政府が発令した緊急事態宣言、引き続き延長されそうで凹んでいるアクアユーザーも少なくないでしょう。さてさてアーカイブ企画第二弾は、KOTOBUKIのプレミアムフード「FLY MIX」。アメリカミズアブの幼虫を主成分とした、ウイルスも舌を巻いて逃げ出すほどクリーンな工場で製品化(笑)。2年前に発売されて以来、多くのアクアユーザーに使用されてきました。お得なキャンペーンもガチで(笑)。その中でも、大阪市立大学院出身の佐藤 駿さんが自己所有のディスカスにFLY MIXを一定期間給餌し、その結果を独自の方法でデータ化したことが話題になりました。偏食家といわれるディスカスが、いかにFLY MIXを好んで食べたかを実証する結果。今回は、佐藤さんが検証に至るまでの経緯を紹介しながら、過去記事を完全アーカイブ。あたかも再放送の番組をごらんになる気分でお読みください(笑)。
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〈2018年10月5日配信〉
KOTOBUKIの新製品「FLY MIX」は
偏食家・ディスカスをふり向かせることができるのか?
水槽メーカーのKOTOBUKIが満を持して今冬新発売する「FLY MIX」は、環境先進国のカナダで生まれた、プレミアムフィッシュフード。これまでアクア系の展示会などでサンプルを配布するなどして、アクアリストの間で話題を呼んでいます。発売間近に迫ったFLY MIX。果たして、魚たちがFLY MIXをどのように受け入れてくれるのか、気になるところです。今回はKOTOBUKIでFLY MIXを使って実際にテストを行った結果と、その検証に協力してもらったアクアリストに話を伺いました。
☆ ☆ ☆
◆世界が認めつつあるアメリカミズアブ
FLY MIXの原材料は、すでにご存じの通りアメリカミズアブの幼虫。深刻化する食料廃棄物増加に対する残さ物を処理する環境保全の観点で、日本でも研究が進められています。
それだけではありません。数ある昆虫の中でも、動物性タンパク質などの栄養価が高いことにも注目。うまくいけば、年々深刻化する養殖用食料の枯渇にも対応できるのではないか、との見方もあるほどです。
その栄養価の高さに着目したのが、環境先進国といわれるカナダでした。長年の研究をクリアしつつ、国家的にも厳しい条件の基準をクリアした工場で生産され、数年前に商品開発されたのがFLY MIXだったのです。
しかも幼虫は約2週間で成虫になり交配を行うので、その鮮度が群を抜いていることにも注目されました。そしてアメリカミズアブは、世界中に分布しているため、これ自体が枯渇することはまず考えられないそうです。もちろん日本にも広く分布しています。
◆サンプル配布で知名度もアップ
魚たちだって、いつまでも健康でいてほしい。そんな願いのもと、FLY MIXのメリットに着目したのがKOTOBUKIでした。水槽メーカーとして、初のフィッシュフード取り扱い。魚たちの健康維持だけでなく、FLY MIXによって環境保全に貢献することが、これまでアクアリウム業界を真摯に歩んできたメーカーとしての思想と合致したからでもあったのです。
今春、東京で開催された「インターペット2018」(東京ビックサイト)では、ブースのすべてをFLY MIX一色で固め、ショップ関係者やバイヤーに強くアピールしました。
5月には、大阪で開催された「ペット王国2018」(京セラドーム大阪)でも積極的にアピール。一般ユーザーを対象としたサンプル配布に努めました。
さらには、6月開催の「日本ベタコンテスト2018」(大阪国際交流センター)でも同様にキャンペーンを実施。こうしたことが少しずつ功を奏し、今冬発売を前に徐々に知名度も浸透してきました。
ことあるごとに行われてきたFLY MIXにおける販促キャンペーンと同時に、魚たちがいかにFLY MIXに興味を示してくれるか、という点を実証するための検証が行われたのです。
◆自他とも認めるディスカスマニア
FLY MIXの検証に協力してくれたのは、大阪市立大学理学研究科理学修士・佐藤駿さん。大学ではアフリカの淡水湖での実地生体研究を得意とし、数年前には「魚はちゃんと相手の顔を認知している」という驚きの研究論文を、同校幸田正典教授の研究グループの一員として発表し、大きな話題を呼びました。この点については「キワメテ!水族館」で過去に紹介していますので、ぜひご一読ください。
そんな佐藤さんのプライベートな一面が、ディスカス飼育。かつて「キワメテ!水族館」では、「呼吸するよりディスカスが好き」という名言まで残した「とことんディスカスオタクなんです(笑)」(佐藤さん)。弱冠28歳。博士号も目の前という、知る人ぞ知る若きアクアリストでもあります。
「実はディスカスって偏食家なんです。熱帯魚の中でも好き嫌いが激しい魚で、一度嫌だと思ったら2度と食べてくれない厄介な魚なんです。そういうところがまた可愛いんです(笑)」(佐藤さん)。今回FLY MIXを検証してもらうにあたってディスカスに決めたのは、そんな理由もあったからでした。
もっといえば、ディスカスが好んで食べてくれるフードであれば、FLY MIXを検証した甲斐があるというものです。そしてディスカスが食べてさえくれれば、どの魚も受け入れる可能性があります。
かくして、約1カ月にわたる佐藤さんとの検証は始まりました。
◆21匹のディスカスを対象に
まずは、テストに使用した生体たちをご紹介しましょう。
★対象種/ディスカス
★品種/ワイルドおよびワイルドF1、F2の3種
★用意した水槽/4個(3個の水槽に5匹ずつ、残る1つの水槽に6匹を投入)
★総数/21匹
以上をサンプルとしました。
◆食いつき結果は上々
~他社製品との比較/摂餌参加率について~
摂餌参加率。ちょっと耳慣れない言葉ですが、要するに魚たちが与えられたエサに対してどれくらい興味を示して実際に口にしたかで、よく言われる「食いつき」のことを差します。今回はこの「食いつき」の善し悪しをまずテストしました。
FLY MIXは、熱帯魚用中粒タイプ、比較する他社製品AとBはディカス専用のエサを使用します。水槽ごとに定量(約小さじ半分ほどの量)を投入。そして10分間にそれぞれの魚たちが口にしたかどうかを目視して数値化したのが、上のグラフです。もちろんテストでは、個体ごとの体調や優劣による摂餌への参加のしにくさも考慮し、水槽ごとにテスト日や1日に与えるエサの順番も変えて4つの水槽すべてで実施しました。
この結果、68%の個体が、初めてFLY MIXを与えた時に摂餌したことがわかりました。他社製品の摂餌参加率も高い結果となっている点については、「どちらかというと、他社製品はかなりにおいも強く食いつきはいいように工夫されているようです。これに対してFLY MIXは、においは他社製品に比べると弱いものの食いつきに大差はありませんでした。偏食家として知られているディスカスでも、比較的においの少ないFLY MIXを口にしてくれることがわかりました」と佐藤さん。FLY MIXはグルメなディスカスのメガネにかなったということでしょうか。
◆固さはまさにディスカス好み?
~他社製品との比較/吐き出し率について~
魚たちはエサと間違えて石や海草を口にしてしまって吐き出したり、摂餌した直後にエサそのものを吐き出したりすることがよくあります。このため、摂餌参加率の次にエサと認識しているかどうか、また口にしやすいエサなのかどうかを調べるため、いったん口にしたものを吐き出す「吐き出し率」を調べました。
結果が上のグラフです。FLY MIXの吐き出し率は7%と、他社製品AやBに比べて低いことがわかりました。「実際に手にするとそれほど固さに差はないのですが、FLY MIXは水中で水分を含んだ結果ディスカスの好む柔らかさになったようです」と佐藤さん。他社製品AやBについては、水槽に入れてもある程度固さが残っているので、石と間違えて吐き出している可能性がありそうです。
◆他の淡水魚でも同等の結果
~多種間での比較/摂餌参加率と吐き出し率について~
今回のFLY MIXの検証をディスカス以外の魚種についても調べてみました。このテストでは、ディスカス以外の魚種にはFLY MIX熱帯魚用小粒タイプを使用しました。
テストでは、ベタ・アルビマルギナータでも摂餌参加率および吐き出し率ともにディスカスとほぼ同程度の結果が、またバラタナゴ(新潟産)とタンガニーカシクリッドでは摂餌参加率100%、吐き出し率0%という結果が出ました。この実験結果だけですべての魚種の食いつきが約束されているわけではありませんが、少なくともベタやシクリッド系の魚種などでも高頻度でFLY MIXを摂餌したことがわかります。
◆偏食の激しいディスカスにも朗報
~FLY MIXに対する「慣れ」について~
FLY MIXがエサとして認知されていることが確認できたので、いったいどれくらいの期間でFLY MIXに慣れるのかを調べたのが上のグラフです。
1日3回の給餌を繰り返す、と3日目に90%の個体がFLY MIXを摂餌したことがグラフからわかります。「4日目以降のテストでは、1週間の給餌でほぼすべての個体がFLY MIXに慣れました。偏食が激しいディスカスですが、FLY MIXをエサとして容認し水槽内では順位の低い個体もFLY MIXの摂餌に参加できたことがわかりました」(佐藤さん)。
◆次世代のプレミアムフードとして
--今回FLY MIXの検証テストを終えて率直な感想を。
「乾燥エサをあまり好まないディスカスでも、FLY MIXをエサとして認知したことはよかったと思います。」
--色揚げについては?
「強制的に色揚げを促進する原料が使われているエサは、魚体の色を揚げるだけではなく、ヒレなどにもその副作用が出てしまいます。FLY MIXは色揚げの可能性がある原料がバランスよく配合されているためか、1週間の給餌で無意味な色揚げもなかったことは、ディスカスの偏食やエサの影響からくる変色に悩まされているユーザーにはうれしい結果でしょう」
--栄養価が高いことで期待されることは?
「栄養価の高い原料が使われていることなどから、長期の使用により個体の状態が整うことで強制的な色揚げではなく、その魚本来の自然な色揚げが期待できます」
--偏食の激しいディスカスでも大丈夫?
「もちろんです。もしまったく口にしてくれなかったら、という不安はこの検証で払拭されました。そしてディスカス以外も適応できるとわかったので、まさに次世代のプレミアムフードになると確信しました」
世界的に環境保全が叫ばれる時代。そんな中、環境先進国で生まれたFLY MIX。アメリカミズアブという昆虫の成分に着目した結果が、今回の製品化に結びつきました。アクアリストなら、自身が飼育する生体の健康を願わないはずがありません。FLY MIXの誕生が、ペットフードの一時代を切り拓くことになれば幸いです。
★FLY MIXの製品概要についてはKOTOBUKIの特設サイトをご覧ください。
※この記事は2018年10月5日(金)に配信されたものです。