廣岡さんと初めて会ったのは、2年前。奈良めだか倶楽部主催のグッピーコンテスト会場でした。同行していた小学4年生の愛娘・柚月(ゆづき)ちゃんも、来年はいよいよ中学生。そろそろ親離れ・子離れが気になる年頃ですが、グッピー熱は不変。去年、廣岡さん自らが立ち上げた、みえGUPPY倶楽部。類まれなる父娘ユーザーの近況に密着してみました。
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◆忍者の里にグッピーあらわる
思えば遠くへ来たもんだ。そんなフレーズが似合うローカルな駅に到着。三重県伊賀市。伊賀というと誰もが思い浮かべるのが忍者の里ですが、あとで聞いてみると地元の人たちにとってそんな意識はほとんどないそうです(笑)。
最寄り駅まで車で迎えにきてもらい、約15分ほど走ったところの住宅地に廣岡さん宅がありました。早速部屋に通してもらって目の当たりにしたのは、整然と並べられたグッピー水槽でした。メインのガラス水槽と、育成用のプラ水槽が並んでいます。
水槽は壁一面に。ざっと50本。2年前にコンテスト会場で会った時は確か計20本と聞いていたので、この2年間の間に倍以上増えたことになります。
おうちも水槽もピッカピカ。水槽以外はベッドが置いてあるくらいで超シンプル。テレビやオーディオもナッシング。まさに廣岡さんの「幸せ部屋」。仕事から帰ってきて夕食と入浴を済ませたら、さっさとこの部屋に入ったきり朝まで出てこないのでしょうか(笑)。
◆グッピーと車とどっち優先?
10年前に27歳の若さで念願のマイホーム。絵に描いたような家族水入らずのライフスタイル。そこへ突然のグッピー登場。廣岡さんとグッピーとの出会いを聞いてみました。
――そもそもアクア歴はいつくらいから?
「小学3年生の時、家にはすでにグッピーがいました。当時外国産のグッピーが大半で、いずれも父が飼育していました。90㎝の水槽で、色々なグッピーを混泳させていたのを覚えています」
――最初からグッピーだったのですね。
「その後自分がやり出した時は、エンジェルフィッシュやネオンテトラを飼っていましたし、高校生のころにはブラックアロワナがいたこともありました。しかも90㎝水槽で」
――90㎝水槽でアロワナを?
「アジアアロワナと違って、体を器用にくねらせて泳いでいたので、90㎝でも大丈夫でした。でも高校を卒業してからは、アクアは完全にやめました」
――ほかに興味のあるものが出てきたに違いない(笑)
「車にハマってしまったんです(笑)。お金もすごくかかるし、アクアとは完全に縁がなくなってしまったんです」
――またアクアが復活したのは?
「結婚して家を建てた時がきっかけでした。ネオンテトラからの再スタートでした。といっても、玄関に30㎝の水槽を置いていただけ。せっかくマイホームが完成したのでいわばインテリアとしてのアクアでした」
――グッピーは?
「ある日、ホームセンターで国産グッピーに出会ったんです。色もきれいだし丈夫そうだし、今までは外国産しか飼育経験がなかったので、すごく興味がわいてきたんです。なので車の趣味も少しずつ減らしていきました」
――マイホームを手に入れたのだからコストダウンは必然ですしね(笑)
「はい(笑)。で結局どんどん増えていって、今に至っています。もちろん車の趣味も完全にやめました」
◆廣岡式エアポンプシステム?
オール国産グッピー。もちろん繁殖も好調。色々と調べているうちに、遺伝子のことを覚えてからますますグッピー沼にハマっていったという廣岡さん。自宅の飼育環境では、さまざまな工夫がされています。
ひときわ印象的なパイプが横一文字に。これは一体?「エアレーションを水槽個別に行うのではなく、一括してやってるんです」。これらはアクア用品ではありませんが、市販品をシステマチックに組み合わせて作動させているので、すべてハンドメイドということになります。
よく見ると小さな開閉可能のコックがあり、そこから個別の水槽にエアが送られる仕組みです。
水槽のずーっと奥にチラッと見えるオレンジ色の機械が、エアレーションの心臓部。このブロアーから、それぞれのパイプを通ってエアが送られる仕組みです。ナイスなのは、コンセントが1個で事足りるという点。なるほど、それならアクアにありがちな電線あるあるも解消されるというわけです。
ユニークなのは、個々の水槽に置かれたこれ。パイプやホースを通ったエアは、ここに集中してブクブクが発生。砂利・鉢底マット・ネコよけマットの3点セットが、逆さにしたフィギュア用プラケースにインストールされています。こんな説明でわかります(笑)?
これによってバクテリアも比較的簡単に発生させることができ、水槽全体が汚れにくくなるというメリットも生み出しました。水槽がきれいだなと最初から感じていたのは、この仕組みのせいだったのですね。
どのガラス水槽にも同じものをセット。水族館かショップなみにパーフェクト。器用すぎる廣岡さんですが、「いやいや某動画投稿サイトで見つけた方法なんです」と正直者(笑)。
棚をつくる時などによく使うL字型の金具で、市販の照明機器を支えています。色々手先が器用なのは、かつて車が趣味でエンジンなどを色々いじっていたからでしょう。芸は身を助ける(笑)。
◆大きな刺激になったグッピーコンテスト
廣岡さん親子と初めて出会ったのは、2年前の第30回グッピーコンテストでした。初出品の人を探していたら、いい感じの仲良し父娘の廣岡さんを発見。当時は、三重県在住ながら他府県のグッピー倶楽部に所属。コンテストに出品したオレンジレースコブラは残念ながら入賞できませんでしたが、逆にそれが発奮材料となって「地元でグッピー倶楽部をつくりたい!」との思いにつながったようです。「日頃の情報交換もさることながら、ゆくゆくはグッピーに関するイベントを開催してみたいんです!」と。
そして1年後、またまたグッピーコンテストで廣岡さんと再会。念願のみえGUPPY倶楽部結成に至ったのでした。ちなみに会員第1号は柚月ちゃん。そういえば2年前に飼育環境を聞いた時、「グッピーが全部お父さんの部屋にあるから悔しい」と語っていた記憶が(笑)。
ツイッターを中心に情報交換や会員募集も。現在は名張市在住のグッピーユーザーが会員になったそうですが、「まだまだこれからです。でも絶対会員は増やしていきたいんです!」。聞くところによると最近は仕事も結構ハードで、なかなか好きな趣味に熱中する時間もないのだとか。まだ若いんだし、マイペースでゆっくりやっていきましょう。
こんなグッズっぽいものは先行してあるんですけどね~(笑)。
◆柚月ちゃんが自室に水槽を置かない理由
小学6年生になった柚月ちゃん。東京オリンピックのスケボーで金メダルに輝いた西矢椛ちゃんにやや似。お気に入りのグッピーをうれしそうに眺めています。決してグッピー熱が冷めてしまったわけでもなく、気持ちは依然継続中。まだ親離れってしてないよね?の質問には、「もうしてます!」と力強く問題発言(笑)。いやいや照れもあるのでしょう、親のいる前でそんなヤボな質問してしまったキワメテスタッフがアホでした(笑)。
そういえば以前、柚月ちゃんと同じクラスの友人がグッピーを飼っていることを知り、家族全員で廣岡家の飼育環境を見学しにきたこともあるそうな。すごいすごい、お父さんより会員勧誘活動しっかりしてる(笑)!
2年前のグッピーコンテストで柚月ちゃんが買ったシンガーブルーブルーテール。「グッピーを泳ぐのを見ていると楽しい。可愛いし色がきれいだから。繁殖?お父さんにまかせてまーす(笑)」。水槽を自分の部屋に置かないのか聞いてみたら、答はノーでした。「だって、友だちと遊んでいてもし水槽が割れて友だちがケガでもしたら大変だから」。単に楽しいだけではいけない、危機管理もちゃんとできています(笑)。
2年前、大分グッピーファン倶楽部コンテストで、学生の部で優勝しちゃいました。これぞ、真夏の大冒険〜(笑)!
◆自慢のシルバラドモザイク
廣岡さんお気に入りのグッピーをちょこっとご紹介。ブルースタースピアテール。デルタテール以外で初めて飼育し始めた、廣岡さん思い出の品種。この品種をきっかけに、ワイルドフォームにも手を出していったのだそう。
ガラスのボトムソード。ブルーグラスは繁殖させるとブルー・レッド・ブラオの3色が出ることがありますが、繁殖させてもレッド・ブラオができないようアイボリーという遺伝子を持っている個体を特にガラスというそうです。下方だけが刀のように伸びている尾びれも大きな特徴です。
柚月ちゃんもお気に入りのギャラクシー。体にある個性的な模様が特徴で、キワメテスタッフも結構お気に入りです。
RREAアクアマリンネオンタキシードが正式名のトパーズ。透き通る尾びれの色がいい感じ。
シルバラドモザイクは実在する品種ですが、シルバラドとモザイクがいたため交配し再生中。ボディと尾のカラーなどとのバランスがよく、廣岡さんにとって一番大切なメイン品種です。
ほかにもデルヘッジバンドレスやパルマス、ザイールグリーンなどのポリプのなかまたちなんかも少し。
◆いい師弟関係でありますように
水替えは2週間に1回。2階なので20ℓのレジャータンクを使って階段を何度も往復。聞いてるだけで疲れそう(笑)。
最初のころは個別にヒーターを使っていたせいか、かなり奥さんを敵に回していたことも(笑)。以来、エアコンは24時間使用しっぱなし。「結局そのほうが安くつくし燃費もいいんですよ」とまたもやかつての趣味を彷彿させる発言(笑)。
最近はホームセンターでも手軽に国産グッピーが買えるようになりました。「でもクオリティーという点で見ると、なかなかいいのはありません。たまに、おっ!という掘り出し物もあったりするので、それを探しに足を運ぶことはあります」。
「ドイツイエロータキシードやブルーグラス、フルレッドなんかをコンテストに出品するとなると、かなり難しいですよね。それも実際にコンテストに足を運んでみてよくわかりました。なので、何気に出品しておられる人は本当にすごいと思います。さらに入賞するなんてもう尊敬以外の何者でもありません」。
コロナ禍で外出もままならない今日このごろ。とかく親子というのは、お互い甘えもあったりしてやり辛いことも多々あるでしょうが、ことグッピー飼育に関しては師匠と弟子の関係。写真を撮らせてもらう時も決して嫌な顔ひとつせず、いい笑顔も連発(笑)。親離れや子離れをすることがあっても、グッピー離れだけはしないようにね(笑)。