「日本ベタコンテスト2024」で2年連続総合優勝を果たした西原大輝さん。おうちではさほど大きくない規模の環境でワイルドベタを自家繁殖し、来年に向けて早くも始動中です。コンテストで経験したことが、いかにワイルドベタの飼育につながっているか。ベタユーザーでなくても必見!
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◆コンテストで学んだこと
西原さんがベタという魚を知り、コンテストに初めて出品したのが2019年。この時はワイルドベタではなくプラカット(オス)のコレクター部門でクラス優勝。同時に、ショーベタ(メス)の自家繁殖による部門で3位入賞を果たしました。「3位ではありましたが、プラカットのクラス優勝より自家繁殖の魚が入賞したことのほうがうれしかったです」。当時はワイルドベタでありませんでしたが、これを機にいよいよ自家繁殖の道を進んでいくことになったのです。※
今から5年前の西原さん。どことなく初々しさが漂っているような気が。
この年、西原さんはコンテスト会場で大きな衝撃を受けました。総合優勝したワイルドベタがあまりにもダイナミックで美しかったから。「もうビックリでした。地味でありながらカッコよかったんです。今までショーベタしか知らなかったんですが、これを機に本格的にワイルドベタを飼おうと決心したんです」。これがワイルドベタとの最初の出会い。アクア人生の大きな分岐点となった瞬間でもありました。※
翌年、初めてワイルドベタを出品したものの、残念ながら入賞すらできず。そして、またしてもコンテスト会場でこんなワイルドベタが目にとまったのです。「コッキーナグループでした。これまたカッコいいなあと、めっちゃ刺激されました(笑)。これでまた新たな目標ができました」。自分の戦績もさることながら、ほかの出品者がどんな魚を出しているのか。西原さんの関心は常にそこにありました。※
◆飼育方法を根本から見直し
続いて2021年も、結果が残せませんでした。2年連続の敗北。きっと今の飼育に問題があるに違いない。そう感じた西原さんは、今まで見たことのない大きいワイルドベタと遭遇、これまた衝撃を受けました。「ワイルドベタで勝とうと思えば、大きくしないとダメだと気づいたんです。これからは、ショーベタと同じように水替えを頻繁に行い、エサもたくさん与えてMAXを目指そうと誓いました」。※
飼育方法を根本から見直した西原さん。ショーベタのように飼えばいいんだ、と。2年間受賞とは縁がありませんでしたが、飼育方法を全面的に見直したことで2022年に泡巣タイプ中大型種クラスでクラス優勝(ベタ・スマラグディナ)を果たしました。同時に、西原さんにとってワイルドベタ初入賞となった記念すべき年でもありました。※
そしてついに2023年、念願の総合優勝に輝きました(ベタ・ファルクス)。初出品から4年。ワイルドベタに目覚めた西原さんがついにテッペンをとったのでした。※
さらに今年、またしても総合優勝を成し遂げ、前代未聞のワイルドベタ2連覇を達成したのでした。この時に出品したベタ・ファルクスは、前年で総合優勝した兄弟魚。「2023年のコンテストに出そうかどうか迷って結局出さなかったんですが、1年間しっかり飼い込んで成長させることができました。焦らなくてよかったです」。しかもコンテスト会場で求愛行動も見せるなどして、審査員や来場者を驚かせました。明らかに前年を上回るクオリティーの高さ。「西原黄金時代」を予感させるようなインパクトのあるコンテストでもありました。※
◆水替えとエサは積極的に
あれから半年あまり。今年総合優勝を果たしたベタ・ファルクスは、おうちでもこんなに仲良し。この世知辛い世の中で、何だか癒されるシーン。この魚は前年に優勝した魚の兄弟魚ですが、「コンテストに出す前から手応えを感じていました」。
一方、去年総合優勝したベタ・ファルクス。兄弟魚だけあって、色や体型が確かに今年の出品魚とよく似ています。「オス・メスともに、性成熟後は大きくなるようしっかりエサを与えています」。エサは冷凍アカムシを主食としていますが、理想の体をつくり上げていくためのエサは惜しみません。
ちなみに、ワイルドベタは硬いエサは好まないのだとか。「一度口にしてもすぐに吐き出してしまうので、固形のエサを使う場合は柔らかいものを選ぶようにしています」。
水槽がどれもきれいなのにも理由があります。「ワイルドベタって環境にデリケートなんですよ。なので水替えはほぼ毎日やってます。菌にも弱いので、特にフィルターの中で菌が繁殖しないように気をつけています。エサ同様、水替えもガンガンやってます(笑)」。最初水槽がきれいと感じたのは、そういう配慮があったのですね。
まだまだたくさんノウハウを持っている西原さんですが、こうした情報はやっぱりSNSで?「いやいや、SNSの類は一切やってないんですよ!」え、マジ?「ネットの情報はあまりアテにしてなくて。どれが正しい情報かどうかわからないですから」。人の意見に左右されることもなく、こうだと思ったらとことん突き進んでいくタイプ。お母様、やっぱり頑固でしたね。
◆すべてはコンテストのために
前編で紹介した梅酒用ビンでは、来年のベタコンテストに出品できそうな魚を中心にピックアップして飼育。
一部の魚をプラケースで飼育している理由は?「コンテストでは出品魚をプラケースで展示されているので、会場の環境に慣れさせるためなんです。出店候補魚は3カ月くらい前からプラケースで飼育しています」。ああ、言われてみれば確かに。「それに、プラケースで飼育し始めると、ヒレの状態もチェックできるんです。さらにプラケースでのストレスにも慣れさせることで、色が抜けにくい魚を見つけることもできるからなんです」。デリケートなワイルドベタだからこそ、環境に慣れさせることができれば怖いものはありません。
そういえば照明器具がないですね。「わざとそうしているんですよ(笑)」。というと?「コンテスト会場が比較的暗めなので、あえて照明器具は使わないようにしているんです」。へ~、そんな話初めて聞いた。まさに目からウロコ。あんなこともこんなことも、すべてはコンテストで勝つため。西原特急、走り出したらもう止まりません。
今年総合優勝したワイルドベタがコンテスト中に求愛活動をしていたのも、ストレスなく普段の環境が維持された結果でした。自宅の飼育環境がホームグラウンドではありますが、気持ちはすでにコンテスト会場。出品魚にストレスを与えないための各種こだわり。西原さん、ワイルドベタ愛が強すぎます。
◆西原コレクション
過去のベタコンテストで一目惚れしたコッキーナグループ(泡巣タイプ)。とっても気が強く、小さい水槽ながら10匹以上を過密飼育。オスとメスの判別が結構難しいのだそう。
ベタ・ルティランスグリーンの子魚。
ベタ・アピアピ。こちらはメス。丈夫で飼いやすく、世界最小のベタともいわれています。
とっても仲良しのベタ・デニスヨンギー。比較的性格はおだやかで、ワイルドベタ入門編としてもおすすめ。
ベタ・ブルディーガーラ。ワイルド個体でのサイズとしては、まだ小さいほう。
隠れ家からひょっこり顔を出すエディサエ。
ベタ・エディサエの子魚たちも元気に成育中。
そして来年のコンテストに向けて育成中の魚のひとつ。ネタバレしちゃうけど大丈夫?「全然OKです!」。
西原さんが目指したい理想のワイルドベタとは。「まずは胸ビレが平行にシュッと伸びていることです。そして体長・体高も大きいこと。やっぱりワイルドベタは大きいカッコいいですから」。
プレバトファンの西原さんに言わせれば、「ショーベタは、桜のように華やかでパッと咲いて終わる。かたやワイルドベタは地味ながら新緑のように楽しめる時間が長い」。う~む、思わず唸ってしまいました。いずれにせよ、ワイルドベタの知名度アップのために、西原さんのコンテスト人生は始まったばかり。毎年出品するんですよね?「もちろんです!」。西原黄金時代は当分続きそうな予感。
◆バレンタインにオヤニラミ?
子どもたちがテレビゲームに興じていても、まったく違和感のない「水槽のあるリビング」。自家繁殖のフィールドとはとても思えません。
独身のころ、バレンタインデーにチョコの代わりにオヤニラミを贈ったという奥様の知子さん。昔も今も、西原さんの趣味をしっかり支えています。このエピソードを掲載することに最後まで抵抗していた奥様でしたが、載せちゃいました~。
今年のコンテストでは親子3代揃って来場するほど、家族間の息はピッタリ。
コンテストに出せる魚かどうかの基準は、「水槽を眺めながら2時間くらい美味しい酒を飲める魚かどうか」だって。ちょっとカッコよすぎません?
この日は、近くに住む西原忠雄さん・千春さんご両親も同席。3人の子どもたち(左から長女の華音さん、次男の大和さん、長男の楓翔さん)も最後まで大人の世界につきあってくれました。あそうそう、お父様の忠雄さんも昔はアクアリストだったそうです。詳しく話を聞けずにごめんなさいでした!
はいオッケ~!まるで幸せを絵に描いたようなアットホームな家族。こんなおうちで育てられたワイルドベタたちも、さぞかし幸せでしょう。
しかも偶然にも、今年7月にご紹介した寝屋川市の藤本病院でこれまた3世代が出産でお世話になったそうな。当時からあれだけ多くの水槽があったかどうかは不明なのだとか。いやいや、アクアつながりって面白すぎます。
ただ自分の成績にこだわるだけでなく、ほかの出場者のベタをしっかり観察してさらに上を目指してきた西原さん。それを結果に残してきた努力はさすがです。「これまでの自分の飼育方法が間違っていたことも、コンテストで気づかされました」。入賞のできなかった2年間、それらを見直し修正できたのも、コンテストで勝ちたいという強い思いがあったからにほかなりません。
さらに、「コンテストを通じて、ショーベタやワイルドベタのことをもっと知ってもらいたいです。1匹からでも飼育できますし、省スペースでも飼育できるのがベタのいいところですから」。西原さん、すっかりベタの伝道師。そういえば取材の帰り、奥様が「今までの取材で一番印象に残ったのは?」と聞かれて某所を答えたんですが、訂正します。今回の取材先が間違いなくテッペンです!
「1,000人くらい出品するコンテストになって欲しいです!本気でそう思ってます(笑)!」。
ですって♪
※=ベタショップ・フォーチュン提供