2年後に創業60周年を迎えるKOTOBUKI。そして、去年創刊10周年を迎えた「キワメテ!水族館」。いよいよ次号から新しい誌面がスタートします。スペシャルインタビューの後編では、本誌に求められていること、あるいはKOTOBUKI が目指す方向性などを、引き続き瀬川豊代表取締役社長に語ってもらいました。
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◆有効な広報戦略として
――アクアリウムWEBマガジン「キワメテ!水族館」は、おかげさまで11年目に入りました。
「時間がある時に見てますけど、それぞれのコンテンツが読みやすくて面白いですね。ジャンルに関係なく情報が盛り沢山ですし、人脈の豊かさを感じます。そうそう、自分の名前をググってみるといつも上位にヒットするので、ちょっと照れくさいです(笑)」
――9年前のインタビュー記事ですね。ヒットするのはよく読まれている証拠です(笑)
「今はネットが当たり前になって、どこにいても情報が簡単に入手できるようになりました。これをさらにワンランク上のプロモーションとして、有効に活用していきたいと思っています」
――今回のリニューアルに至った背景についてお聞かせください。
「創刊当初から当社が10年サポートしてきたわけですが、この間大きな自然災害があったりコロナ禍であったりと、アクアを取り巻く環境は厳しいものがありました。時代のニー ズやライフスタイルも少しずつ変わり、10年という節目を迎えて一度原点に立ち返ってみようと考えました」
――少子化や住宅事情など、アクアは社会変化の影響を受けやすい趣味なのかも知れませんね。
「初心者は馴染みやすいように、経験者は熱量が冷めることなく末永く継続していけるように。メーカーとしては、ユーザーに対する寄り添いかたにも変化が求められているような気がします」
――問われるのはユーザー目線の必要性ですね。
「かつて販売店のスタッフとして感じていたことと同じです。商品化も営業戦略も、ニーズを的確にとらえたものでなければなりません」。
――そこが原点ですね。
「そのために、既存の従来商品をもう一度見直してみる必要があると考えたんです。そしてそれらを読者のみなさんに再発信していく必要があると。今回リニューアルに至った背景には、そういった理由がありました」
◆KOTOBUKI再発見
――水槽用品メーカーとしての歴史があり商品も豊富なだけに、読者のみなさんが知らない情報も多々あるでしょうね。
「その手始めに、従来商品の掘り起こしから始めようと考えました。これまで販売されてきた商品の開発エピソードやセールスポイント、あるいは商品づくりに賭けるスタッフの思いなどを、誌面を通して伝えていこうという試みです」
――ニュアンス的には「KOTOBUKI再発見」ですね。
「今回のリニューアルでは、最もユーザーに近い立場の営業スタッフが情報発信の中心となる予定です。営業スタッフがこれまで耳にしてきた商品の使用感や実際の効果など、ユー ザーサイドからの声もピックアップできれば、読者にとってよりリアルな情報となるのでは、と」
――結果的に商品開発や販促につながります。
「しかも、これまでになかった新しい〈KOTOBUKIらしさ〉を積み上げていくことにもなり、新しい空気を呼び込むことになるかも知れません」
――カタログのスペックや写真だけではわかりづらい商品のディティールにも踏み込めますね。
「広告的なテイストではなく、いわばジャーナリスティックな視点で商品を検証することで、従来から行っている新製品紹介とはまた違ったコンテンツになることが理想です」
――「キワメテ!水族館」がショールーム的なポジションを担い、それが結果的に有意義な情報イコール購買意欲へスイッチできればいいですね。
「大切なのは、やっぱりユーザー目線を忘れないこと。今回のリニューアルを機に、媒体とメーカーとの連携を強化しつつ、読者のみなさんとの距離も縮めて唯一無二のパフォーマンスを構築していこうと考えています」
――今回のリニューアルの趣旨、よくわかりました。
「従来のようなアクアショップやアクアユーザーの紹介などはいったんお休みになりますが、KOTOBUKIが出展するエンドユーザー向けのイベントや商品提供などが行われる協賛イベ ントなどは、これまで通りアナウンスしていく予定です」
◆新しいカギ握る「実験部門」
――最近の新しい試みといえば、数年前に研究・実験室が新設されましたね。
「そうなんです。水槽やライトなどハード面における耐久性や明るさなどを実験するセクションはこれまでもありましたが、生体に与える影響などを行動学的観点や試験・検証を行える設備は今までありませんでしたし、そんなことができるスタッフもいませんでした」
――難しく大変な作業でしょうけど、スタッフにとってはやり甲斐のある仕事ですね。
「スタッフのスキルがさらに生かせるよう環境を整えて活躍してもらっています」
――たとえばどのような実験を?
「今春発売されたばかりの人工水草〈ベタの水草〉については、水草を見つけてそこで休息するベタ特有の習性に関する実験を行いました」
――根気のいる作業ですね。
「時間軸を中心に、水槽の細部に至る動線を四六時中追いかけて数値化し、どの種類のベタがどのタイプの人工水草を好むか、などといった実験を繰り返し行いました。実験で得られたデータはデータとして終わるのではなく、販促を後押しする説得力のあるセールスポイントになるものと、大きな期待を寄せています。これはほんの一例ですが、実験による科学的根拠は未来に向けた重要なファクターになると確信しています」
――商品開発・営業の2セクションに、実験という新たなディビジョンが加わったのは大きいですね。
「大きなアドバンテージになることは間違いありません。実験に携わるスタッフは社内では最も生体に接していますので、今後の商品開発にも大きなメリットがあると思います」
◆より安全に&使いやすく
――最近の商品開発では、安全性が重要視されているような気がします。
「そうですね、特に地震に関してはナーバスにならざるを得ませんから。それは過去の大地震の結果が物語っています」
――特に水槽台関連は顕著ですね。
「今春発売した〈スリムラック〉や〈プロスタイル〉は、いずれも水槽を置く場所としての安全性や耐久性が大きなセールスポイントになっています。そのためには、自社の実験室とはまた違った公的機関に持ち込んで実証検査を行っています。デザインや使い勝手も大切ですが、まずは水槽用品の安全性と安心感。それはメーカーとしての責任でもありますから」
――両商品とも、初心者でも十分組み立てられそうです。
「組み立てやすくて使いやすい。わかりやすい。そして、趣味として始めやすい。KOTOBUKIは、あくまでユーザー目線に立ちながら、アクアリウムユーザーをはじめ、その周りの人の生活にまでロマンの創造を提供できる会社でありたいと思っています」
――60年近く携わってきた水槽用品へのこだわりは、これからも持ち続けて欲しいです。
「KOTOBUKIの水槽は安心して使える、と言ってもらえることが何よりの励みになりますから。買い換えたいけどなかなか壊れない、と仰る声があるのはうれしいのですが複雑な心境ですが(笑)」