地図でいうと、瀬戸内海と日本海のほぼ真ん中あたり。兵庫県の東部に位置し、山々に囲まれた自然豊かなまちが丹波市です。丹波市山東町で約20年、主に地元のアクアユーザーに寄り添いつつ、独自の営業展開を図っているのがアクアショップリンク。ショップ名が示す通り、アクアユーザーとアクアリウムをしっかりつなぐ役割を果たしています。
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◆太陽光パネルでコスト削減
ショップは国道175号線沿い。駐車スペースもあり、周辺地域からも比較的わかりやすい地理。丹波市は2006年に国内最大級の恐竜の化石が発見されたことで、全国的に注目を集めたところ。あの丹波米や丹波牛同様、丹波竜もしっかり地元に密着してブランディング。市には「恐竜課」まで設置されているほど、丹波竜に賭ける思いが伝わってきます。
この場所でアクアショップとして根を下ろして、18年以上の歳月が流れようとしています。トータルするとほぼほぼ20年。ショップとして、ようやく成人式を迎えた計算です。いわば、成熟したオトナのアクアショップ。
オーナーは米田悟さん。開業前はアクアショップに勤めるなど、アクア畑一筋。「かといってアクアを趣味としてとらえたことはなく、本当は犬のほうが好きでした(笑)」。親しかった業界関係者から開業を強く勧められ創業。よほど経営者としてのセンスを見込まれたのでしょう、晴れて兵庫県三田市でのスタートとなりました。ところがおっとどっこい、「家賃が高すぎまして(笑)」。切り換えも早く、1年半ほどで現在の場所へ。
この日は、大好きな愛犬・フレンチブルドッグのツキちゃんも取材に同行。話が終わるまでちょっと待っててね(笑)。
元々釣り具店だったところを、知り合いを通じてここに決めました。駐車場にも使われる屋外スペースだけでなく、倉庫代わりに使えるスペースが屋内にもあり、「広さのわりには安く使わせてもらうことになり、今も助かってます」。集客に関しては、創業時の米田さんを知る人も多かったことで口コミ的に広がり、その存在は次第に浸透していきました。
「高い家賃もさることながら、借金をするのが嫌なんです(笑)」という米田さん。ついて回る経費節約。その一環として、太陽光パネルを設置したことで年間電気代を以前より約30万円もカットできたのだそう。アクショップで大きなウエイトを占めている光熱費。コスト意識はさすがです。
屋外スペースには、季節柄メダカを多数販売。ところがつい先日盗難に遇いました。大変だったでしょう?「持っていかれたのは1ケースだけでした。だから大したことないです(笑)」。特に気にする様子もなくサラリ。
全国各地でメダカ盗難被害の腹立たしいニュースをよく耳にしますが、米田さんのおおらかなキャクターは、もしかしたら土地柄のせい(笑)?。かといってこのような犯罪行為が許されるものではなく、以後のセキュリティーは万全です。
◆思わぬきっかけで広がった「中古市場」
屋外スペースの端っこにあるのは、コイのプール。米田さん自作の上ブタを開けてみると、色つやがあり元気そうなコイがゆうゆうと。プールというより、まるで生け簀。これだけのプールをいくつも設置できるのも、郊外型アクアショップの特徴でもあります。
コイの需要があるというのは、やはり地域性の表れなのでしょうか。「庭のあるおうちが多くて、コイを飼うための池があるおうちも少なくありません。そういったユーザーのために、質のいいコイを提供できるよう努めています」。庭でアクアリウム。池にコイ。やっぱりスケールが違います。
池がなくても、玄関用などに水槽を設置するユーザーもいます。サイズ的には120~150㎝。これもやっぱりコイ用?「コイだけではありません。アロワナなどの大型魚を飼うユーザーもおられますから」。何から何までスケールが違います。丹波竜といってもさすがに化石だけなので、コイやアロワナがわさわさ泳ぐ池や大型水槽を地元で見てみたいと思うのは、キワメテスタッフだけでしょうか(笑)。
以前、諸事情で飼えなくなったというケースがありました。残念なことですが、それも事情があってのこと。早速引き取りに伺うべく足を運びました。「以後、こういったケースが増えてきたんです。手間がかかる仕事ではありますが、買い取りを増やしていったことで、生体の売買だけに終わらなくなったんです」。
小さなきっかけから始まった、中古という新規ジャンルへの取り組み。今では水槽や部品の買い取りや販売も行うようになり、ユーザーにもすっかり浸透。「いつの間にかうちの屋台骨になりました(笑)」。どちらかといえば、店頭販売とメンテという二枚看板が多いアクアショップですが、ほかにはない独自の路線を展開しています。
店内には外部フィルターやライトなどの中古パーツコーナーがランダムに。電器製品のことなので、作動不良などの販売後にクレームとかは?「事前の動作確認チェックをきっちりしているので、クレームはほぼありません。あったとしても代替品と交換させてもらっています」。中古品を扱うのは結構手間のかかることですが、そんな時間を惜しむことなく日々の業務にあたっています。
一番の注目は、やっぱり水槽。店内には中古水槽タワー。目立ったキズがなくしかも丈夫でさえあれば、中古水槽は重宝されます。さらには、店内だけでなく同じ建屋内の倉庫にも大型水槽の中古在庫があるそうです。古物商としての資格も取得し、ユーザーとの信頼関係も折り紙つきてす。
◆質のいい生体をブリーダーから
ようこそ大型魚コーナーへ(笑)。おなじみのオヤニラミやオスカー、アロワナなどの大型魚の在庫も豊富。迫力満点のサイズ感。
金魚は、このショップに限っていえばビギナー向け個体。「アクアを始めたばかりの人は、生体の価格そのものがよくわかないと思うので、可能な限り相場などの情報を提供しながらリーズナブルな価格設定にしています」。
付加価値の高いインペリアルゼブラプレコは、知り合いのブリーダーから入手。「モノはいいけど高い、といわれるのもどうかと思いますので(笑)」。質のいい個体を作出しているブリーダーさんとのパイプも今ではしっかり構築され、プレコファンのためにも遜色はありません。
意外とニーズのあるタイワンドジョウ。今が旬。成長時には最大70㎝にも達する意外なキャラクター。淡水魚としては意外性のある外来種です。
売れ筋の水槽は、「KOTOBUKIのレグラスですね」。特に60×45㎝というほかにはないサイズが人気で、もちろん水漏れも割れもなく丈夫というのも支持される理由のひとつです。
◆「なんぼでもおる」野生メダカ
ショップから車で10分足らずのところから、お父さん・お姉さんと一緒に来店した中学3年生の小松轟大(ごうた)君。「父に、水族館に行くぞと言われてやってきました」。ん?この近辺に水族館なんてあったっけ?ああ、やっと意味がわかりました(笑)。お父さんの健一さん、アクアリストらしい素敵な誘い文句です。
轟大君が着目したのは、何とシルバーアロワナの幼魚。「これ、めっちゃかっこいいです」。均整がとれていて、シャープなシルエットで、きらっとひかるボディには気品さも漂っています。「今は手頃な大きさなんてすが、成長するとかなりの大きさになりますからね。水槽も90~120㎝は必要になってきますよ」という米田さんのリアルなアドバイスを聞いて、轟大君撃沈(笑)。
第2希望はメダカに向けられました。聞くところによると、小松さんのご自宅周辺の水路には野生のメダカが「なんぼでもおりますよ」。そんなにたくさん?「はい、なんぼでも(笑)」。水がきれいで自然も多い丹波市ならではの土地柄。そんなにたくさんいる野生メダカの姿、ひと目見てみたいものです。
ミニ家族会議の結果、室内の観賞用にと横見がきれいなスーパー鱗光とノーマルの鱗光2種類を3匹ずつお買い上げ。シルバーアロワナは残念でしたが、いずれまた。今のうちに環境整備と資金調達を。ご利用は計画的に(笑)。
このほか、ショップ内にはクラウンウェルツノガエルやフトアゴ、カメなどの爬虫類も。米田さんの長男が爬虫類が大好きで、「うちにはフトアゴが10匹もいるんですよ(笑)」。この血筋にはお父さんも顔負け。そして丹波竜のお膝元、爬虫類とは切っても切れない縁があるのかも知れません。
広い開口部が2カ所もあるショップ。今のところこちらはシャッターが下りたままになっています。「せっかくこれだけ大きな開口部があるので、店内を部分的に改装しようと思ってるんです」。
第2の開口部から入ったすぐのところに、メダカ水槽を置いて照明演出を図り、アイキャッチ的なシンボルをつくるというプロジェクト。しかも来年完成予定とかで、20年の節目のリニューアルに期待したいものです。
それにしても許せないのはメダカ泥棒。野生メダカならいざ知らず、こんな不届き者が「なんぼでもいる」ことのないように、祈りたいものです。