「ディープなまちにディープなアクアスポットがあるらしい」。
2年前のちょうど今頃、そんなうわさを聞きつけて行ってみたくて仕方なかったのが近藤熱帯魚店でした。
今でこそ、アクアファンならずとも有名なスポットになりましたが、当時はまださほど情報もなく誰もが“お前が先に行けよ”状態(笑)
かくして「キワメテ!水族館」が初志貫徹、スポット取材第一号となったのでした。
その近藤熱帯魚店が、この2月にオープン5周年を迎えると聞いて、再び訪ねることに。
水槽の大半をリニューアルしつつ店内の一部を改装、そしてアッというような生体もいつの間にか君臨。
もうディープなお店とは言わせません(笑)。5年という節目を機に、近藤さんはさらにパワーアップしていました。
◆バーのオーナーであり真のアクアリストでもあり
大阪市北区中崎町。大阪駅にほど近い大阪の中心部でありながら、古くからあるまちなみや商店街が珍しい一角にある、近藤熱帯魚店。夕方ともなると、商店街を行き交うサラリーマンやOL、学生たちがお店を遠目に覗き込んでいくシーンは、2年経っても変わってません。うーん、興味があったら入ったらいいのに。かくいう自分も、このとびらを開けるのに勇気が必要だったんですけどね(笑)。でも心配ご無用。オーナーであり真のアクアリストである近藤充さんにお会いすれば、今までのイメージがどれほど無意味なものだったかがわかりますから(笑)
◆大切なのは「見せ方」
店内に入ると、なんか前と雰囲気が違ってました。劇的な違いは感じられないものの、なんか違う。ましてやディープなイメージなんて全然(笑)。
――お店、なんかすっきりしました?
「そうなんです。カウンターテーブルの水槽を全部替えたこともあり、テーブルの上が以前より少し広くなりました」
――あ、本当ですね。だからかー。
「それに、生体の販売用だった水槽や置き方を替えて、新しい什器によって見やすくしたんです」
――うんうん、確かに見やすくてカッコいいです。
「いくらいい絵画でも、見せ方次第では陳腐なものになってしまうのと同じように、アクアでもいかにいい見せ方ができるか。それを追求してきた2年間でもありました」
なるほど。キーワードは「見せ方」。いわゆる演出。そうした効果でお客さんの感性を刺激し、「やっぱりアクアっていいなあ」と思ってもらえるように。この2年間で、近藤さんの進化を着実にみた思いがしました。
◆もはや「販売コーナー」のイメージもなく
まずは、カウンターテーブルの背後に注目。以前は、この空間に生体を販売するべく水槽が、びっしり並んでいました。「売るためとはいえ、ただ魚を置いてるだけというのもどうかと思いまして(笑)。通常のスチールラックをやめて、ちゃんとした什器をつくったんです」(近藤さん)。なるほど、なんとなく雑然としていた以前(写真下)とくらべてみたら一目瞭然。近藤さんの思い切りのよさと繊細なセンスが伺えます。まるでお魚ギャラリーみたいに進化しました。
ポイントはココ。上下に開閉する引手棚をつくって、照明器具などをみえにくく工夫。これもすっきり見える要因のひとつです。アクアショップでは主流の展示方法をヒントに取り入れてみたそうです。こんなところにも近藤さんのこだわりが表れているような気がします。
以前は隙間なく置かれていた水槽(写真上)も、今ではたっぷり空間をとって余裕の見せ方を。たくさんワチャワチャあるよりも、このほうが見てもらいやすいのだとか。しかもメンテも楽という利点も。見た目にもよく、使いやすいというのが何よりですね。
泳ぎ方が可愛いと近藤さんお気に入りのオランダラミレジたちが泳ぐ水槽は、すべてKOTOBUKI製。「一番信頼性のある水槽ですから。色々なメーカーのものを使ってきたからこそわかる結果なんです」(近藤さん)。確かに比べてみないとわからないことって結構あります。
天井との間にはエンジ色のカーテンが。玄関のカーテンと同色にすることで統一感も生まれ、インテリア目線でみても素敵な空間になりました。
◆さまざまな工夫と努力で快適空間を実現
それでは、メインのカウンターテーブルへ。以前は幅30㎝×高さ20㎝の水槽が6つ並び、カウンターでお酒を飲むお客さんの目を楽しませていました。今回はやや小さい幅20㎝水槽にオールリニューアル。しかしその分、高さ35㎝の水槽に変更したことで、お客さんの目線とほぼ同じ高さになりました。そういえば、以前はお客さんがかがむようなかたちで水槽に見入ってましたっけ。あれはあれでよかった気もしますが(笑)。「もっと楽な姿勢で見てほしくて」と細やかな心遣いの近藤さん、お仕事中でも頭の中で試行錯誤を繰り返していたのでしょう。
注目すべき点はここ。水槽をそのままテーブルに置くのではなく、10㎝以上もセットバックさせました。もちろん近藤さん自らの大工仕事の賜物。最初お店に入ってきて何となく広くなったように感じていたのは、このせいだったとようやく気がつきました(笑)。単に水槽をコンパクトなタテ型に変更するだけでなく、セットバックによる工夫との相乗効果により、さらに広いテーブルの空間が生まれました。とっても素敵なリニューアルとなりました。
照明はオールKOTOBUKI。店の雰囲気に合うよう、あえてブラックを選びました。
水中式ポンプもKOTOBUKI製を。水槽のコーナーにコンパクトに設置できるので魚もみやすく、こういったシーンには最適かもしません。
水槽周りは配線が煩わしいものですが、近藤さん自作のアイデアでこれを解消。「熱帯魚飼育は配線が煩わしいもの、と決めつけてしまっては何も生まれません。簡単な工夫でずいぶんすっきりしますよ」。バーのオーナーでありアクアリストである近藤さんならではの配慮が、ここにもありました。
近藤さんの思いがいっぱい詰まったカウンターテーブル。以前にも増してお酒も美味しくなりそうです。
◆120㎝と専用水槽台でさらに統一感
カウンター越しはKOTOBUKIの120㎝水槽が両サイドに2本。特に変更はありませんが、両水槽を支えるべくKOTOBUKIの専用水槽台を思い切って導入しました。近藤さんいわく、「インテリア製が高い水槽台だったので、以前から欲しかったんです」。あー、もっとちゃんと撮っておけばよかった(笑)。
店にきた時から気になっていたこと。それは、左側の120㎝水槽の海水魚が、近藤さんの動くほうへ常に移動していることでした。「エサをもらえると思ってるんでしょ(笑)」だそうですが、フレンドリーな感じにとても癒されました。ちなみにデバスズメダイという海水魚で、用がない時は岩陰に隠れてひっそりとくらしています。ご来店の際はぜひご注目を。
新たに90㎝水槽3台も加わりました。本格的な水草水槽、海水魚専用のオーバーフロー水槽、そして食虫植物を取り入れた本格的テラリウム水槽など、それぞれ趣の異なるテーマでお客さんの目を楽しませています。このあたりにも、近藤さんの思いが「見せ方」としてパフォーマンスされているような気がします。
「ここ1~2年は、アクアを趣味にしているお客さんの来店が多くなった気がします」
――あ、それはもしかして「キワメテ!水族館」のせい(笑)?
「そうですね(笑)。FacebookやTwitterをみて来店するお客さんも多くなりましたよ」
――ということは、カウンター越しの会話もかなりマニアックに?
「やっぱり同じ趣味をしているもの同士、わかりあえるものがありますから」
――そういったお客さんの声もずいぶん参考になるのでしょうか。
「もちろんです。とっても刺激になります。今回のリニューアルも、参考にさせていただいたことが多々あります」
それでなくても研究熱心な近藤さん、あまり人にアドバイスを求めたりしないそうです。常に独立独歩。いよいよ本業がどちらなのかわからなくなってきました(笑)
◆マル秘クラゲ飼育マニュアル
最後にどうしてもご紹介したかったのがこれ。そう、クラゲがいるんです。ビックリでしょ?しかも特別な水槽で飼育されているわけでなく、ブルーのLEDのエキゾチックな光の下で悠々と。
そういえば以前、クラゲの飼育を本格的に考えていた近藤さんですが、「さすがに難しかったです(笑)。でも3年間、色々試行錯誤をしながら、やっとここまでたどり着きました」。
水槽をみると、KOTOBUKIのコーナー式水中ポンプが横に置かれているだけ。実にシンプルです。これなら誰でもすぐに飼えそうな気がします。
ところがおっとどっこい(笑)。これまでの3年間の労苦をお聞きしたら、とてもとてもクラゲ飼育のノウハウをたやすく紹介する気になれません。別にいいですよと近藤さんは仰いますが、いやいや、とてもとても(笑)。決してノウハウを出し惜しみするわけではないんですが、どうかアクアリストとしての近藤さんの立場になってご理解いただければと。ちなみに、どうしてもお聞きになりたい人は、この機会に近藤熱帯魚店へ(笑)。
◆進化のポイントはやっぱりお客さん目線
最近はお店経営のかたわら、日中はメンテナンスの仕事も。「本当に魚が好きなかたばかりなので、やり甲斐があります」。ともすれば、魚を生き物ではなくただの装飾物やアクセサリーとして扱われる傾向も少なくない昨今、そんな話を聞くとホッとします。それもこれもきっと近藤さんの人柄なんでしょう。
ただ、昼間にメンテで出かけて夜はバー、しかもお店は年中無休なので体調面がちょっと心配でしたが、聞くところによるとつい最近ご結婚されたのだとか。ああ、それなら安心です。余計なお世話でした(笑)
ファンも多くなりました。本格的にアクアをやっている人もいれば、大学の関係者もいます。現役の学生もいます。あっちで飲んでこっちで飲んで、正体不明のオッチャンも通りがかりにやってきます(笑)。
2月3日(金)から5日(日)までの間、5周年感謝祭を開催。期間中はノーチャージ、また来店したすべてのお客さんにウエルカムドリンクを1杯サービスしてくれますよ。善は急げ~!もしかしたら、「キワメテ!水族館をみてきました」と言えば、何かスペシャルサービスがある、、、かも(笑)。
生体を販売しながら熱帯魚バーとして全国にも名を知られるようになって、タイミングよくリニューアル。常にお客さんの目線に立って、諦めずにさまざまなことにチャレンジしてきました。まだ30代後半。あ、意外と若い(笑)。今後どのような進化を遂げていくのか、「キワメテ!水族館」も近藤さんを見守っていきたいと思います。