小さいころからずーっと川魚推し。少年のような顔つきからは想像できないほど、フィールドワークでは超アグレッシブ。胸まである丈のウェーダーを着て近畿近辺の川をジャブジャブ魚遊び。いつも温かい家族のバックアップもあって、仕事でも趣味でも魚まみれ。自他とも認めるサカナズキです。
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◆初めましての陸君
いかにも勉強部屋的な一室で、机に向かって黙々と何かに勤しむ平山 陸君。弱冠22歳。自分の二段ベッドもあり、食事とトイレ以外はすべてここで完結するのが陸君流。このライフスタイル、子どものころからちっとも変わってないのだそう。
「あ、こんにちは!」。あ、気づかれた!ごめん、勉強中やった?「いえいえ、大丈夫ですよ」。突然の来訪にも関わらず、少年のような屈託ない笑顔の陸君が出迎えてくれました。
一体何に夢中になってたの?「これです!」と見せてくれたのが、色鉛筆を使って描かれたデメモロコの色鉛筆画。いきなりこんな器用な一面を見せてもらいました。ラインがめっちゃ繊細で正確そう。
というか、絵的にはまだ初期段階。自分の想像ではなく、図鑑などと照合しながらウロコの一枚一枚を丁寧に描き込んで行く作業が「楽しくて仕方ないんです!」。魚好きは子どものころから変わっていない陸君ですが、図画工作の成績も優秀だったそうな。きっと、プリザーブドフラワーの講師であるお母さんのクリエイティビティなDNAを引き継いでいるに違いありません。
◆色鉛筆画ワールド
完成した絵を落とし込んだポストカード。背ビレも尾ビレなどの姿かたちはもちろん、川魚特有の微妙な色合いも的確に表現されています。オオシマドジョウ、トウヨシノボリ、オヤニラミ、アユモドキ、カマツカ、ビワコガタスジシマドジョウ、オオガタスジシマドジョウ、オイカワなどなど、お気に入りの川魚ばかりを15種類色鉛筆画にした、陸君今一番の推しのグッズ。
ここでほんの一部ですがミニ展覧会を。まずはシロヒレタビラ。「個体数がもともと少ないので、採取すること自体が難しくしんどかったです」。
ビワコオオナマズ。「野生個体を見たことがなく、水族館や図鑑などの資料を手がかりにしてチャレンジしました。残念ながらどの資料も細かいディティールが表現されておらず、苦労しました」。
ナマズ。「ヌルヌル感をいかにして表現するかが、ポイントでした。まるで本物が目の前にいるような立体感を表現したかったです!」。
ニッポンパラタナゴ(上)、イタセンパラ(下)。「オスの婚姻色の美しさはもちろん、日本の水辺にはこんな美しい魚がいるということを、色鉛筆画で伝えることができればうれしいです!」。
左からビワヒガイ、ビワヨシノボリ、ビワマス。陸君が描いたポストカードの色鉛筆画は、びわ湖に生息する「ビワ」と名のつく魚が多いのも特徴。びわ湖という日本を代表する淡水域に生息する生きものに関心を持ってもらえたら、と。
陸君が描いた絵は、ポストカードを始めトートバッグに使われたりアクリルキーホルダーに採用されたり。これらのグッズは、ネットショップはもちろん川魚関連のイベントや以前キワメテでも紹介したきんたい廃校博物館やシゼンブ八尾長屋水族館(ともに八尾市)などでも絶賛販売中。川魚の美しさを発信しながら、さらに共鳴してくれる仲間を増やして未来に残したい、日本淡水魚画家でもあるのです。
◆両親の協力あってこそ
子どものころから川魚に興味を持ち始め、スポーツ系大学アメフト部のコーチでもあるお父さんとともに関西圏の川をあちこち冒険してきた陸君。気がつけば、すっかり川魚のとりこになっていました。一時は古代魚に興味を示したこともありましたが、コスト面で断念。「パワーがあって、躍動的で、生命を感じられて。やっぱり川魚がいいです(笑)」。
今も大切に保管している熱帯魚の本。カバーは擦り切れてしまったくらい、読み尽くしたのだそう。「子どものころ、祖母が買ってくれたんです。当時でも4,000円くらいしたような。めっちゃくちゃうれしかったです!」。愛読書はずっとこれ1冊。死ぬまで手放さないと誓ったバイブル。「興味を持ってくれる友達は1人もいませんでしたけどね(笑)」。
棚に並んだ本は魚関連ばかり。子どものころと違って、大学生になったころあたりからはSNSを通じて魚友達は増える一方でした。何気につけたハンネもすっかり定着。「sakanazuki」の名は次第に知れ渡るようになり、今も独自のネットワークを形成しています。
ベッド脇には、動画サイトで知り合ったこんな人の色紙も。
近辺の川だけでなく、はるか南の海まで足を伸ばしたこともありました。
これらのフィギュアはいうまでもなく陸君の私物。オール生きもの。ミニカーとかプラモデルとかがあってもよさそうなのにね。
ただしニョロニョロだけは別。いやいや、多様性の時代ですから。
◆陸君のライフスタイル
昼間はとある水族館で仕事をして、週末はシゼンブ八尾長屋水族館の副館長も。自宅へ戻れば、水槽の世話と色鉛筆をスケッチブックに走らせるという、毎日が魚づけ。名前は陸でも、ライフスタイルはずばり川なのです。
川魚をアクアに取り込みたい!「川の流れと魚たちを是が非でも再現したかったんです」。そりゃそうなるよね。アクア歴の順番はどうあれ、そんなお気に入りのフィールドを自宅で再現したいと熱い思いを尖らせるのは必然でした。
寝ても覚めても頭に浮かぶのは、あの川この川、あの魚この魚ばかりなり。毎日でも川に入ってジャブジャブしてみたい。はあ~、川をうちで再現できたらなぁ。長年の思いは、カタチとなってついにに実現したのです。
【後編へ続く】