年間200回近くのライブをこなし、品種名をそのままアルバムにも投入するほどのアクア好き。しかもライブ中のMCで、古代魚のうんちくを語るなんて聞いたことがない(笑)。熱い歌声と軽快なMCで人々を圧倒するステージとはまた違った、はんなりあったかいアクアライフに触れてみました。
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◆最新アルバムは「プロトプテルス」
ハンバーガーばかり食べていた大学時代、軽音部の先輩が何気につぶやいたことが現在のステージネーム誕生のきっかけになった井上ヤスオバーガーさん。本格的に音楽活動を開始してから、ずっとバーガー一筋。ファンの間でも、「バーガーさん」として親しまれています。じゃあ、キワメテもバーガーさんと呼ばせてもらうことにしましょう(笑)。
尼崎市出身の1974年生まれ。パワフルな歌声とユーモアあふれるMCに魅せられたファンも多く、関西を中心に精力的にライブ活動を続けているバーガーさん。ここ1~2年は全国ツアーも復活し、ますます円熟味を増しつつあります。4年前からは引っ越し会社のCMにも起用。ああ、あの歌がそうなの?と気づいてくれたそこのあなた、ありがとう(笑)。
1年前にリリースした最新アルバムのタイトルが「プロトプテルス」(絵・吉川博人)。アルバムの中には、タイトルと同じ楽曲が1曲目に。おお~、早くもアクアとつながった(笑)。プロトプテルスといえば、バッシバシのアフリカ産肺魚。古代魚好きにはたまらない魚種であることはいうまでもありません。ってことはバーガーさん、類まれなる古代魚ファンとみて間違いなさそうです。
取材時に名刺代わりにくださったポストカード(絵・吉川博人)。アイアムハイギョって(笑)。そして古代魚が弾き語りしているシチュエーションとは、なんとエモーショナルな。いやあ、何だかワクワクしてきました。バーガーさんがどのくらい魚を所有しているのか、どんな水槽で飼育しているのか、今のところバーガーさんのアクアに関する情報はほぼほぼなし。いやいや、たぶん1匹か2匹くらいに違いないと勝手に決めつけてみたり(笑)。妄想はふくらむばかりです。いずれにせよ今回が本邦初公開!多忙なライブ活動の合間を縫って無理に時間をとっていただきました。ついにバーガーさんのアクアライフがかいま見れる時がきたのです!
◆アクアのきっかけはクリーニング店の桶?
こんにちは!お会いした時も、水槽のそばにおられたバーガーさん。温厚でやさしそうなキャラ。思っていたイメージとはまったく違ってました(笑)。自慢の魚たちを見せてもらう前に、まずはアクアライフについて聞かせていただきました。
――アクアとの最初の出会いをお聞かせください。
「子どものころ、実家がクリーニング店を営んでいまして。工場には洗濯ものを入れる大きな桶がいくつもあったんです。それをいくつか拝借して、近くで採ってきたフナやナマズ、ザリガニなんかを飼ってました」
――生きものはお好きだったのですね。
「音楽と同じくらい好きでしたよ。当時は動物系のテレビ番組も多くて、そのせいか関心は高かったです。魚だけでなくカブトムシやウサギやインコなども飼ってました」
――まさになんちゃら王国ですね(笑)
「その後、野球に夢中になりまして。小中学生から高校生にかけては野球一筋でした。なので、アクアのことはほとんど頭にはありませんでした」
――ブランクの到来ですね。
「ところが高校の時に大ケガをしまして。野球ができなくなってしまったんです」
――それほど大きなケガだったんですね。
「フライを捕ろうとして外野手同士が激突したんです。その衝撃で大腿骨が外に露出するくらいの 重傷でした。これはヤバいなと思いました」
――野球を断念せざるを得なかったんですね。
「治りはしたんですが、お医者さんからも止められて結局野球はあきらめました」
――ショックだったでしょうね。
「というか、野球をやらなくなって時間が増えたんですよ(笑)。ちょうどそのころ、自宅と学校の間に熱帯魚屋さんがあったんです。ちょうどディスカスが流行っていたころです。
――ということはディスカスを?
「きれいな魚やあと思いましたが、高校生が簡単に買えるような値段ではありませんでしたから(笑)。とりあえず、高校生でも買えるラミレジィやクーリーローチやコリドラスなどを買ってきて、60㎝の水槽で飼い始めたのが最初でした」
――その後は安定したアクアライフを?
「大人になって音楽で食っていこうと決心していたので、アクアどころじゃなくなりました(笑)。ところが、結婚したことでまたまた転機が訪れたんです」
――第2波の到来ですね(笑)
「外出する機会があって、金魚すくいをしたんです。そこですくってきた金魚が、大きな転機になりました」
――金魚がきっかけになることはよくあります(笑)
「金魚1匹だけじゃ可哀相だと思い、最初にニシキゴイを買いました。まだ小さいサイズでした。そこからですかね、色々と増えていったのは(笑)」
これが金魚のお友達としてバーガー家の仲間入りをしたニシキゴイ。バーガーさんにとって思い出深い1匹。当時はわずか6㎝ほど。「大きくなりますよとショップで言われたんですが、大きくなれば大きい水槽を買えばいいやんと思いまして(笑)」。おお~、なんちゅう前向き(笑)。その後ニシキゴイは大きくなり、90㎝水槽にお引っ越しすることに。大きくなれば大きな水槽で飼ってやればいい。こうしたポジティブで自然なアクア観が、結果的に古代魚・大型魚へと進化することになったのです。
◆大型魚をMAXまで投入する理由
ミュージシャンとしてライブ活動を精力的にこなしつつ、趣味のアクアを置き去りにすることは決してなかったバーガーさん。自宅に設置された比較的大きいサイズの水槽ばかりの光景がエモすぎました(笑)。オーダーメイドのこの150㎝水槽もそのひとつ。ここには、オスカー系やポリプテルスエンドリケリー、ダトニオプラスワン、メニーバータイガー、レッドスポットゴールデンセベラム、ストライプトーキングキャット、キングコングパロット、クレニキクラジョアンナなどがいます。
オスカーのワイルド個体。最初は体長3㎝しかなかったそう。地球の裏側のはるか遠く、リオのデミニ川からやってきました。「スマホの地図アプリを使って、棲息地に思いを馳せてみることも多いですよ」。
レッドフィンオスフロネームスグラミー。えっ、これもグラミー?あまり見たことのない大型のグラミーで、ヒレ先の赤い部分がきれい。グラミーは小型・中型・大型とさまざまなサイズがあるのは知っていましたが、これほど大型のグラミーに出会ったのは初めてでした。
フラワートーマン(オセレイトスネークヘッド)。それにしても水槽内には、たくさんの個体がいます。バーガーさん曰く、「縄張り意識が強めの大型魚の場合、水槽サイズのMAXまで魚を入れるんです。そうすることで、お互いが牽制し合い縄張り争いができなくなるからです。そのくらいしておかないと、本気で殺し合ってしまいますから」。どこまでも平和主義のバーガーさんでした。
おちょぼ口と丸い体が可愛いパロット。尻ビレがない分、伸びた背ビレと腹ビレがハートのようなかたちに見えるため、テールのないタイプはハートテールと呼ばれています。改良品種なので繁殖能力がないといわれています。同じパロット同士がキスしているような仕草を何度もしていましたが、実はケンカをしているのだそう。
あ、言うてるシリからケンカをおっ始めるパロット(笑)。どう見ても仲のいいカップルに見えてしまうのは、少々欲求不満気味の表れ(笑)?
◆古代魚に秘められたロマン
こちらの90㎝水槽には、スネークスキングラミー、サタノペルカダエモン(ワイルド)、アカリクティスヘッケリィ、レオパードクテノポマ、キクラピクティなどなど。どの水槽もスッキリしていて、メンテも行き届いています。
キワメテのイチオシがこの子、ゲオファーガス レッドヘッドタパジョス。背ビレの先の赤い部分、体に入るブルーのラメライン、尾ビレにはメタリックな色彩の上に赤色がヘビのように表れていて、うっとりするようなきれいさでした。
もうひとつの推しのゲオファーガスはこちら。ゲオファーガスといえばこの品種、といわれるくらい代表的な品種のゲオファーガススベニ。縦縞のラメラメラインが水槽の中でキラッキラに輝いていました。
キラッキラのゲオファーガスたちと仲良く混泳しているポリプテルスたち。ポリプテルスは、名前が示すように背中に小離鰭(しょうりき)と呼ばれる菱形の背ビレが10枚前後ある古代魚です。そんな古代魚に魅せられたバーガーさん、「古代魚って、古生代から姿を変えていないんですよね。見知らぬ遠くの川からやってきて、成長するにつれて、外エラがなくなったりするなどの生態の変化も神秘的で、実に不思議です」。
この60㎝水槽には1匹だけが泳ぎたい放題(笑)。
ワンルームの住民はレッドマルリオイデス(カリマンタン島/バリト産)。
赤くなる個体もいるし、ならない個体もいるのだそう。意外と素早い動きは、写真を撮るのにはやや不向きかも(笑)。
◆美しすぎるシルバーグラミー
やや神秘的な60㎝水槽。マーブルグラミーやパールグラミー、コリドラス・アエネウス、ブルーアイゴールデンブッシープレコなどが遊泳中。
またまたキワメテ推しを1匹(笑)。シルバーグラミー。決してカラフルではないのですが、シルバーオンリーというシンプルなところがかえって目を引きました。別名はムーンライト・グラミー。その名の通り、月明かりのようにキラキラ輝いています。「派手すぎず、そして地味すぎず。そういうシンプルな色彩が、ひそかに人気のあるグラミーなんです」と話すバーガーさん、もうすっかりバリバリのアクアリスト(笑)。
ネオンドワーフ・レインボー。レインボーフィッシュのなかでも定番とも言えるそうです。ブルー&グリーンに輝く体色、赤い縁取りのヒレが非常に美しいです。
◆僕らはまるでプロトプテルスだ
さてさて。60㎝水槽でゆうゆうと泳いでいるのが、バーガーさんの最新アルバムのタイトルにもなったプロトプテルス。
正式にはプロトプテルスエチオピクス コンギクス。アフリカ肺魚のなかまで、何と何と、4億年も前からアフリカのコンゴ川に生息。体長は1mほどに成長するのだとか。手足のように動く細いヒレと小さな目。捕食があまり上手ではないところがまた可愛いです。
雨季と乾季がある過酷な状況を生き抜くために、肺呼吸ができるよう進化した肺魚。ちなみに、バーガーさんのライブでは、MCでちょこちょこプロトプテルスの解説も入るそうな。一体どこまで解説しているのかは知る由もありませんが、そんな筋金入りのアクアリスト・ミュージシャン。バーガーさんの二刀流、シブすぎます(笑)!
魚でありながら、肺呼吸したり両生類のような時代を経て成魚になるなど不思議がいっぱいのプロトプテルスやポリプテルス。これらの魚が、どんな時代にどのような環境で生きていたのかなど、考えたらキリがありません。古代魚ありきの美しき妄想。そんなロマンを紡いでいくことが、バーガーさんの曲づくりにも生かされているに違いありません。
すでに完売してしまいましたが、愛魚をイメージしてバーガーさん自らがイラストを手がけたオリジナルグッズ。もしかしたら、アルバム・プロトプテルスの次は「アイアムハイギョ」がリリースされるかもよ~。
◆抱っこして一緒に寝たいくらい
最後にご紹介するのが、バーガー家で2番目に大きい120㎝水槽。「あこがれのアクア系人気ユーチューバーさんから購入した水槽です」へー、バーガーさんでもあこがれの人っているんや(笑)。
見るからにカッコいい。堂々とした風格とビジュアル。 バーガーさんのイチオシだということもよくわかります。
大きく成長したニシキゴイの友達としてバーガー家へやってきた1匹。当時は小さいサイズで、「ショップでは大きくなっても30㎝位までですよと言われて購入したものの、よく調べてみると何と1mくらいになるジャンビコバルトスネークヘッドだとわかったんです(笑)。驚きましたが、たった2〜3日一緒にいただけで情が湧いてしまったというか(笑)」。
これにより、また大きな水槽を置くことができる!バーガーさんが内心ガッツポーズをしたことはいうまでもありません(笑)。
現在の同居人はセルフィンプレコ。いつも水槽をきれいにしてくれる名脇役。底にじっとしていて、スネークヘッドを引き立てているかのよう。
よほどのお気に入りなんですね。「何か会話ができる気がするんです。本当に可愛い。小さい時から飼っているので、今こうして見ると大きくなったなとつくづく。可愛すぎて抱っこして寝たいくらいです(笑)」。こんなやさしい顔したバーガーさん、見たことない(笑)!?
こちらのグッズのイラストも、バーガーさんが手がけたもの。魚のめっちゃ細かい描写に、深い愛情を感じずにはいられません。魚たちも幸せでしょうね。ん?井上水族館?おお、バーガーさんにぴったりの新ブランドの立ち上げや~(笑)。
◆いくつになっても魚好き
気になるのはメンテ面。全国ツアーとなると、2週間以上留守にすることも珍しくありません。自宅に戻ってきて水替えをするのは、結構大変だと思いますが。「いえいえ、まったく苦になりません。むしろ、またあの子たちに会えるのだと思うと、うれしくて。寝る時間も惜しんで水換えしています(笑)」。
古代魚や大型魚と出会って、本当によかったと話すバーガーさん。現在の水槽は計7つ。このカオスな空間を維持しながら、「それぞれの個体を大きく育てていきたいと思っています」。
いつも心やさしいバーガーさん。動物が大好きなバーガーさん。ライブ活動もアクアライフも、4億年続きますように(笑)。
★井上ヤスオバーガーさんのホームページはこちら。公式グッズやCDアルバムなどのご用命はこちらへどうぞ。