去年の夏、金魚のふるさと大和郡山市が行った「全国金魚のお部屋・おうちデザインコンテスト」。
全国でも例をみないユニークなイベントに、329数の応募がありました。
その結果、秋にはすべての受賞者が決定し、これにて一件落着。
が、しかし!
イベント主催者である大和郡山市が「最優秀賞の作品を製品化します」と約束したことを、「キワメテ!水族館」は決して忘れてません(笑)!
かくして2月18(土)、地元大和郡山市で製品化された「金魚のおうち」の表彰式と製品のお披露目会が行われました。
◆駅員の疑視線に耐えた?製作スタッフ
まずはおさらいから(笑)。事の発端はこれ。大和郡山市が夏に公募した、1枚のポスターから始まりました。小学生から大人まで、老若男女に関係なく幅広い年齢層の応募があったそうです。
去年行われた「第22回全国金魚すくい選手権大会」の会場でもこんな特設コーナーが。出場選手はもちろん、応援する家族や知人・友人もこぞって応募しました。
そして、最優秀作品に選ばれたアイデアがこれでした。え?それって、自動改札機のかたちをした水槽?それとも、水槽のかたちをした自動改札機?まあどっちでもいいんですけど(笑)。それにしても奇抜な発想。このアイデアのきっかけはどこにあったのでしょう。
ここは近鉄郡山駅。平日朝夕の時間帯は、通学のために駅を利用する高校生も多いのが特徴です。そうなんです、今回の屋外部門で最優秀賞を受賞したのは、この最寄り駅から地元の高校に通う現役高校生だったのです。「毎日利用する駅の自動改札機に、金魚が泳いでいたら楽しいだろうな~」と。うんうん、改札機に金魚が泳いでいたら絶対毎日、しかも1日2回は必ず見れますよね~。
それぞれ賞が決まり、製品化することが本決まりとなりました。めでたしめでたし。ところが困ったのは大人たち。「こんなん、ほんまにつくれるんかいな」「パッと見だけの問題やから、ハリボテでもええんちゃう?」などといった、レベルの低い会話が周囲で交わされたかどうかは定かではありませんが(笑)
ちなみに実際に製作にあたったスタッフは、近鉄沿線の駅を何度もリサーチ。カメラを持ってさまざまな角度からパシャパシャ。そのうち、駅員さんから不審そうにジロジロみられるようになったとか。鉄道オタクならぬ、自動改札機オタクと決めつけられることも覚悟の上の、実に勇気あるリサーチでした(笑)
構想段階で、何度も何度も描かれたラフスケッチの最終形。製品化をイメージして、だんだん現実に近づいていきます。もうスタッフに迷いはありませんでした。たとえ駅員さんに怪しい目で見られようが、大人げないと言われようが(笑)。「本物と見間違うほどのものをつくってやろうやないか!」。力強い決意のもと、大人たちの本気モードにスイッチが入り、プロジェクトが本格的に動き出したのでした。
◆ついにお披露目「きんぎょのまち 郡山駅」
月日は流れて、春の訪れにはまだ少し早い2月18日(土)。いよいよお披露目の日がやってきました。セレモニーの会場となったのは、やまと郡山城ホール。正面玄関には真っ白な布幕で覆われた得体のしれない物体も、黙ってオープニングのタイミングを待っていました。
セレモニーでは、同イベントの実行委員長ほか、上田 清・大和郡山市長ら関係者も多数出席。緊張感の漂う雰囲気で、粛々と進めてられていきました。
表彰式を控える受賞者のみなさん。どことなく緊張気味のような。そりゃそうですよね、「遊び半分で考えたことなのに、こんな大事になるなんて~」などといった心の叫びが聞こえてきそうです。いや、あくまで想像ですが(笑)。
そして表彰式へ。トップで表彰されたのが、高校一年生の奈良市在住の高校1年生・大川詩央里さんだったのです。まだあどけなさの残るこの子が、奇抜な斬新なアイデアを出したがために大人たちを悩ませることになろうとは(笑)。
そしてついにお披露目となりました。セレモニー会場の脇に置かれた自動改札機型水槽は、アイデア当初より、大川さんの命名で「きんぎょのまち 郡山駅」と名付けられていました。
表彰式では、製品化された最優秀賞2点と特別賞をはじめ、デザイン賞を受賞したみなさんも加わり受賞者全員で記念写真。みなさんようやく緊張がとけた瞬間でもありました。みなさんお疲れさまでした。そして改めておめでとうございました!
セレモニーが終わると、ユニークな「金魚のおうち」を一目見ようと市民のみなさんがドッと。みなさん不思議そうに見入っておられました。さすがにきんぎょのまち・大和郡山だけあって、注目度は高いですね~。
テレビ局や新聞社などから取材を受ける大川さん。さきほどと違って、こういうシチュエーションは、生まれて初めての体験なのだそうです。
なおセレモニー会場でお披露目された水槽は、地元の柳町商店街の某所に3月に入ってから改めて設置される予定です。どんな感じで設置されるのか実に楽しみです。きっと商店街の目玉になること間違いないでしょうから、まちの活性化につながればいいですね。
◆和テイストの大人な水槽も
一方、屋内部門の最優秀賞は大和郡山市の中学生・保田麻衣さんが考案したこれに決まりました。題して「お昼寝水そう、金魚が1ぴき、金魚が2ひき・・・・」。聞いたところによると、弟が何気なく応募用紙を持ち帰ってきて、麻衣さんと弟、そしてお母さんの3人で応募したのだとか。弟君、お母さん、ザンネーン(笑)
一見なんの変哲もない水槽なのですが、実は底がアーチ場になっています。そこに顔を突っ込めば、金魚たちを下からながめられるというアイデア。この発想は、もしかして普段からおうちでもゴロゴロしてるから(笑)?
自分が考案した水槽を下から見上げるべく、まさにお昼寝。
――面白い?
「うん、面白い~」
――いや~、上からみても面白いよ~。
「キャハハハハハハハハ♪」
自動改札機ほど強烈なインパクトさはありませんが、今後は持ち運びが簡単にできる体験型水槽として、あちこちのイベントに引っ張りダコになる可能性は大です。
さらに特別賞を受賞したのが、大阪府河内長野市の物種祐佳さん。最優秀賞の受賞者は2人とも未成年者でしたが、物種さんは落ち着いた大人女子。受賞作品も、いかにも大人テイストが満ちあふれていました。
作品名は「せんすいそう」。扇子と水槽との造語で、タイトルからしてどことなくしっとりして品さえ漂っています。
こちらの製品も、スケッチ通り。真横からみると、本当に扇子そのもの。ポイントは何といっても竹。聞くところによると、実際に山へ分け入って、自然の竹を採取してきたそうです。え、マジで(笑)!?はい、製作スタッフ、なかなかやりますね。
水槽上部にあるのは、ししおどしのイメージ。もちろんこれも竹がうまく取り入れられています。実際にはポンプを使って水をくみ上げ、ゆるやかな和の雰囲気を醸しだしています。すだれも粋ですね。あー、日本に生まれてきてよかった(笑)
よくみると、フレームなど随所に竹が使われ、和でありながら扇子のイメージが保たれています。なおこちらの水槽は、大和郡山市役所のロビーに設置される予定です。あわただしい毎日の中で、きっと大和郡山市民の心を癒してくれることでしょう。
◆目を疑う高いクオリティー
ひと通りセレモニーが終わり、やまと郡山城ホールも普段の雰囲気を取り戻しました。さっき、白い布幕がかけられていた正体はこれだったかと、もうご存じですよね。こちらの水槽はこの橋ズバリに設置され、文化発信地へ訪れる人の目を楽しませることになりそうです。そして、またひとつ、同市に新名所が誕生した瞬間でもありました。
当初懸念されたハリボテではありません(笑)。樹脂や人工木材、ステンレスなどを巧みに使用し、本物さながらの出来ばえです。しかもこうしてみると、いかにも本物っぽいのに、玄関に置かれていても違和感はありません。大人たちが本気で取り組んだプロジェクト、やっとゴールにたどり着きました。
改めてホンモノ(写真上/近鉄郡山駅)と比べてもこの通り。
たまたま今日ここを通りかかったという主婦は、「本当に駅にあったら毎日電車に乗りますよ!」と。近鉄さん、ぜひ販促にいかがでしょうか(笑)。
また、いつも東側の入口を利用するという女性は、「今度からここへくる時は、正面玄関を利用することにします(笑)」と話していました。
2台でワンセットとなる水槽そのものの大きさはそれぞれ120×35㎝。1台にコメットが、もう1台のほうには丹頂が泳いでいます。
このあたりのディテールも実によくできています。実はこの中に、強力な外付け式フィルターがビルトインされています。なんやかんやいっても、やっぱり水槽ですからね(笑)
照明器具も超スリムでスタイリッシュ。高輝度性能のLEDで、夜間もきっと美しく演出されることでしょう。
本物なら、ここからICカードや定期券を入れるんですが。ここでは金魚たちに食事をしてもらうべく、エサやり口となりました。城ホールのみなさん、これからどうぞよろしくお願いします(笑)!
◆もう女優になんかならない
――まさか製品化されるとは思わなかった?
「はい、軽い気持ちでスケッチしたので、まさかこうなるとは思いませんでした」
――大のオトナたちが大川さんのために頑張ったんですよ(笑)
「ありがとうございました(笑)」
――表彰式があったり取材を受けたり、今日は大忙しだったけど?
「こんな目に遇うとは思ってなかったので驚きました」
――またこんな女優みたいな機会があったりして(笑)
「女優はもうこりごりです(笑)。早く帰って試験勉強しないと」
でも実際に金魚が泳ぐ姿をみて、にっこり微笑む大川さんは本当に楽しそうでした。決して「笑って~」なんてヤラセはしてませんから(笑)
1枚のスケッチが発端となって完成までこぎつけた、ユニークな「金魚のおうち」。大川さんにとって、生涯忘れられない思い出となりました。大人が本気を出すと、こんなことまでやってのけてしまうという、オトナ社会の怖さも思い知ったりなんかして(笑)
そして最後にもう一点だけ(笑)。アイデアスケッチをCADやプロトタイプを経て最優秀賞作品2点を製品化し、セレモニー前日には設置のために深夜まで作業が及んだKOTOBUKIのスタッフと、初めてのイベントを大成功させた大和郡山市の職員のみなさんの功績も、どうかお忘れなく。
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