こんなメダカイベント、ちょっと見たことない。集まったメダカ愛好家は70以上。しかも全国規模。メダカだけじゃなくエビもいる。何より、ユニークなニンゲンたちがヤバすぎて。この日は全国的に桜も満開。まさに絶好のメダカ日和となりました。
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◆天候にも見放されず
「うわ~、雨やでこれ。ヤバいな」。開催4日前、天気予報とにらめっこしながら早くもテンションダウン。しかし、日を追うにつれ少しずつ回復の兆しが。よかったよかった。
当日は時々晴れ間がのぞく汗ばむ陽気に。「持ってるね~、やっぱり」。会場となった橿原文化会館南側広場を見下ろしながら、キワメテスタッフはそらみたことかと自信たっぷりにつぶやいたのでありました。
百貨店と文化施設、そして近鉄電車に三方を囲まれた場所が、湊sessionが初めて臨んだアクアイベントの会場。いかにも奈良っぽいロケーション。
このふっかふかの芝生がいいんですよね~。
開場前なのに、多くのメダカファンが駆けつけてくれました。アクアはあかんあかんといわれながら、そんな雰囲気をまったく感じさせない盛り上がりをみせていました。
◆最南端から「恥ずかしくない」ものを
こんにちは!どちらからの出品ですか?「鹿児島です」。か、鹿児島!?本イベントで一番遠方から駆けつけてくれた出品者が、まーぼーめだかさん。普段は九州をメインに出品しているので、「関西に持ってきて恥ずかしくないものばかりを選りすぐってきました!」。
そのひとつがフロマージュ。初めて見ました。体色がキラキラしていて、どことなく気品さえ漂っています。思いのほかしっかり仕上がっていますが、クロマージュのワンペアが開場早々に売れてしまったとのこと。これはフロマージュ。売れたのはクロマージュ。これもSNS効果というべきなんでしょうか。
そこへやってきた2人のお客さん。女性同士で香川からお越しのメダカユーザーなのだそう。「以前からSNSでチェックしていたので、奈良まで足を運んだ甲斐がありました!」。この日は、香川で帰りを待つ友人に誕生日のプレゼントとして、別のブースで「アルビノを買いました!」。おお、誕プレにもメダカが貢献しているとは、今時の女子はお目が高い。
◆新種?後天性スモールアイ
いかにも奈良らしい屋号を掲げた飛鳥めだかさん。とっても温厚で、テントを立てるのも邪魔くさいからと汗をたらたら。このかた、実はすごい人なんです。
かつて情熱を傾けていたのがスモールアイの繁殖でした。「ずっと好きで、一人でスモールアイを徹底研究してたんです。人に相談したりするのは根っから嫌だったから(笑)」。そして超独学の結果、1/1000の確率でしか生まれないスモールアイの繁殖に成功。ところが「600匹が盗難に遭ってしまったんです。その後何度も何度も。心が折れてしまってもうやめようかなと(笑)」。
一度は諦めかけたスモールアイの研究。黒いメダカが好きなことを知っているメダカ仲間が送ってくれた黒いメダカをきっかけに、一念発起。そしてついにスモールアイオロチとオロチの作出に成功したというから恐れ入ります。めげずに頑張ってきか甲斐がありました。
視力があっても、環境による体色の変化がないという特性を持つ後天性スモールアイ。「学者さんは新種と言ってくだっています。色々苦労もありましたが、自分一人で解決してこれてよかったです」。
黒いメダカと同じくらい好きなのが、目の周りとおなかが黒いパンダメダカ。しかも、「今度は、誰よりも赤いパンダメダカをつくって見せますからご期待ください!」と、新たな分野にチャレンジ中です。温厚な人柄でありながら妥協を許さない、飛鳥めだかさんのあくなき挑戦。まさに新プロジェクトX!
◆手先が器用なおしどり夫婦
大阪の春日めだかさんはご夫婦揃っての出品。聞くと、観葉植物と水槽をコラボした謎のアクアテラリウム?を考案中なのだとか。うまく説明できないんですが、「ポトスなどを水槽に投入するだけなんですよ~」と奥様。ん~、イメージでけへん。メダカだけでなく熱帯魚を泳がせることも可能だそうで。今のところ水槽1本だけだそうですが、「2~3本水槽のバリエーションが増えたら連絡しますね~」。
ご主人はというと、お勤めの会社経由でオリジナルのアクリル製ハードコート選別容器を自作。一瞬ガラケーに見えたのも、選別容器のパーツのひとつ。
「ちゃいますやん、こうやって使いますねんがな」。ああなるほど、ガラケーに見えたのは選別容器の仕切りだったんですね。しかも表裏で色が異なり、白バックだとこんな感じに。
大事に育ててきたメダカをこのアイテムを使ってきれいに撮れば、さらに愛着が増すこと間違いなし。奥様もご主人もなかなかのアイデアマン。今すぐにでもメーカーに売り込みに行きましょう!
会場では、出店者ブース以外にメダカすくいコーナーも開設。次の日から新学期が始まることもあってか、全体的に子どもたちは少ないような気がしました。
金魚すくいの経験もないのに、20匹以上ゲットした女子も。ひょっとしてメダカはすくいやすい魚なんでしょうか。それともメダカは人にやさしい?
◆7月14日にエビイベント開催
メダカだけでなく、エビの出品者もおられました。関西えび倶楽部さんは、ブリーダーズフェスタでもすっかりおなじみのエビのブリーダー。しばらくお顔を拝見してなかったのですっかり失念していましたが、今回ブースで再会してあー思い出しましたー、お久しぶりです!
ウリは何といっても新種の青龍。ドラゴンサンライズを母体として、3年がかりで作出。写真ではなかなかそのよさが表現できませんでしたが、よく見ると確かにクリアなブルー。
あとで聞いた話なんですが、水草を中心としたレイアウト水槽も手がけているそうな。これは初耳でした。今も10軒近くのお客さんのおうちに月一のペースで訪問、アクアライフのお手伝いをしておられます。エビ=水草レイアウト、言われてみればつながっていて当然かも知れません。※写真提供=関西えび倶楽部
一緒に出品したエビのブリーダーさんたち。あれリーダーがいませんが。ああ、写真が苦手というシャイなところも以前と変わっておられませんでした。ちなみに7月14日(日)には、関西初のエビイベントが開催される予定です。エビファンのためのエビに特化したエビオンリーの初イベント「ラウンドアクアin OSAKA」(大阪市中央区・大阪国際交流センターで開催)にお越しください。ウチも行きますよ。
ほかにもエビを出品しておられたブリーダーさんがおられました。地乃海老さん。このかたもはるばる福岡から出品。福岡のエビ事情は?「ショップが数軒あるんですが、やっぱりメダカのほうが強いですね」。
これは?「レジーナという品種です。同じレジーナでもゴールド・ブラック・レッドの3種類があり、それぞれ趣が異なります」。同じ福岡でも場所によってはpH値が高い地域もあり、とにもかくにも水づくりが大事だとおっしゃっておられました。とかく飼育が難しく、特に夏期の温度管理に気を使うエビ。だからこそエビ愛は誰にも負けていない、とことんメキシカンが大好きな地乃海老さんでした。
◆鉄魚とともに大寒波被害を乗り越えて
懐かしい顔がもう一人。三重からお越しの目高堂彩さん。2年前に取材させていただいた直後、大寒波の襲来で水道管が破裂するなどしてお店が壊滅状態に。あれから2年経ち、何とか復旧の道を歩み始めておられます。
彩さんを復旧のために奮い立たせたのは、何といっても鉄魚。一見金魚のようで金魚ではない、その名の通り渋い鉄色が特徴です。しかも絶滅危惧種。決して泳ぎがうまくない鉄魚ですが、尾びれを優雅にひらひらさせて舞う姿は一見の価値あり。稀少な鉄魚を目の当たりにして、足を止める来場者も少なくありませんでした。
そんな鉄魚に魅せられて、金魚のお膝元・奈良県大和郡山からこられたお二人。現在ご自宅では4匹の鉄魚を飼育中とのこと。この日も鉄魚と金魚をご購入。「鉄魚は彩さんのところでしか手に入らないし、何といっても絶滅危惧種ですからね」。大和郡山でも金魚同様鉄魚も普及させていってくださいね。
本イベントにはキッチンカーも数台エントリー。どこからともなく漂ってくるいい香りが、胃を刺激します。とりあえず午後の取材に備えてランチタイムにログアウト。
◆クセが強すぎるんじゃあ
午後からはさらに気温もアップ。さすがに青空はさほど見ることはできませんでしたが、ようやく春がきたって感じ。出品者も来場者も、思い思いの時間を大好きなアクアで過ごしています。
そんなアットホームな雰囲気の中にあって、あっちへ行ったりこっちへきたり、まさかの挙動不審者?実はこの人、愛知からお越しのタモ師だったのです。通称・茂さん。おそらく県下のメダカ愛好家なら知らない人はまずいないはず。顔が広い茂さんなんです。それならそうと、それを先に言ってくださいよ~!
飼育中のメダカをすくうのに欠かせないタモ。素人から見ると一見普通の網に見えますが、独特の製法があるらしく、メダカ愛好家のテンション維持に貢献しているのだとか。茂さんと同じ愛知から出品中のわかぎめだかさんのブースにもタモが。タモって、ただのアクア用品ではないんですね。
ユニークなのは、右側のやや小ぶりなタモ。「水槽のようなまっすぐの面でも使えますし、タライのような曲面にも使えるんです。ま、タモの二刀流っちゅうとこですな。ワッハッハ」。
もともと出身は尼崎というわかぎめだかさん。だからベタな関西弁なんやー。「あんたもやがな(笑)」。ステッカー差し上げて写真撮るよ~と言ったら、意外に「緊張しい」でした。陽気なキャラクターが功を奏しているのか、ブースはいつも多くの人で賑わっていました。しっかし、ようしゃべるね~お互い。
メイン出品は配色がきれいな坂出三色。このほか、おそうじ用の淡水しじみやドブ貝などもタモ同様出品されていました。
このお客さんもメダカ愛好家の一人ですが、今回はお客さんとしてわざわざ愛知から。茂さん作のタモを買っていきました。
「もう茂さんのタモ最高!」と大絶賛。にしても、愛知の人は本当にサービス精神旺盛。ちょっと、いや、かなりクセは強めですが。
あら茂さん、どこにいったのかと思ったらこんなところでタモ。。ではなく、油を売っておられました。美女には目がない茂さん、ともっぱらのウワサ。でもタモづくりに関しては本当にすごい職人さんですから、念のため。
茂さんがやってきたのは、Edenさんの出品ブース。このかたも愛知県から。しかもソロ出品。ところが、「すみません、ほとんど売れちゃいました~」。残っているのは、委託されたメダカのボトルなどのほか数本が残るのみ。
卸もネット販売もイベント出品も、すべてお一人で。毎週地元のアクアショップに納品中。以前アクアショップに勤めた経験を生かして、4年前に独立しました。今もメダカ道を堂々闊歩中。
茂さん、ちゃっかりEdenさんのとなりに。それにしても今回、愛知のただならぬパワーを実感した一日でした。人にも親切でしたよ。知らんけど。
◆大きな輪となりさらなるセッションを
午後3時前。そろそろ閉会。ちゃちゃっときて、ちゃちゃっと取材して、ちゃちゃっと退散しようと思っていましたが、みなさんのメダカ愛とクセ強愛好家に圧倒されてしまって、結局ラストまでいることになりました。それにしても、あっちゅうま。
多くの出品者と途絶えない来場者。その多くは、SNSを中心とした情報に心を動かされ、結果的に多くの集客に結びつきました。SNS効果はこれからも続きそうです。
そもそも、湊sessionとはなんぞや?
イベント名であり主催者でもあり。普段は、奈良を中心に活動するメダカ愛好家である古民家めだかさん・天誅めだかさん・CIEL OF MEDAKAさんがセッションを組み、月一のペースで販売会を実施しておられるんです。もっと頑張ればメダカの輪がさらに広がるんじゃないかと、全国のメダカ愛好家に声をかけてみたら、これだけの多くの出品者が集まったというわけです。いやあ、大したもんです。
ちなみに「湊」(そう)とは、水が集まる場所という意味。今回、メダカや人が集まり、コンセプトは見事に達成。さまざまなメダカを一堂に介したことで、記念すべき第1回目の湊sessionは幕を閉じたのでありました。スタッフのみなさん、そして取材にご協力いただいたみなさん、お疲れさまでした!
湊sessionはまだ始まったばかり。夢は奈良にメダカの養魚場をつくること。そこにまた人が集まり、新たなセッションが生まれるのも遠い日のことではなさそうです。