オープン後3カ月少し。至って順調。何もかも計画通りで、笑いが止まらなかったりして。特筆すべきは、プロショップと総合ペットショップとの融合がことのほかうまくいきました。その成功の陰には、前職の経験が大きくモノを言っています。
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◆チーム「相棒」
ショップの最前線を支えているのは、もう一人のスタッフ・阪東朋紀さん。専門学校時代の同級生で同い年。ずっと仲がよかったのだそう。専門学校卒業後は、誰もが知る総合ペットショップに就職。そして開業を機についに合流。キター!「彼がいなかったら独立できていなかったです」と森田さんをいわしめたほどのスペシャリストなのです。
ちょっとこっち向いて~。実にいい笑顔。森田さんとはキャラが違いますが、お客さんにも受けがいい阪東さん。テリトリーはあくまで「現場」。現場にこだわり、メンテを中心にアクアショップの生命線でもある生体の管理を一手に引き受けています。
プロショップと総合ペットショップというターゲットの違うところで培ってきたお互いのノウハウが合致。店の大きな強みとなっています。初心者からマニアまでフレキシブルに顧客対応できているのは、こうしたバックボーンがあったからなんです。
◆圧巻のプレゼンルーム
ひと通り取材も終わって、そろそろと思いきや「ぜひ2階も見て行ってください!」。おお、2階があったとは知らなんだ。確かによく見たら、正面から見て左側に階段が。「もともと2階のある物件を探してたんです。売り場とは別に、カッコいい空間が欲しかったからなんです」。
階段を上がると、そこは異次元空間。これはヤバい。数個の水槽が並び、まさしく妖艶な世界観。思わず息をのむシーンに圧倒されっぱなしでした。
プレゼンテーションルームのような、ショールームのような。なるほど、ここを見てもらいたかったのですね。わかる!
どのレイアウト水槽も森田さんが手がけたものばかり。この光景、実にヤバすぎ。そのひとつひとつのシーンに、森田さんの思いがぎっしり詰まっています。
巷の水族館がカッコよくてビューテホーなのは当たり前。そう、アクアショップでこんなシチュエーションに出会うことが、最大のワクワク。テンションが上がらないはずがありません。
◆水槽コンテスト風
アマゾン川の大自然をイメージした水槽。あえて水草をほとんど使用せず、インパクト重視かつシンプルにフォーカスしたのが印象的。
メインキャストはトップフィンブラックバンデットミレウス。
こちらは山岳のイメージ。成育が難しい複数の水草を巧みに構成。ダイナミックな地球の営みを感じさせてくれています。
カージナルテトラが脇役として、まるで太陽のような存在感を放つスーパーマルボロ レッドディスカスを引き立てています。「いや、カージナルテトラがメインなんですけどね(笑)」。
東南アジアのシーンをイメージして水槽に投影。これぞザ・熱帯魚ともいうべき、壮大なアクアロマンを感じさせてくれています。センスよすぎ。
ほかにも情景をコンパクトにまとめた小型水槽が数点。
あらゆるライフスタイルを想定したさまざまなアクアシーンが惜しげもなく。
ベタやハイフェソブリコンアマパエンシス、国産グッピーなどをそれぞれの水槽に配して、プレゼンテーションを展開しています。
アクアリストの技量に応じたパフォーマンス。ああ、こんな世界をつくりたい!と思わせたら勝ち、っちゅうわけですね。
アクアリストの好奇心をとことんくすぐるスペース。いつまでもここにいたくなる安心感。実に不思議な空間です。森田さんがこうしたいと頭に描いたことが、しっかりかたちとなった結果でもあります。
◆前職で学んだこと
店内の奥では、動画配信サイトに投稿したPR動画が大型モニターに映し出されています。今やSNS全盛の時代。SNSなしでの広告活動はあり得ません。「こられたお客さんに必ず聞くんですよ、何をご覧になってこられましたか?って。それが情報収集にもなり販促の分析にもなるんです」。計算高い男、ではなく、計算できる男なのです。
かつての趣味が嵩じて、フォトグラファーとしてのテリトリーにも進出。店のウェブサイトやSNSなどの写真を見ていると、若い世代ならではの視点が被写体をより引き立たせているのがわかります。あ!アクアフォーカスという店名も、そんなコンセプトが盛り込まれた結果だったのですね。気づくの遅っ。
もちろん生体だけではなく、モデルや動物、園芸、カレンダー、クラブDJなど撮影ジャンルは多岐にわたっているほか、「アノ有名なレイアウト水槽コンテストに出品するための撮影も請け負っています。アノコンテストは写真がすべてですから。比較的リーズナブルな価格で対応していますので、ぜひアノ時はお声がけください」。だそうです。
◆夢のその先へ
聞くところによると、お父様も堺市内で自営業なのだとか。自転車部品の製造という、まさに堺の地場産業に携わっておられます。「将来的には合体して、さらにブラッシュアップしたいなと。まだ先の話になると思いますが、いずれ実現させたいと思ってます」。個人ではなく最初から会社組織にしているのも、そういった将来を見据えた戦略のひとつなのかも知れません。
色々話を聞いていると、前職で学んだことが随所に生かされているような気が。「それは間違いないです。仕事が楽しくて仕方なかったですから。濃い6年間で自信がついたんです。退社する際、会社も後押ししてくれましたし、今となっては感謝しかありません」。
そのころからのつきあいのあるリピーターも少なくありません。その分期待も大きい。だから裏切れない。彼ならプレッシャーをプレッシャーと思わず、とことん楽しんで結果を出してくれることでしょう。フルスロットルで。
ウリはやっぱりカラシン。「カラシンはもともとアマゾン川などで泳いでいた魚ですが、それを水槽内で飼育するということにロマンがあります。色揚げを楽しんだり、ブリーディングやコレクションなど楽しみ方は色々ですが、そんな奥の深いアクアリウムという趣味を広く提案していきたいと思っています」。※写真はハイフェソブリコン コンドテンシス
いつの間にかこんな時間に。車道から見える景色もカッコいい。これにて本日の取材、閉店ガラガラ。もはやアクアフォーカスしか勝たん!