ニジマスの養殖で知られる、滋賀県・醒ケ井養鱒場に近い地蔵川。
源流は、別名「居醒(いさめ)の清水」として平成の名水百選にも選ばれているほどです。
そしてこの時期、可憐な花を水の中に咲かせる風物詩「梅花藻」(ばいかも)。
花というより、藻のようでありながら梅に似ていることから、この名がつきました。
うっかりすると、見落としてしまいそうな小さな小さな花。
ひんやり水の冷たい地蔵川へ、ご案内しましょう。
JR東海道本線・醒ケ井駅。
かつては東海道の大動脈として、特急列車やコンテナがひっきりなしに通過していました。
まさに日本の鉄道輸送を支えていたことは、線路の多さからうかがえます。
醒ケ井駅から歩いてわずか5分ほど。
昔ながらの風情あるたたずまいは、中山道61番目の宿場町「醒井宿」でもありました。
ここが地蔵川の「入口」。
石づくりの橋が、旅情をかきたててくれます。
水のさらさらという音は、涼感たっぷり。
みているだけで涼しくなってきます。
このあたりのそぞろ歩きも、のんびり楽しめます。
早速、梅花藻とご対面。
最初は単なる藻にしかみえず、想像以上に小さい花でした。
水に洗われているようで気持ちよさそうですが、花も一緒に流されていかないか心配になってしまいます。
地元のかたがお世話している光景も。
こうした地道な活動が、希少な花を現存させているのでしょう。
手を入れてみると、ヒンヤリ。
聞くところによると水温は常時14度だとか。
この水温こそ、梅花藻を育てるのに好環境を保っているのだそうです。
地蔵川は延長約500メートル。
よくみると、川へ下りるための石段がところどころにあります。
水というものが、昔も今も生活と密接な関係があったことがわかります。
地蔵川に沿って続く旧中山道。
今も人々のくらしがここにはあります。
醒井宿として栄えていたよき時代。
本陣や旅籠、問屋などが軒を連ね、今でも江戸時代の建物がところどころに残っています。
のんびりとした旧中山道。
このすぐ上を走る高速道路を見上げると、時代の移り変わりを感じずにはいられません。
完全なかたちで残っているのは全国でも珍しい旧醒井宿問屋場。
江戸時代前期に建てられたもので、資料展示や地元のイベントなどで使用されています。
梅花藻が見られるのは、8月下旬ごろまで。
7月25日(土)から8月9日(日)の間には、ライトアップも行われるそうです。
可愛らしい花を咲かせる梅花藻は、涼感たっぷり。
地蔵川に沿った、わずか500メートルの散策。
一年で最も暑い季節ではありますが、ここだけは別世界です。
梅花藻のみならず、くらしや命を支えてきた水。
けなげに花を咲かせる梅花藻と水のさらさら感に、心まで洗われたような気になりました。