2020/11/06カメ, スタッフ, ヤドカリ, 取材, 地域社会, 専門家, 技術, 教育, 未分類, 歴史, 水族館, 水槽, 海水魚, 自然, 観光

【観光☆南四国ポツンと2軒の水族館/前半】海水魚ユーザー&サンゴマニア必見!海&水槽で自然のサンゴがリアルに見れる「海洋自然博物館マリンジャム」(徳島県海陽町)

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南四国にある2軒の水族館。小規模ながらもきわめてユニークな取り組みの様子を、前半・後半2回にわけて紹介します。たどり着いたのは、サーフィンのメッカとして知られる徳島県最南端の海陽町。周囲わずか4㎞のスモールアイランド・竹ヶ島の入口近くにあるのが、海洋自然博物館マリンジャムです。名前からしてマリンスポーツの拠点かと思いきやノーノー(笑)。周辺海域に30種類以上自生するサンゴを施設内で育成しながら一般公開。海水魚ユーザーやサンゴマニアに知って欲しいアクアスポットでもあります。

☆     ☆     ☆

◆ここは徳島県の最南端

竹ヶ島のほぼ入口に位置する海洋自然博物館マリンジャム。施設そのものが完成して数十年経過していますが、「島のちいさな水族館」としてリニューアルしたのは2017年。今年11月でまる3周年を迎えます。

 

館内をアテンドしてくれたのは、スタッフの谷 隆幸さん。地元出身。関西で犬猫のトリマーの仕事をしていた時期もありましたが、海の美しさが忘れられずUターン。若いのにエラい(笑)

 

実は谷さんと会うのはこれが2度目。去年大阪で開催された植物系のイベントを取材中、マリンジャムをブース出展していた谷さんと遭遇。海部きゅうり?海陽町?マリンジャム?水族館?ん~聞いたことないな~。徳島にそんなところあったっけ?なんていう、とりとめのない会話をしていた次第(笑)。いずれにせよ、徳島というと阿波踊りかスダチくらいしか知らなかったので、徳島最南端に水族館があったことに強く惹かれたのでした。

 

館内は淡水域ゾーンから。水族館全体のプロローグ的位置づけ。ここでは竹ヶ島の山で採取した流木やコケ、シダ類などを使ってコケテラリウム風に展示。

 

水槽では川に生息するフナやカワムツなどの淡水魚が展示され、島周辺の自然が再現されています。

 

変わってここは汽水域ゾーン。水族館本編への入口でもあります。このあたりから館内の視界がグンと広がり、わくわく感が高まってきます。

 

計12本の30㎝水槽で構成された汽水域ゾーン。主に海部川で採取されたハゼの仲間たちがパフォーマンス中。それぞれの水槽が書棚風にビルトインされています。

 

サツキハゼ、ウキゴリ、ゴクラクハゼなどなど。

 

まさかとは思いますが、一応聞いてみました。これってKOTOBUKIの水槽じゃないですよね?「よくわかりましたね。おっしゃる通りですよ」(谷さん)。えー、マジ(笑)?しかも12本も。まさか徳島最南端でKOTOBUKIの水槽と出会うとは。まるで帰郷後に小学生の同級生とばったり再会したような懐かしい気持ちになりました(笑)

 

もしかして?と思ってさらに覗き込んで見ると、おお~LEDスリムではありませんか!スミマセン、かなりマニアックな覗き方をしてしまいました(笑)

◆スタッフ自らが個体採取

横道に逸れて興奮さめやらぬ汽水域ゾーン(笑)。気を取り直して、いよいよ水族館のメインである海水域ゾーンに突入。まずは「ふれあいコーナー」から。

 

ここはいわゆるタッチプール。ちょうどスタッフの木村素子さんによるお食事タイム。イセエビやカワハギ、クエ、チョウチョウウオ、ケアシガニ、ヒシガニなどなど、実に多彩。これらの個体はほぼ竹ヶ島周辺の海域で採取されたものばかり。しかもスタッフ自らの手で。ちなみに、スタッフの中には親が漁師だというケースも多く、魚を獲る血筋は争えません(笑)

 

「これ、私が採ってきたんですよ!可愛いでしょ?!」と木村さんが指差す先にあるのは、円柱水槽でぷかぷか泳ぐタコクラゲ。え、自分で確保?「はい、朝うちの近くの海岸にいたので、杓ですくってきました(笑)!」とうれしそう。その後、タコクラゲ好きの木村さんのことを噂で聞きつけて、地元の漁師さんがビッグサイズのものを持ってきてくれたのだそう。で、なぜタコクラゲが好きなのか理由は聞けずじまいでした(笑)

 

円柱水槽には、さらに何やらアヤシイ個体が1匹(笑)。聞いてみると、谷さんが採取していたウミウシなのだそう。ウミウシってもっと小さいものだと思っていたので、こんなビッグサイズもいたとは意外でした。採取後は、生命の危機を感じたら産卵するといわれている通り、卵を産みました。もう大丈夫、生命の危機はここにはないからね(笑)。館内にはほかにもウミウシだけを飼育している水槽があり、飼育が難しいといわれながら好環境で元気に育っています。

 

ゆうゆうと泳ぐシロボシテンジクザメが2匹。1匹は地元の漁師さんプレゼンツ。もう1匹はスタッフがプロレスの技 でゲットしたのだそう。さすが相手がサメだけに、ジョーズに採取できました(笑)

 

ちなみに今年9月に2匹の赤ちゃんが産まれました。おお、この水槽もKOTOBUKI製。

 

ゴマモンガラ、ルリスズメダイ、ヨスジフエダイなどの小型魚がいる30㎝水槽。ん?さっき見た汽水域ゾーンと展示テイストが似てますが。このゾーンの水槽もやはりKOTOBUKI製でした。この勢力たるや一体(笑)?

 

さらにさらに、クマノミやイソギンチャクのいる7本の水槽もオールKOTOBUKIでした。こうしてみるとKOTOBUKIの水槽は館内で20本以上。しかもほかはすべてアクリル水槽だったので、館内のガラス水槽のシェアは100%でした。たぶん(笑)

◆海水を直接引いた「かけ流し」

さっきから思っていたんですが、どの水槽も水がとってもきれい。ましてや海水なのに、濁りもなく透明度もgood。もしかして昨日大掃除しました(笑)?「海水を直接(水族館まで)引っ張ってきてるんです。いつも水がきれいなのはきっとそのせいだと思います」と谷さんがサラリと。えー、そうなんですか!これまたオドロキ。今日は色々とオドロキの多い日になりました(笑)。しかも、海水をくみ上げてそれぞれの水槽に配水するまでの配管もすべてスタッフで手がけたと聞き、オドロキを通り越してもう尊敬(笑)!

 

何気ないこのプールを見ていると、その仕組みがわかります。水深7mから取水された海水はいったんここでライブロックによってろ過され、各水槽へ配水されていきます。いわば、このプールはろ過槽の役割をしていたのです。さらには、海から採取されたばかりの魚たちの一時預かり所でもありました。仕組みそのものはシンプルなんですが、それをスタッフ自らが手作業で組み上げていったとは恐れ入りました。

 

スタッフはこの仕組みのことを「かけ流し」と異口同音。ああ、循環式でなくかけ流し。温泉に例えたことで、意味がよくわかります。今では「かけ流し」の水族館も珍しくなってきましたが、お金をかけずにスタッフ自らが設備をつくった水族館としては、全国的にも珍しいケースです。

 

まさに海水魚ユーザーにとっては、うらやましすぎるシステム。かけ流しによってメンテが楽で水が汚れにくいというメリットはもちろん、魚が生育している海域の海水を使っているため、病気をすることもほとんどありません。また館内には水族館特有のにおいがほとんどありません。もしかしたら、これも常に新しい海水が配水されるかけ流しのおかげなのかも知れません。

 

何やらギーコギーコと騒がしい(笑)。よく見ると、コの字型になったパーツが上から円柱水槽をかき回しています。こうした増波装置を、金属むき出しのまま展示しているのもユニークです。この水族館にはバックヤードというものがありません。言ってみれば、館内のすべてが展示エリアでありバックヤードでもあるのです。

サンゴの産卵も活発

そしてゾーニングはクライマックスのサンゴ育成ゾーンへ。

 

メイン水槽の長さは2m。ハリセンボンやミツボシクロスズメダイ、ギンタカハマガイ、オニハタタテダイなどの海水魚がゆうゆうと泳いでいました。

 

この水槽は竹ヶ島の水床湾の水域を再現したスペシャル水槽。特筆すべきは、同じ海で育ったトゲイシサンゴやエダミドリイシサンゴなどのサンゴまでが魚と同居している点。これもかけ流しならではの光景です。ダイナミックなサンゴのたちのショー。これがホントのサンゴショー(笑)

 

この水槽はやっぱり人気が高く、いつまで経ってもこの場を離れない人が少なくないそうです。海水魚をたくさん飼育している人や、サンゴの飼育にうまくいってない人たちがヒントを求めてやってきているのかも知れません。大丈夫です、サンゴのスペシャリストがたくさんいるのでお気軽にお声がけくださいね。

 

まるで盆栽のようなこれらは、いわゆる稚サンゴ。すでに3年経過しているのにこんなミニサイズ。ということは、通常水族館やアクアショップでお目にかかるサンゴは相当年数が経っているものばかりだということがよくわかります。

 

エダミドリイシサンゴの稚サンゴ。ミニチュアでつくられたケーキ屋さんのよう。きっとインスタ映えするだろうな~(笑)。ついでに言えば、サンゴには寿命がないってことを今回初めて知りました。寿命ゼロ。こんな生きもの、ほかにいましたっけ(笑)? 近い将来、サンゴのエキスを抽出して人間に投与すれば長生きできる時代がくるかも知れません。

 

ここにもライトアップされたサンゴ水槽が。赤いライトで照らし出されたイボヤギやカワラサンゴのほか、ケヤリムシやフウライチョウチョウウオ、クツワハゼなども。何度も言いますが、魚もサンゴもほとんどが近海で採取されたものばかり。単なる水族館施設としてだけでなく、サンゴの移植を通じて環境保全のための研究機関としての一端も担っています。

 

「うわ~、3匹が一緒に並ぶなんてめったにないんですよ~」とテンション上がり気味の木村さん(笑)。ハナミノカサゴ2匹(中・右)とキリンミノカサゴ(左)とが競演。12月も近いことだし、ついつい紅白歌合戦でド派手な衣装でパフォーマンスする女性演歌歌手を連想してしまいました(笑)

 

ライトに照らされていきいきとする色とりどりのサンゴたち。「将来は、大人の水族館もしたいんですよ~。水槽の前でコーヒーを飲みながら、幻想的なサンゴをゆっくり見れる大人の時間をぜひ」。某コールセンターに勤務していた前職時代、外がまったく見れなかった職場にストレスを感じこの仕事に飛び込んだ木村さん。行動的かつ色々なアイデアが飛び出してくるのは、季節がわかる健康的なシチュエーションで毎日をすごしているからに違いありません。

◆水族館の原点は海にあり

海中観光船「ブルーマリン号」の最終便に乗船。水族館で見たサンゴや魚たちが竹ヶ島の海域でどんなくらしを送っているのか、実際に見られるのは大きな魅力です。

 

操船するのは館長の奥村正俊さん。いったんはこの地を離れて大手自動車メーカーでエンジンの組み立てを行う仕事に就いていましたが、谷さん同様やっぱりこの海の美しさが忘れられなくて海陽町にUターン。元々家業が漁師だったこともあり操船はお手の物。刻々と変化する天候や潮を読みながら、サンゴが一番見えやすい位置を選んでアシスト。竹ヶ島海域を知り尽くしている20年以上のベテラン船長ならでは。

 

まるで宇宙船のようなブルーマリン号の内部。左舷側・右舷側からそれぞれ海底を観察することができます。

 

観光船による海底観察は夏っぽいイメージがありますが、ベストシーズンは実はこれから。11月終わりごろから1月にかけて一番海水がきれいだとは、意外でした。特に午前中がおすすめだそうで、お出かけの際の参考にぜひ。

 

竹ヶ島海域公園1号区域を航行するブルーマリン号。やや黒く見えるところがサンゴの群生地。★

 

茶色に写っているのがウミトサカ。

 

手前の蜂の巣のようなかたちをしているのがシコロサンゴ。周辺にはきれいなブルーのソラスズメダイの群れもいます。

 

こうしてみると、島々の上空から空中散歩している気分です。サンゴがこんなに間近で見られるとは知りませんでした。

 

船を傷つけることなくサンゴぎりぎりまで近づけるのは、奥村館長の髙い操船技術のおかげ。でもやっぱりこの季節は透明度がイマイチで、それだけがちょっと残念でした。

 

条件が整えば、海底はこんなにきれい。いずれも9月に撮影されたもので、シコロサンゴとソラスズメダイがいたり、キンギョハナダイがいたり。まさに水族館で見た世界がそのまま海底でも繰り広げられていました。★

 

こちらは12月に撮影されたもの。ソラスズメダイが群がるエダミドリイシサンゴは、水族館のメイン水槽にもありました。★

 

こんなに素晴らしいサンゴを保全する意味でも、水族館で展示・育成してみては?と発案したのが奥村館長でした。「毎日船に乗っていると、季節や水温の違いで変化するサンゴの健康状態がわかるんです。減ったり増えたりするサンゴもありました。普段は海の底からでしか見れないサンゴを、水槽でうまく飼育すればいつでも誰でも見ることができますから」。結果、スタッフ全員の高いモチベーションにより手作りであなりがらここまで完成度を高めることができました。サンゴや魚同様、スタッフたちも大きく成長してきたことでしょう。

 

あそうそう、てっきり言うのを忘れてました(笑)。手作りの水族館立ち上げから今日に至るまで、陰ながら技術的なサポートをしてきたアクアリウムテクニカルアドバイザー・林 徹さんの存在も見逃せません。取材の日、偶然に居合わせたのですが名刺交換しただけで、そのあとどこへ行ったやら(笑)。いずれ時期をみて「キワメテ!水族館」でも紹介しますのでお楽しみに。

 

水族館を見るのが先か、ブルーマリン号でホンモノに触れるのが先か。おすすめは、まず水族館で予備知識を持ってブルーマリン号でホンモノに触れ、下船後もう一度水族館でおさらいというパターンがベストだと思います。

 

奥村館長の発案が実現した「島のちいさな水族館」。透明度の髙いサンゴの海が見られるのはこれからです。

 

その名の通り、島にある小さな水族館には違いありませんが、やっていることは全然小さくなんかありません。堂々と胸を張って「かけ流しサンゴ水族館」とでも名称変更しちゃいます(笑)?

=島のちいさな水族館提供

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