。
この日はたまたま産卵してしまったメスがいて急遽人工授精が行われ、受精卵を100個以上も見ることができました。4月というとまさに産卵シーズン。いよいよ金魚も本格的なシーズンを迎えました。
土佐錦ではないですが、よく見るとオスの集団がひたすらメスを追う微笑ましいシーンも。人間の世界だったら一発アウト。このシーズンならではの光景です。「理想はオス3匹に対してメス1匹なんです」。あー、人間の世界でなくてよかった。
◆会が目指す意外な理由
7月21日(日曜)には、 同じ場所で品評会が行われます。ただし今度は一般投票で行われる「第二回宮地杯」。初代会長であり、会の功労者でもあり、目付役でもある宮地さんにちなんだイベントのようです。お近くのかた、いやいや、遠くても興味のあるかたはぜひ足を運んでくださいね。
のんびりとした、いい会ですね。「そうでしょ(笑)?あまりガツガツしないでみなさんまったり楽しんでいます」。マニアックな感じが全然しません。「自分が勝ちたいとか主張したいとかいうより、お布施の心を持って取り組んで欲しいと思っているんです」まったり楽しみたい人向けですね。「会計もバッチリですから(笑)」と宮地經八さん。土佐錦の魅力だけでなく宮地さんの人柄も、会の大きな原動力になっています。
発足して1年ちょい。でも活動の一環として行われる品評会はすでに2回行われ、そのたびにメンバーみんなが大和郡山に集結しています。
決して近くではないメンバーもいるのに、わざわざここへくる魅力。「夜行バスできました(笑)。だって楽しいんですもん!」と屈託のない笑顔で話すシマシマのメンバーも。
午前中お邪魔していて、やっとわかったこと。この人たちは、きっと土佐錦より人が好きなんだな、と。決して入賞や土佐錦の販売が目的ではなく、土佐錦を飼育する人たちの喜ぶ顔が見たいのだなと確信した次第です。
「次回もまた遊びにきてくださいね」と藤田さん。取材にきてください、ではなく遊びに。2月の寒波で雹の被害に見舞われ、マイカーがボッコボコになってしまったというのに。