その人望が認められてアクアショップの店長を3年間務め、その後4店舗のマネジメントまで任されてきた、福本雅一さん。
いわば、アクア界のエリートを歩んできたアクアリストでした。
その後、メンテナンスの仕事をメインに独立。
5年が経過し、ついにこの夏からいよいよ店舗を構えてショップオーナーに落ち着きました。
これまで学んだことを、アクアのノウハウに生かしたい。
より多くの人と寄り添いながら、アクアの素晴らしさを伝えていきたい。
“福本ストーリー”、第2章の始まりです。
◆アクアショップらしからぬ?おしゃれなたたずまい
大阪府松原市。府道187号線沿い。田んぼが点在しつつ、町工場や住宅街が建ち並ぶマンションの1階に、目新しいショップがありました。一見、アクアショップとは思えない、やさしいライトグリーンが印象的です。駐車スペースも十分あります。
ん?お店の名前、どういう意味なんでしょう。「ジースリー アクアラボ」。読み方はわかるのですが、“G3”という部分が謎です(笑)
取材に伺ったのがオープンしたところだったので、看板やPOPらしきものはほぼありません。いやあ、逆にこのほうがスッキリしていて、いいんじゃないでしょうか。要検討を(笑)
大きな扉を開いて入ってみると、とっても爽やか。黒でまとめたアクアショップが多い中、店内はほぼ白で統一されています。
玄関でみたライトグリーンが、什器にも組み込まれていて、より統一感が図られています。
あかりひとつとってみても、インテリアに気を使っておられるのか、なかなかイケてます。
店内にはお祝いの品々があちこちに。こちらは出身校からのお祝い。なるほど、阪南大ということは、昔からこの地域を知り尽くしておられるのでしょう。
おお~、KOTOBUKIからのお祝いもありました。「ああ、前にいた会社がここだったんです。瀬川社長にはとってもお世話になりました」(福本さん)。へ~、なんという奇遇。福本さんが以前いたアクアショップとは、KOTOBUKIの当時の直営店のことだったのです。
◆言い尽くせぬほど学んできた経験と実績
――ということは、アクショップにおられたというのは、Paseoさんのことだったんですね。
「そうです。当時松原市にお店があり、大学生の時にアルバイトでお世話になったのが最初でした」
――アルバイトから社員へ。それってエリートコースじゃないですか(笑)
「いえいえ(笑)。大学卒業後は一般企業に就職したこともあるんですが、体調を壊して退社したこともあり、その後当時店長だった現社長から声をかけていただきました」
――店長のみならず、その後4店舗の統括マネージャーも任された理由は?
「それは私にもわかりません(笑)。ただ仕事が面白くて、何かにつけて現社長と気が合ったのは確かです」
――学んだことは数知れず?
「一言では言い尽くせませんね、本当に。店長勤務や新設店舗準備の経験、メンテナンス技術など、勉強させていただいたことが多すぎました」
――多くのお客さんと接してこられたでしょうね。
「本当に多くのお客様に可愛がってもらいました。閉店が決まった時は、“ここがなくなったらどうしたらいいの?”と仰ってくださったお客様もたくさんいらっしゃいました」
――今回のオープンは、そんなユーザーたちの気持ちに応えたかたちになりましたね。
「心残りだったことがたくさんありすぎましたから。いつかこの人たちに恩返しをしたい、もっとこの人たちの役に立ちたい、と」
――大きなきっかけになりましたね。
「少し遅すぎたかもしれませんが(笑)。独立した時はメンテの仕事、いわゆる外回りがほとんどでしたが、店を構えられたことでこれからはお客様ときちんと向き合うことができそうです」
――あ、そうそう。「G3 AQUA LAB」という店名の由来は?
「ああ、あれですか(笑)。大した意味はないんですよ、“オジサン(G3)がプロデュースするアクア(AQUA)の研究所(LAB)”という意味で、ちょっとイメージ風にしてみただけなんです(笑)」
店舗の閉店とほぼ同時期に、福本さん自身も退社。そして独立。その後約6年間、“店舗を持たない店舗”としてメンテ業を中心展開してきましたが、ホームページの立ち上げだけは早かった福本さん。ネットが大きくモノをいう時代、ホームページがあったからこそ、販促はもちろんかつての顧客も、福本さんをつなぎ止めることができたのかもしれません。
◆初心者に満足してもらってこそ
海水魚の扱いが6割を占めています。アクアショップとしては、海水魚の比率がやや高い気がしますが、「アクアはとにかくキレイで華やかでないと。お客様にそう感じてもらうには、海水魚がイメージにぴったりなんです」と、独自の世界観を展開します。
でも初心者がいきなり海水って難しいのでは?「いえいえ、初心者でもそれができるようにサポートしていくのが、私の仕事ですから」(福本さん)。穏やかそうな人柄と、物腰のやわらかな話し方。そこには、長年アクアで培ってきた自信もチラリ。初心者でもベテランでも、安心してアドバイスがもらえそうです。
ご本人はといえば、水草に人一倍関心が高いのだそうです。生体やパーツの本格販売はこれから。このあたり、メンテナンスを通じてしっかりユーザーを取り込んできた自信さえうかがえます。
ショップというよりも、ショールーム的な感性が見え隠れします。これまでの6年間、メンテで外回りが多かった分、今度からはしっかり地に足を付けて商売開始。アクアファンにとっても、憩いのスペースになればいいですね。
ちなみに、現在のメンテは8割が法人からの依頼。大阪府下はもちろん関西一円に依頼先があり、病院や幼稚園、美容院など、管理本数は全部で100本近くにのぼります。珍しいところでは、大阪市立科学館の一部とも関連があるそうで、メンテに特化しているのがお店の強みです。
経営のかたわらメンテを手がけるアクアショップが多くなりましたが、福本さんに限っていえばまったく真逆。こういうケースも珍しいような気がします。今日は不在でしたが、福本さん以外に若手スタッフが3名。いずれも男子。彼らもいずれ福本さんと同じ道をたどっていくのかも知れません。「そうですね、私が経験したことを、今度は彼らが体験してくれれば、きっと将来に役立つと思います」(福本さん)
取材中、ご近所の会社からメンテ依頼が飛び込みで。聞くところによると、たまたま向かいのコンビニに立ち寄った際にお店をみつけたのだそう。偶然とはいえ、こうしたことがきっかけでの来店動機も見逃せません。コンビニが近くにあって、よかった(笑)
POPらしきものは、店内にもまったくありません。「まだ開店直後ですしね~」とは仰いますが、いっそのことこのままでいったら?とついつい勝手なことを思ってしまいます(笑)。商品に対する説明は最低限必要かも知れませんが、福本さんのキャラクターを考えると、人対人が一番このお店らしい気がします。
◆アクアの裾野が広がることを現実に
シャッターを正式に開けたのは、8月3日(木)。それまではメンテ中心だったので、「開ける必要がなかったんです(笑)」。ところがいざシャッターを開けると、かつてのお客さんとの思わぬ再会があったり、メーカーさんが情報を持ち込んできたり。やっぱり開店させて正解でした。
――どうでもいい話ですけど、プロ野球のオコエ瑠偉選手(楽天)に似てると言われません?
「よく言われます(笑)。でも両親とも関西人ですよ」
――楽天ファンだったりして(笑)
「いえ、阪神ファンです(笑)。その証拠に、3人の息子の名前には全部“虎”が入ってるんです」
――え、マジですか!
「中2の虎(こ)太郎、小6の虎(こ)次郎、そして小3の虎(とら)之介。みんな名前に“虎”が入ってます(笑)」
――恐れ入りました(笑)。見た目は結構クールにみえるし、話し方も落ち着いていらっしゃるのに、店のネーミングやお子さんの名前に遊び心を取り入れておられるのは気持ちに余裕があるからでしょうか。
「どうなんでしょうね、自分でもよくわかってませんが(笑)。ただアクアに関しては、自分が初めてアクアに出会って感動した気持ちは、忘れないでいようとは思っています」
――子どものころからアクアに関心があったと?
「いや、それが実は遅いんですよ。大学生のころ、何気なく立ち寄ったホームセンターのペットコーナーにオールインワン水槽があり、速攻で買ってしまったのがきっかけだったんです」
――衝動買いってやつでしょうか。
「とにかく感動してしまったんです、こんなきれいな世界が現実にあるのだと」
20年以上のキャリアの中で、実はこのことがご自身に最も大きな影響を与えてきたのだそうです。あの時自分が体験した一瞬の感動を、より多くの人に伝えたい、と。「初心を忘れないでやっていけば、アクアの裾野は必ず広がります」(福本さん)
独立後5年以上も経っているのに、昔のお客さんがやってきます。通りがかりのお客さんがひょこっと入ってきても、決して不思議でもありません。ここは誰でも気軽に立ち寄れる場所。ショールーム風というのは、決してショップのイメージだけではないのです。
アクアは趣味の世界。興味のない人にとっては、もしかしたら一生縁のない世界かも知れません。反面、興味があるにもかかわらず自分ではできそうにないと、あきらめている人だっているはずです。そんな人にこそ、ぜひお店を訪ねてみて欲しいと思います。その人の経験やレベルに合ったアドバイスはもちろん、福本さん自信が培ってきた独自のノウハウも惜しげもなく教えてくれるはずです。
「お客様に提案して喜んでもらえるのが何よりうれしいんです」。初心者であろうとベテランであろうと、決してノーとはいいません。ここは、ユーザーの夢を叶えるカタチにできる場所だからです。福本さんのセカンドステージ、これからが楽しみです。
★G3 AQUA LABのホームページはこちら