KOTOBUKI創立50周年を機に、これまでの歴史を振り返るシリーズ「KOTOBUKIレジェンド」。
過去の資料を紐解いていると、こんなことやあんなことなど、この機会にアピールしておきたいことが続々(笑)。
というわけで、本来全4巻で終了するはずだったのですが、最後にもう一度おつきあいくださいね。
さて、「スタイリッシュアクアリウム」を提唱してきたKOTOBUKI。
ほかがやらないことをやろうという企業姿勢は変わらないものの、市場を見据えたモノづくりに対する冷静な目はさらに進化を遂げます。
いくら個性的な商品であっても、売れなくては何にもならない。
エンドユーザーが喜んでくれる商品でないと、メーカーとしての意味がない。
そうしたポリシーを踏まえ、直近の10年は「KOTOBUKIらしさとは何か」を追求する10年でもありました。
◆あれこれ試行錯誤の中で
2009年に登場した「クロニカシリーズ」。フレーム有無のレベルを卓越しスタイリッシュなデザインを実現するために、外掛け式フィルターや専用ライトの存在をまったく感じさせない、画期的な設計でした。美しいデザインフレームで包み込んだ、これまでになかった新しいフォルムで登場。「フィルターとライトはどこへ消えた?」などの反響も大きく、発売以来個性あふれる「カッコいい水槽」として注目を集めました。
◆金魚とふれあうやさしい水槽
この数年の商品ラインナップの中では異彩を放った「ふれあい水槽」。当時のネーミングとしては、珍しく日本語使い。「もっともっと観賞魚たちとふれあうことができたら・・・」と金魚とのふれあいを大事にしようという、KOTOBUKIのやさしい心遣いから生まれた商品でした。
バルコニー型のエサやりコーナー『ふれあいポケット』という心憎い設計で、金魚とのふれあいを楽しむことができました。しかも樹脂製なので子どもたちにとっても安全でしたが、爆発的に売れるということはありませんでした。日本での廃盤が決定したあと、海を渡ったアメリカ市場では人気商品になったとかで、現在でも定番商品として人気を集めているそうです。惜しいですよね~、なぜ日本で売れなかったのかは謎のままです(笑)
◆思わぬヒントで商品化が実現
今までなかったものをつくる。「スポットファン」もそんな商品でした。夏場の水温上昇を抑えるための冷却ファンは当時でも市場にはありましたが、いずれも扇風機型のファンでした。しかも上部式フィルターや照明器具を使用している場合には、器具が邪魔になり使うことができませんでした。
そこでKOTOBUKIが考えたのは、「セット水槽のわずかな隙間から送風できないものか」と。そんなことを考えながら製造現場をうろうろしていると、現場で一台の機械に遭遇したのです。そう、もうお解りですよね。工場ラインの特定部分に冷風を送る現場用スポットクーラーでした。これをヒントに、アクアリウム用に開発されたのが、スポットファンだったのです。わずか3㎝の隙間さえあれば、設置が可能だったのです。
この商品は、発売初年度で爆発的ヒット商品となりました。今では夏場の定番商品となり、世界中でもこのかたちがスタンダードになっています。ちなみに、「スポットファン10」は、スケルトンカラーでイメージ統一されてます。
◆ヒーターに投入された高度な技術
熱帯魚を飼育する上で、必須アイテムというべき観賞魚用保温器具。1995年以来、KOTOBUKIはさまざまな観賞魚用オートヒーターを開発・商品化してきました。その中でも「セーフティオートICヒーター」シリーズは、観賞魚ヒーターの材料として定番だったセラミックを石英へ仕様変更したことで、独自の本体カラーを表現。「水槽内で目立たない」をキャッチコピーに、業界で初めてカラー石英管を使用する商品を市場投入しました。
もちろん、目立たないだけではありません。ヒーターの通電状況を簡単に確認できる通電確認ランプが装備されていたんです。こうして、商品本体は目立ちにくく、しかし肝心な通電は一目で確認できるという、賢い商品でもありました。
ヒーター本体同様、水温を制御するサーモスタットも日に日に進化を遂げます。制御範囲や水温精度もどんどんよくなり、現在の「X」シリーズはリーズナブルな価格と高性能を誇りながら、エンドユーザーにも高い支持を得ています。
◆常に安全性を追求したKOTOBUKIの思い
2012年ごろから、ヒーターについての安全性を協議するための会がメーカー間で発足しました。比較的厳しい自主安全基準を制定し、商品開発にあたってはその基準をクリアすることが大前提でした(2016年現在は安全基準が法令化)。
安全基準の最大ポイントは、空焚き状態のヒーター本体の表面温度を、400℃以下に制限するというものでした。これはどのメーカーも基準を満たしました。しかしながらKOTOBUKIは、さらにもうひとつ安全基準を自主的に設けたのです。それは、「商品を使うユーザーが絶対に誤使用を起こさない、起こせない商品にすること」でした。表面温度を下げる方法としては、本体カバーで覆うなどして表面積を大きくしたり発熱体から表面を遠ざけたりすることでクリアは可能です。しかしその方法だけでは、KOTOBUKIが目指す「もうひとつの安全性」をクリアすることはできません。なぜなら、ユーザーがお手入れの際にカバーを外し、うっかりそのまま使用する誤使用の可能性がないとはいえないからです。そこでKOTOBUKIは、カバー方式ではなく本体のみで表面温度を下げる商品開発を選択したのです。このことにより、万一ユーザーが誤った使い方をしても・・・という概念は無くなったのです。
2013年春、こうしたKOTOBUKIの思いはカタチになります。新発売された「3Sヒーター」がそれでした。このヒーター、今までにみたことのない斬新な形状をしていました。そして、KOTOBUKIが目指した「ユーザーが絶対に誤使用を起こさない、起こせない」を見事に実現しました。カバーなしの製品本体のみで新基準をクリアすることはもとより、ヒーターとしての性能も従来製品を凌ぐ優れた能力を発揮したのです。
2015年には、従来の安全性を保ちながら、さらにリーズナブルな価格の商品を発表。それが、「セーフティヒータSH」シリーズでした。表面温度を下げるため発熱部は若干大きくなっていますが、水槽の適用量に対して対応するヒーターとしては比較的コンパクトで、しかもKOTOBUKIオリジナルカラーの石英管を採用することにより、決して水槽内で目立ちすぎることもなかったのです。
このように、観賞魚用保温器具でも常に安全性に関して徹底した商品づくりを行っている点も、KOTOBUKIらしさといえるでしょう。
◆水槽以外の商品開発も多角的に
2011年の総合カタログには、すっかりおなじみの「すごいんですシリーズ」が初登場。ネーミングのユニークさとパッケージが、いかにもユーモラスで大阪らしく(笑)。見た目のインパクトだけでなく、P・CUTやドクターバイオなどと並んで信頼度の高い水質関連商品になりました。このころから、水槽以外のアクア商品のラインナップも飛躍的に増えてきました。
その後も、すごいんですシリーズの人気に拍車がかかり、数年の間に何種類もシリーズ化され、定番商品に。水槽そのものではなかったものの、少しでも水質をきれいに保ちたいというユーザーの気持ちを考えたKOTOBUKIらしい発想で生まれた水質関連商品になっています。
水質関連用品の開発はまだまだ続きます。「ろかソイルシリーズ」。自然の力で弱酸性の軟水環境に安定させ、水質を気にするユーザーに日本製という安心感もあり、今も圧倒的支持を受けています。
◆蛍光灯からLEDへ
2011年、家電製品の照明器具がLED化されていくのと同様、観賞魚用ライトも蛍光ランプからLEDライトへ切り替っていきます。KOTOBUKIもLEDを採用していきますが、どちらかというと小型水槽用ライトが主流でした。。大型器具のLED化はまだまだコストが高く、ユーザーの購買欲につながらないと判断したためです。
とはいえ、やっぱりKOTOBUKIは業界初をやっちゃいます(笑)。それは高輝度HIDに変わる高輝度LEDライトの開発です。これであれば、高価なLEDでも商品化は可能。純日本製の高輝度LEDライト「パワーショット」が2012年に発売しました。開発のすべてをアクアリウム水準で設計された同商品は、150WクラスのHIDランプと同等の明るさを保ちながら、LEDの特長である低電力を実現。ランニングコストのコストパフォーマンスに、大きく貢献したのです。
このほか、HIDでは難しいとされていた調光も可能になるなど、それぞれの特性がうまくいかされた優れたアイテムでした。やっぱり今でもカッコいいなあ〜(笑)。
◆「LEDのよさをいかす」ということ
その後、LEDは社会全般のあらゆる照明部門で普及し続けました。KOTOBUKIもLEDの開発を進めますが、目指したのは蛍光灯とは違ったLEDのよさをいかした商品を開発することでした。それは、「LED素子のよさをいかす」ことでした。つまり、コンパクト化でした。そして、誰も手がけたことのない、極めて薄型の照明器具をつくることでした。
2014年 、ついにLEDライト「フラットLED」が満を持して発売されます。照明器具の本体はわずか厚さ6mm。超スリムに仕上げられた商品は、業界トップクラスの薄さの実現と同時に、輝度そのものもトップクラスでした。そのスタイリッシュな形状と本体ボディーのアルミ素材を一目見て「これ欲しい!」と叫んだユーザーは少なくないでしょう。
これで、水槽の上部もスッキリスカッと。従来の照明器具のイメージを一新することでも、KOTOBUKIは第一人者だったのです。
フラットLEDは、白・赤・青の3色のLEDを効果的に配置することで、ムラのない光を実現。また水草を育成すべく光合成も促進するなど、カッコよさだけではなく機能性にも優れた、いかにもKOTOBUKIらしい商品として人気を博しました。のちに、本体カラーにブラックアルミを使用した「フラットLEDブラック」も追加発表されるなど、ユーザーの好みに合わせてチョイスできる充実のラインナップを誇っています。
まだまだ続く充実のラインナップ。翌2015年にはフラットLEDツインが追加発表されます。シングルライトを2本並べたようなスタイルですが、サイドパーツのリフトスタンドは専用設計するなどして、ツインタイプの独自のフォルムを崩すことなく仕上げられました。写真ではわかりづらいと思いますが、実はサイドパーツ内側に吊り下げ用のフックを通せる形状にもなっているのだとか。「どこまでやるねん!」と言いたくなるような細かな気付きも、KOTOBUKIならではですね。
◆リーズナブルな商品にも盛り込まれた工夫
2004年の初登場から、手頃な価格と使いやすさが売りの外掛け式フィルター「プロフィットフィルター」が人気を呼び、他メーカーからもこぞって類似のフィルターが商品化されました。上部式フィルターをセットすることができないフレームレス水槽や、小型の水槽などへの対応が可能になるなど、その汎用性が受けました。
2012年には、当時の外掛け式フィルターの難点でもあった呼び水式を水中モーターで簡単にスタートできたのが、「プロフィットフィルターX」シリーズでした。呼び水が不要だけでなく、動作音も静かな外掛け式フィルターには、さまざまな工夫が凝らされました。一番のポイントはフィルターボックス内にろ材ボックスを配置している点です。リングろ材やセラミックろ材などをボックスに収納でき、ろ過能力も格段にアップさせることが可能になりました。たとえリーズナブルな商品でも、ちょっとした機能を盛り込んでみる。こういった点もまたKOTOBUKIらしさですね。
KOTOBUKIはさらなる進化を模索します。2015年に発表した「アクアコンボ」は、観賞魚飼育の三大器具である水槽・ライト・フィルターを合体させた画期的なオールインワン商品でした。ユーザーが使いやすいよう、水槽にフィルターライトユニットを取り付けるだけですぐに観賞魚飼育ができるという優れもので、特に初心者には使いやすいと好評でした。
アクアコンボに採用された新機能としては、LEDユニットとポンプユニットが合体している点にあります。これにより、それぞれの電源コードがなくひとつの電源コードまとめられました。コンパクト水槽では、電源コードを束ねるだけでもけっこう苦労しますからね。この点も画期的でした。当然、フィルターの交換方法などもワンタッチ式で簡単に交換が可能に。そうそう、駆動電源も100Vではなくアダプター式の12V駆動と低電圧化も実現し、省エネにも貢献しました。
◆日本から世界へ飛躍したパワーボックス
2013年、前回ご紹介したパワーボックSVが、アクアリウム先進国でもあるヨーロッパのとある国からオファーを受けます。OEM供給をしてほしいとの要請でした。「見せるフィルター」としてのデザインが、ついに世界で評価された瞬間でもありました。その後、2014年からパワーボックスSVはヨーロッパを始めアメリカや中国で広く販売されるようになりました。
2015年には、世界統一のカラーリングとセラミックシャフトの採用や拡散送水パーツを加えるなどして、バージョンアップ。「パワーボックスSVX」として再デビューしました。
◆すっかり定番化したレグラスシリーズ
発売以来、今なおロングセラーを続けるレグラスシリーズ。フレームレス水槽として前面曲げガラスタイプもすっかり定着し、スタイリッシュなライフスタイルに欠かせない商品となりました。もちろん、常に追加商品もラインナップされていきます。
◆きりりと引き締まるブラックシリコン
2013年、KOTOBUKIの主力商品だったフレームレスが特徴のレグラスに、シリーズの新たなラインナップとして「ブラックシリコン」が登場。透明シリコンが当たり前だった時代、斬新なブラックシリコンを採用し差別化を図りました。何より、ブラックシリコンの黒いラインがハッキリクッキリ印象的。それはあたかも液晶テレビの枠を連想し、アクアビューがより印象的になりました。こうして、曲げガラスが中心だったレグラスは、誕生以後今なお「黒が際立つスタイリッシュな水槽」と銘打って、KOTOBUKIらしい特徴ある水槽として多くのユーザーの支持を受けています。
◆アクアと水耕栽培の融合
2014年には、自然循環型システム二段式水槽「レグラス ポニックス」が発売されました。レグラスに水耕ガーデニングをクロスオーバーさせた商品として、今も順調に売り上げを伸ばしているアイテムです。
また2016年には、レグラスポニックスをもっとライト感覚で楽しめる「アクアポニックス・ラウンドポット/スクエアポット」も発売されました。先に行われた「ベタコンテスト2016」でも展示会場で来場者から注目を集めて大好評だったのが印象的でした。
◆水槽メーカーのつくった爬虫類専用ケース
2015年、これまでの水槽づくりのノウハウをいかした商品として「ヒュドラ」シリーズが発売されました。コンパクトにまとまった本体ケースには細部にわたり爬虫類やその他の小動物を飼育するための機能が充実。水槽メーカーがつくった飼育ケース、展示会でも常時展示されるなどして、一見の価値はありますよ。
◆51年目のKOTOBUKIそして未来へ
ことし2016年初めには折からのベタブームもあり、超コンパクト型水槽「キューブ150B」を発売するなどしてきたKOTOBUKI。製品づくりだけでなく、アクアユーザーのさらなる掘り起こしとアクア普及を目的としたアクアリウムWEBマガジン「キワメテ!水族館」も、KOTOBUKIのサポートを受けて2年前に創刊しました。商品カタログやホームページとはひと味違う表現手法で、関西エリアを中心に取材活動を続けています。ユーザーとの接点をより近づけるべく初の水槽自慢コンテストをWEB上で開催したことも、記憶の新しいところです。
先日のインタビュー記事でもご紹介しましたが、業界やユーザーが今も待ち望んでいるのは「KOTOBUKIらしさ」にほかなりません。もっともっと(笑)。ユニークなネーミングであったり、既成概念にとらわれない独創的な商品であったり、つくる側が面白がって開発に携われるものであったり。
インテリア水槽で一世を風靡し、その後スタイリッシュ路線に舵をとり、水槽以外の商品にも充実を図り、気がつけば50年。さてその次は何が出てくるのでしょうか。これまでの歴史を振り返ると、決して見た目だけでなくユーザーの立場を考えた使いやすさや安全性を重視した商品づくりを進めてきた企業姿勢もおわかりいただけたかと思います。
最後に、創業50年を機に企画した「KOTOBUKIレジェンド」を5回にわたってごらんいただき、ありがとうございました。本来なら4回で終わるところを、熱くなりすぎて5回にもわたりスミマセン(笑)。これからも業界のパイオニアとして、アクアユーザーの期待に応えていただけるKOTOBUKIであって欲しいですよね。
1週間前にご紹介した、KOTOBUKIのニューウェーブ「AQXT」。今月登場したばかりの新製品であり、KOTOBUKIの新ブランドでもあります。スタイリッシュアクアリウム生活を、リアルに実現するために発動しました。
第3次KOTOBUKIレジェンド。こ51年目。この答は、みなさんの中にあるのかもしれません。
【おわり】